【やさぐれ前奏曲】福間健二 2factory19

こんど、「現代詩手帖」一月号に発表する「みずうみ」は、四つの作品からなる組詩ですが、そのひとつを書いていて、自分に「変化」をもたらす新しい書き方といえるものをつかんだ気がしました。これからずっとそうなるというわけではないけど、「しつこく書く」の反対の方向に軽いステップを踏んでさらにジャンプするという感じです。それを試してみたいというのと、T・S・エリオットのむこうをはって「前奏曲集」(Preludes)をやろうというのを考えていたところに、いまを生きる気分としての「やさぐれる」がとびこんできて、「やさぐれ前奏曲」になりました。 選挙の日までの10日間。その間、人前で話をする機会が三回あって、そこで出会った言葉を使っています。2の「バター、バター、もっとバターを!」は、ポール・ボキューズが語っていたその師匠フェルナン・ポワンの言葉でした。 続きを読む
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福間健二 @acasaazul

咳をして。濡れたままの思想をスニーカーに。家なき子。ほとんど本物。一部は跳ぶ力と交換できる。芯、青いのがいい。野菜、安くない。やさしい泥棒、どこにもいない。芯、青だって。分析させないプラスティック。雨には負けない。いいことしないけど。(やさぐれ前奏曲1)#2factory19

2012-12-07 08:15:46
福間健二 @acasaazul

「バター、バター、もっとバターを」と偉大な料理人は言う。水晶をかくした戸棚の蟻たち。つまり、後から来たものに。「働きなさい、働きなさい、働きなさい」。わかっていても背中の爪あとが変色して。新宿五丁目。見知らぬ自分。バターと労働のあいだに。(やさぐれ前奏曲2)#2factory19

2012-12-08 09:17:55
福間健二 @acasaazul

長い橋を歩いてわたる。だめでもいい。むきになって生きる。突風に。気圧に。忘れな草で、体の一部が戦争になって。閉じて、蜜柑とやさしい人。注射器をイメージする。ちょうどいい甘さ、すっぱさ。いまは看護婦さんと言わない。何を忘れるためだろう。(やさぐれ前奏曲3) #2factory19

2012-12-09 07:48:17
福間健二 @acasaazul

女中さんもいない。装置と添加物の社会。この部屋に入るとき。クリーム状になる出来事。盗んだユーモアが役割を果たす。見知らぬ町にも入り、だれの妹でも咲く。針や針金が好きならね。雑草は、生きている。自分にできないことを思わない。突き破るだけ。(やさぐれ前奏曲4)#2factory19

2012-12-10 07:49:03
福間健二 @acasaazul

実験の、でたらめキス。霧のなかのファニーとジル。そこで、錯覚の国がよみがえる。その中間は海があるだけのような気がする。しかしかれらはいる。それを目撃したきみも、人生は忍耐だと思う。ひと匙、ふた匙、蜜がふえるように。夜は、おしゃれをして。(やさぐれ前奏曲5)#2factory19

2012-12-11 06:31:31
福間健二 @acasaazul

あの人、あの人の庭。だれも、何もおいていかない。あやつられた狂気にどうフェアーになれるのか。引っかき傷と雲。点滅する電球と雲。大きく、誤聞する。浮遊できない「非富裕層」。火につつまれるヒロインたちの疲労。ねじれているから、誘惑的な。(やさぐれ前奏曲6)#2factory19

2012-12-12 09:22:32
福間健二 @acasaazul

目が勝負。拒否する力、神経質な美女をお払い箱にした。でも横断できない砂漠。いつも途中の三人組。ブレヒト、オーデン、そしてだれだったろう。眠る。散歩する。音楽を聴く。必要なのは、自分の椅子を見つけることではない。見つめかえす勇気だ。(やさぐれ前奏曲7)#2factory19

2012-12-13 06:30:04
福間健二 @acasaazul

境界線の上で、花たち。ルール無視の。どんな鍵を口にくわえて会う約束したのか。思い出せなくて道に迷う。空に「苦しいよ!」と。ちりぢりになるもの。光と風から生まれた。多くを語らないが、なにか言っている。むこう側の人、ひとりは手を振ってくれた。(やさぐれ前奏曲8)#2factory19

2012-12-14 08:45:07
福間健二 @acasaazul

祈る人たちの息。あっ、この空気にはそれが。言葉を拒む言葉。先端に届きながら、古い。関係とさびしさ。管から出てくる密猟者たち。それぞれが「ぼくにとってぼくは雨だ」と濡れている。立ちどまっただれがパンクして、空気、青い芯、だめになるのか。(やさぐれ前奏曲9)#2factory19

2012-12-15 07:53:52
福間健二 @acasaazul

Woe worth the day! 井出教授に習った古い英語。今日という日に。ドアをぶち破って。角度、覚悟。もっとだめに。雨に、雨に踊るのだ。本気で咲くステップの、蕾に、いいことしよう。あの人、むこう岸の抗議する人に裸足で会いに行く。(やさぐれ前奏曲10)#2factory19

2012-12-16 08:36:03