バレエのパ・ド・ドゥにおいて不定形の下半身は性的感覚を交換する

クラシックなパ・ド・ドゥを踊る王子とバレリーナは彼らの肉体に造成した「不定形の下半身」を経由して彼らの性的感覚を交換している。
2
碓井央 @usuiou

クラシックなパ・ド・ドゥを踊る王子とバレリーナはその典型的な衣裳によって白い不定形の下半身を共有する。

2012-12-17 13:36:03
碓井央 @usuiou

典型的な「王子」のタイツの色として多くの場合「白」が選択されるという既成事実には、貴公子の品格を寓意的に示すといったもののほかに、この「不定形の下半身」の実現、そしてバレリーナの下半身との視覚上の差異の消去という意義が感じられる。

2012-12-17 13:36:35
碓井央 @usuiou

白色系のタイツは、男女の身体の中でも性的差異が少ない部分である下肢をさらに中性化する。それは西洋的な修飾によって性差を強調された上半身とは対照的である。とくにクラシックチュチュの吊り上げられたスカートは性差の強調に他ならない。

2012-12-17 13:37:09
碓井央 @usuiou

だが、上半身と下半身の境界点である股間には両者とも性的象徴の痕跡が残されるにとどまり、そこには「性的結合による性差の消滅」が示唆される。

2012-12-17 13:37:32
碓井央 @usuiou

そしてターンアウトと爪先立ちという特殊な技法をともなう「踊り」という不自然な動きによって「肉体を支え、移動させる器官」としての属性を奪われ、「ヒトの肉体の性器周辺」という属性のみをとどめる彼らの下肢は、象徴的なレベルでは男性器/女性器のどちらでもある。

2012-12-17 13:38:11
碓井央 @usuiou

バレリーナの爪先立ちの軸足は、彼女の身体の内側に受け容れられた王子のPhallusであると視ることもできる。王子にとっての「小さな死」である射精への恐怖は、爪先立ちというバレリーナの不安定な肉体の状態に鮮やかに映し出されている。

2012-12-17 13:38:32
碓井央 @usuiou

一方、その爪先立ちのバレリーナを支える王子の左右の脚は、彼女に送り込んだPhallusを受け容れ支えるVaginaの反転立体像と視ることもできる。バレリーナにPhallusを奪われた王子は彼女のVaginaによる受容を自らの下半身で感じ取る。

2012-12-17 13:39:06
碓井央 @usuiou

かくして王子とバレリーナはそれぞれの不定形の下半身を経由して性的感覚の交換に至る。それは性的融合への想いを拡張された象徴的な性器(不定形の下半身)に託して感じ取った擬似的感覚に過ぎないのかもしれない。

2012-12-17 13:39:25
碓井央 @usuiou

が、単に視聴覚レベルの表現行為にとどまらず、踊り手自身の肉体の感覚としてこの「性的交換」を実現している点は男女の行為として独自の領域を形成していると評価できるのではないだろうか。

2012-12-17 13:39:46
碓井央 @usuiou

とくに性的興奮の裏側に張り付く自我崩壊への恐怖/緊張を、爪先立ちの不安定さ(美的調和からの逸脱への不安)を経由して相似的に取り込んでいる点が画期的なのだろう。

2012-12-17 13:40:24
碓井央 @usuiou

この性的感覚の交換は、王子とバレリーナの本来の性的感覚と重なりあう事で男女両性の感覚の共有へと至る。それはバレエが造った不定形の肉体が実現したアンドロギュノスとしての快楽の境地と言えるかもしれない。

2012-12-17 13:40:42