「天才」を方法化する

天才は凡人が真似できないからこそ天才なのだ、というのが一般的な理解だ。だが、「天才」はかなりの程度模倣できる。「勘違い」をうまく方法化する事で誰でも天才にしかなし得ないような発想の転換が可能なのだ。
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shinshinohara @ShinShinohara

天才は凡人と同一視されるのを嫌う。自分のことを、突然変異的に人とは違う優れた能力を授かって生まれた存在だと思いたがる。確かにそういう人はいて、誰に教育されたのでも環境が恵まれていたわけでもないのに優れた能力を示す。天才は確かにいる。

2012-12-18 22:22:11
shinshinohara @ShinShinohara

だが、天才は偶然でしか生まれないのだとすれば、そんなのに期待をかけるのは宝くじと一緒で、アテにならない。教育を考えるなら、(天才が生まれた時につぶさないようにする配慮が必要だが)天才をどう育てるかよりも一般の人を天才に近づけた方が有効だろう。

2012-12-18 22:29:16
shinshinohara @ShinShinohara

「凡人が達し得ない境地にいるから天才なのだ」と叱られるかもしれないが、凡人でも天才にかなり近づくことができる。天才は模倣できるのだ。凡人でも天才にしかない得ないような発想の転換が可能になる。天才の思考パターンはある程度方法化する事ができる。それが「こんにゃく問答」だ。

2012-12-18 22:34:48
shinshinohara @ShinShinohara

「こんにゃく問答」という落語は、凡人でも画期的な着想を得る方法を端的に示している。坊主に化けたこんにゃく屋が、「勘違い」から、本当の坊主に深い知恵を授けてしまうというのがこの落語の骨子。勘違いは途轍もないインスピレーションを与えることがある。この「勘違い」を構造化する事が大事だ。

2012-12-18 22:40:19
shinshinohara @ShinShinohara

フィンランドの教育を見ていると、「勘違い」をうまく教育プログラムの中に組み込んでいる。発想の飛躍を促すために連想につぐ連想をさせる。「伝言ゲーム」が元の話からかけ離れるように、連想を重ねると思いもしない着想に変化する。天才の思考パターンをうまく方法化している。

2012-12-18 22:47:08
shinshinohara @ShinShinohara

「三人寄れば文殊の知恵」も、複数の人間がとりとめのない話をしているうちに天才しか思いつかないような着想を得ることがあるのを示した言葉だ。だが、集まるだけではうまくいかない。それなりにきちんと方法化しておく必要がある。「勘違い」を引き出す仕組みが必要。

2012-12-18 22:51:13
shinshinohara @ShinShinohara

勘違いをうまく引き出すには、相手の言うことを「否定しない」ことが必須。否定されるとものを言わなくなるからだ。天才が一人いると周囲の才能が育たないのはそのため。天才は凡人をバカにし、凡人から考えることを奪う。凡人を無能者にしてしまうのだ。

2012-12-18 22:55:37
shinshinohara @ShinShinohara

しかしあえて否定しないでみよう。すると皆が口を開く。同じものを観ているのに全然違う感じ方をしているのに驚くはずだ。そして相手の視点にあえて乗って、そこから連想を広げよう。すると自分一人では決して思いつかない発想の転換が可能になる。

2012-12-18 22:59:33
shinshinohara @ShinShinohara

私の経験を紹介する。女学生が「農機具がかわいくない」とボヤいた。私はいつも通りに「農業はかわいいだのヘッタクレだの言えるような甘いものではない」と説教したくなるのをグッとこらえて、否定せずに話を続けてみた。すると、話がとんでもなく発展した。

2012-12-18 23:05:23
shinshinohara @ShinShinohara

たとえば農業で必須の軽トラが可愛くなったら?荷台がカーペットになっていて、恋人と二人星空を眺めたり、お弁当を広げてピクニック気分が味わえたら?軽トラは女性に不人気な車種だが、女性に人気の車種になるかもしれない。

2012-12-18 23:11:15
shinshinohara @ShinShinohara

軽トラをかわいくしたりカーペットを広げるなんて論外、軽トラは汚れたものを運べるから便利なんだ、と思う人がいるかもしれない。だが、それは男性の発想だ。女性は「かわいい」を持ち込むことで産業を根底から覆す歴史を持っているのだ。その典型が看護婦(看護師)だ。

2012-12-18 23:15:27
shinshinohara @ShinShinohara

看護師はかつて蔑まれていた職業だった。膿みや血で汚れるし、病気をうつされるかもしれない。誰もやりたがらない職業だった。それをナイチンゲールが逆転させる。血で汚れても新しい白衣に着替える。「どうせまた汚れる」のに、常に白衣。すると死亡率が激減した。そして憧れの職業に生まれ変わった。

2012-12-18 23:22:13
shinshinohara @ShinShinohara

「死に化粧」もそう。ある看護婦が折れた口紅や残りかすのファンデーションを使っているのをみて「あまりにかわいそう」と一念発起した。「どうせ死んでいるのに」という批判の声の中、自腹で化粧品を買い集め、遺体でも馴染む化粧品を研究した。遺族は泣いて喜んだ。「エンゼルメイク」の誕生だ。

2012-12-18 23:27:32
shinshinohara @ShinShinohara

トイレも女性が革命を起こした。卒論でトイレを研究、きれいなトイレがいかに女性の観光客に影響を与えるかを明らかにした。彼女がトイレ企業に就職して以降、快適な空間を演出するトイレが日本、世界を席巻した。「どうせ汚れるのに」という男性の発想を女性が「どうせなら」で打破した事例だ。

2012-12-18 23:32:45
shinshinohara @ShinShinohara

もし同様に、農業でも「かわいい」というデザインの発想を持ち込んだり、「どうせ汚れるから」と諦めるのではなく、汚れてもまたきれいにする、ナイチンゲールが看護の世界で実現した発想の転換をしたらどうなるだろうか?農業は女性の憧れの職業になるだろう。男は女性のいるところに自然に集まる。

2012-12-18 23:37:33
shinshinohara @ShinShinohara

以上のような話が、女学生の話をあえて続けることで出てきた。この時の話は「アグリデザイン」「かわいい農業」というレポートにまとめ、結構たくさんの人に読んでもらえた。まだ「農ギャル」などが出てくるずっと前の話である。ある程度影響を与えられたと思っている。

2012-12-18 23:41:27
shinshinohara @ShinShinohara

あえてばかばかしいほど突飛でもない話を引き出す。そのためには相手の話を否定しない。そしてどんどんと話を広げる。すると、「勘違い」から、途轍もないインスピレーションを得ることができる。天才とほぼ同じ、発想の飛躍が可能になる。

2012-12-18 23:45:15
shinshinohara @ShinShinohara

我々凡人でも「勘違い」を方法化し、「こんにゃく問答」の原理をうまく利用すれば、天才と見紛うばかりの創造的な仕事が可能になる。私たちはもっとこのことを意識化しよう。天才の思考パターンは模倣できるのだ。

2012-12-18 23:47:45