映画界のデジタル化 なにが問題なのか?

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榎本憲男★『サイケデリック・マウンテン』絶賛発売中!!! @chimumu

0.デジタル技術の導入で日本の映画界(特にインディペンデント系)は揺れているのであるが、一体何が問題なのかということについては映画ファンにあまりきちんと知られていないので、連投してつぶやくことにするよ。ややこしいところはすっとばして、要点のみ述べる。

2012-12-18 01:22:25
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1.まず、でかい話からすると、映画というのは、何度か大きな技術革新があって、その度に貪欲にそれを取り込んできた。特に巨大な投資が必要となったのは1927年に始まったトーキー革命。それまでの映画館にはアンプもスピーカーもなかったわけだからこれは莫大な投資を必要とした。

2012-12-18 01:24:51
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2.しかし、映画産業はこのトーキー革命に乗っていく。その技術革新が儲けにつながるという確信があったからだ。サイレント映画とトーキーとが並んでいた場合、多くの映画ファンがトーキーを選んだ。だからこそ、トーキーに対応した映画館が一気に増えたのである。

2012-12-18 01:26:22
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3.しかし、時は流れて現在、観客にとっては「うちはデジタルで上映しております」と劇場にいわれても「お、そうか、じゃあ見よう」という風にはならないものだ。つまりデジタルは長いこと、劇場にとってはまったく恩恵のない「増員なき技術革新」であった。まずは、ここが大事です。

2012-12-18 01:27:35
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4.製作→配給→興行という流れの中で、デジタルにまず飛びついた映画人は、製作の人たちだった。ルーカスなど最先端を目指すメジャーの人を除くと、フィルムで撮りたいのは山々だけれど金がなくて撮れないという貧乏製作者がデジタルに飛びついたのである。

2012-12-18 01:29:07
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5.製作者たち(監督&撮影監督)がデジタル技術についてどのように感じているのかを中心に、今日のデジタル技術を論じているのが、近日公開される『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』だ。これは、今日のデジタルシネマを理解する上で、丁寧でいいドキュメンタリーだと思う。

2012-12-18 01:31:37
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6.『サイド・バイ・サイド』でも描かれているが、当初デジタルカメラで撮っている映画人は低予算のインディペンデント系がほとんどだった。「金がないからしかたない」という思いと「だけど、軽やかで自由だせ」という二つの思いを抱きながらカメラを廻していたんだと思う。

2012-12-18 01:33:06
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7.ところが、近年ではデジタルカメラのスペックがぐんぐんあがり、解像度ではフィルムを凌駕するような状況になってきた。昔は「フィルムとそう変わらないよ、よろしく」が基本姿勢だったが「フィルム以上。それでもフィルムが好きというのは好みの問題」という風に変容してくる。

2012-12-18 01:34:00
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8.しかし、それでもフィルムの表現力を信じて疑わない製作者もいる。そのへんは『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』を見てもらうといいだろう。ともかくも、デジタルというのは製作者にとっては、CGとのマッチングなども含めて、非常に都合のいい技術だったのである。

2012-12-18 01:34:56
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9.しかし、劇場にとってはデジタル撮影などなんの魅力もない。故に高価な上映用のデジタルプロジェクターを買う決断がなかなかできなかった。故にデジタルで撮影した作品も、それをフィルムに変換しなければ劇場での上映は不可能だった。こういう踏ん切りの悪い時代が結構長く続く。

2012-12-18 01:35:54
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10.しかし、製作サイドがどんどんデジタルの方に流れていくと、配給・興行の方もそれに対応せざるを得なくなってきた。まず劇場は、適当な価格のデジタルプロジェクターを導入する。それを市販のBlu-rayプレイヤーにつなぐと、「あら、そんなに悪くないね」ってことになった。

2012-12-18 01:36:45
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11.劇場がこういう体勢を整えてくれると、製作サイドはさらに楽になる。プリントを焼かなくてすむ。と同時に、製作者に続いて利得を得るものがでる。配給だ。各劇場に納品するプリント一本のコストは約20万円。10本焼けば200万。これがBlu-rayだと激減する。輸送費も倉庫代も安い。

2012-12-18 01:40:15
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12.こうして、Blu-rayを適当な規格のデジタルプロジェクターにつないで上映するという体勢が、主に日本のインディペンデント映画(という名の自主映画)やアート系の映画を上映する映画館で珍しくなくなってくるのである。

2012-12-18 01:40:49
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13.しかし、Blu-rayというのはコピープロテクションにおいてあまりにも脆弱なメディアである。Aという劇場で上映した際に、映画マニアのアルバイトB君が自宅のPCで複製を作ろうと思えば笑っちゃうほど簡単にできるのである。

2012-12-18 01:41:45
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14.それに、ヤマダ電機でロッキュッパくらいで買えるプレイヤーで上映して金取るってどうなんだ、という感覚が興行側にも配給側にもあるにはあった。けれど、画質もそんなに悪くないし、プリントは金かかるからしょうがないじゃないか、とうやむやにしていたのである。

2012-12-18 01:42:47
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15.特に、アート系映画の配給会社は売上げが落ち込んでいるので、Blu-ray上映で配給コストを切り詰めてなんとかやっていたというのが実状だ。しかし、ここで世界の映画界は大きく動く。アメリカ・ハリウッドによる規格統一である。(Digital Cinema Initiative)

2012-12-18 01:44:14
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16.「これからの映画はデジタルだよ。で、デジタル上映の規格は統一しなければ駄目。2Kのプロジェクターを使え。上映メディアはDCPというのにしろ。Blu-rayなんてもってのほか」ものすごく簡単にいうとこれがアメリカの基本方針(DCI規定)である。

2012-12-18 01:47:53
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17.じゃあ、アメリカはアメリカ、日本は日本で勝手にやるもんねという姿勢が可能かというと、これは大変に難しい。芸術面はともかくもビジネスにおいては、映画はアメリカを中心に回っているので、現実問題として、まず日本の大手はこれに右へ倣えしなければならなくなる。

2012-12-18 01:48:51
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18.さらにアート系のヨーロッパの映画の権利元も「そろそろBlu-rayで上映するのは許さないわよ」みたいな態度になってきつつある。Blu-rayでの上映が終わるのは、もう、時間の問題である。

2012-12-18 01:50:07
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19.では、プロジェクターを買い換えて、DCI規定で上映できるシステムを組むと劇場サイドの負担はいくらになるのか、これは大体ワンスクリーンに1000万円だと言われている。大変な値段である。そもそも、なんでこの費用を劇場だけが負担しなければならないのかって疑問も出て当然だろう。

2012-12-18 01:52:44
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20.というのは、先程も述べたとおり、劇場はデジタル化によるメリットはほとんどないからだ。にもかかわらずデジタル化の負担が劇場だけにのしかかるのは不公平だ。では、劇場と取引のある配給側に負担してもらおうという金融プランが生まれた。これをVPFという。

2012-12-18 01:55:31
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21.配給側は、デジタル化のおかげでフィルム(プリント)代などコストが削減ができる。ならば、配給側も費用負担するべきだというのが発想の根底にある。VPFは Virtual Print Feeの略称。つまり「プリントを焼いたつもりで、プロジェクター代を負担しろ」というものだ。

2012-12-18 01:56:53
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22.このような発想そのものは道理にかなったものだ、とほとんどの人が言う。ただ問題は、この費用負担の計算が完全に大手シネコン用に設計されていて、ちいさなインディペンデント映画の状況に当てはめてみると、色々と面倒なことが起こってくるのである。これは主に配給サイドの問題としてある。

2012-12-18 01:57:49
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23.しかし、いろんな問題があるにせよ、VPFの制度を導入出来る劇場は、まだデジタル化の波に乗れるが、そうでない劇場もでてくる。VPFというのは基本的にリースシステムなので、VPFサービサーというリース会社が査定をして「おたくとは契約出来ないな」と言われたらそれまでなのだ。

2012-12-18 01:59:27
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24.図のような契約を結べないだろうと言われているのは、アート映画を上映している地方の劇場や名画座などである。商業的な作品よりもむしろ「良心的な」ラインナップを組んでいた劇場が、厳しい状況に追いやられているのである。 http://t.co/ODLVYHOm

2012-12-18 02:01:21