文殊の知恵

「討論下手」と言われた日本人に論破・論難という手法が定着しつつある。他人の意見を聞かず、自分の意見だけを押し通す手法である。だが、それに伴い、日本人の得意とする「衆知」を集める手法が退化しないか心配である。欧米では論破・論難が古い手法とされ、衆知(三人寄れば文殊の知恵)が既成概念を打ち破る方法として見直されているのを考えると、皮肉なものである。
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shinshinohara @ShinShinohara

新しい知の発見の方法として、「思い切ってばかばかしいほどとっぴでないことを言う」「否定しない」「連想を続ける」という手法が世界的に広がっている。コーチングや白熱教室などもこの方法。TEDでプレゼンされている内容の多くもこの手法。まさに「三人寄れば文殊の知恵」。

2012-12-16 21:25:11
shinshinohara @ShinShinohara

しかし「論破・論難」という、欧米での古い手法が日本古来の「文殊の知恵」を駆逐し、日本を席巻しつつある。大きな声で相手を圧倒し、相手の弱点をあげつらい、相手の上品さを悪用して盾に取り、相手を論破する。これはヨーロッパが異端をあげつらうのに磨かれた手法。日本はルネッサンス以前に退化。

2012-12-16 21:28:30
shinshinohara @ShinShinohara

討論は西欧でキリスト教が普及する折に発展した「技術」。聖アウグスティヌスが自らの派閥を「正統」とし、他を異端とした。相手の論理の弱点をあげつらい、論破することで自らの正当性を証明する(証明したかに見せる)のが討論である。西欧文明が世界を席巻すると、討論は世界的な手法となった。

2012-12-16 21:31:25
shinshinohara @ShinShinohara

だが西欧は論破・論難という手法がもたらす結果に驚愕する。イデオロギーが人を殺す歴史。最終形はナチス・ファシズム。人々はそのイデオロギーに熱狂し、信奉した。そのイデオロギーに反する意見に耳を貸さない論破・論難という手法は、ファシズム台頭を助け、それを覆すことができなかった。

2012-12-16 21:34:34
shinshinohara @ShinShinohara

日本(特に西日本)では村落共同体で1ヶ月以上も話し合う方法がとられていた。全員が納得いくまで話し合う。話し合う中でアイディアも生まれる。「三人寄れば文殊の知恵」を地でいく手法をとってきた。その手法は明治以降の日本の台頭、戦後復興でも「みんなの力で」成し遂げる力の源泉だった。

2012-12-16 21:36:38
shinshinohara @ShinShinohara

だが「朝まで生テレビ」や「そこまで言って委員会」などの番組は、自らが好まないイデオロギーを論破・論難するという手法を日本人に染み付かせた。西欧では論破・論難という古い手法に反省が生まれ、コーチングなどの手法が育ちつつある中で、日本は「文殊の知恵」という古くて新しい手法を捨てた。

2012-12-16 21:38:17
shinshinohara @ShinShinohara

「ニッポンのジレンマ」という番組は相手を否定しない。論破・論難という古い手法をとらず、古来の日本の「文殊の知恵」、欧米で広がりつつあるコーチングなどの手法をとる。私はこの手法をとるべきだと思う。新しい知識を獲得するにはそのほうが優れているからだ。

2012-12-16 21:39:41
shinshinohara @ShinShinohara

論破・論難という手法は、相手を抹殺することを重視するため、相手に見るべき論点があっても無視をする。このために、知恵が磨耗し、老朽化し、頑迷となり、ついに役立たずになってしまうのだ。異端を排撃し尽くしたローマ教会が、ルネッサンスを迎える前に堕落してしまったように。

2012-12-16 21:41:43
shinshinohara @ShinShinohara

だが、「文殊の知恵」やコーチングなどの手法は、相手を否定しない。自分を正統、相手を異端と決め付けることをしない。気に入らない相手の論点にも見るべきものがあるかもしれない、という姿勢。それにより、新しい知識を発見することができる柔軟性を確保している。

2012-12-16 21:42:55
shinshinohara @ShinShinohara

日本でもこのことに気づき始めた人は増えている。もっと増えて欲しい。だが、他方で日本では論破・論難という古い古い手法が席巻してしまい、力を持ってしまった。このことによる知恵の退歩が起きないよう、私たちにできることはあるか。私はそのことに注力していきたいと思う。

2012-12-16 21:44:20