踊りが造成する貴族性がバレエのパ・ド・ドゥの恋の文脈を担保する

クラシックバレエの表現を達成するための鍛錬が造成した貴族性は特徴的なキャラクターデザインに反映され、それが象徴的ビジュアルとしてパ・ド・ドゥの恋の文脈を支えている。
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碓井央 @usuiou

クラシックなパ・ド・ドゥにおける王子とバレリーナにはそのキャラクターデザインの要素として貴族性が含まれる。それはヨーロッパの貴族がもつ属性を基本イメージにしているが、中心となるのは肉体の均整美と優れた運動機能、そしてノブリス・オブリージュに代表される公共心(自己犠牲)だろう。

2012-12-19 16:55:42
碓井央 @usuiou

だが、肉体についてはともかく、公共心はバレエの世界においてどう構築されるか。それは生活の中で踊り以外のものをに犠牲にする行動様式だと思われる。

2012-12-19 16:56:00
碓井央 @usuiou

つまり踊りを成立させるための鍛錬という「きわめて非生産的な活動」に自分の時間を集中的に費やし、結果として人間離れした身体表現に特化した能力を備えるという、生物としては「狂った行為」がある種の公共心=自己犠牲の具現とみなされ得る。

2012-12-19 16:56:20
碓井央 @usuiou

これは例えばオリンピックの運動競技などに専念する人物などとも共通する方向性ではある。しかし、このある種の自己犠牲によってもたらされる成果が「典型的な貴族としての外観を備えたキャラクター」上に踊りという表現形式で展開される点にクラシックバレエならではの特徴があると言える。

2012-12-19 16:56:44
碓井央 @usuiou

そして、この踊り手としての自己犠牲的努力は、主役級の役柄としてまさに貴族的な地位である「王子」「姫君」あるいはそれに準ずる人物としてのキャラクターデザインを自らの役どころとして入手することとなる。

2012-12-19 16:56:58
碓井央 @usuiou

それは生まれつきの美的資質を備えた人物が努力を重ねて得た社会的地位の一種であって、見方によっては実際の君主国における王族以上に貴族らしい貴族だと言える。

2012-12-19 16:57:13
碓井央 @usuiou

このため、クラシックバレエの枠組みにおいて踊り手が演じるこうした貴族的キャラクターは、現実世界の貴族とは異なり、その外観的属性そのものが自己犠牲の積み重ねの象徴として機能する。

2012-12-19 16:57:40
碓井央 @usuiou

つまり、男女の恋愛に美的リアリティを与える上で不可欠と考えられる「お互いを高め合う」という方向性は、この貴族的自己犠牲の積み重ねの結果である「王子」「姫君」といった貴族的なキャラクターデザインによってそのまま表現されている。

2012-12-19 16:58:10
碓井央 @usuiou

彼らの(バレエ世界の中での)貴族としての能力は彼らの鍛錬された踊りそのものが実証し、その結果として表現される性的融合のビジュアルは、こうしたキャラクターデザインと相まってお互いの自己犠牲ないし向上心・克己心の成果として成立した恋愛行為として受けとめられる。

2012-12-19 16:59:06
碓井央 @usuiou

他者に対して美的存在であろうとする努力=自己犠牲の末に成立した「公開された性的融合」としてのバレエのパ・ド・ドゥの形式はこのようにしてひとつの完成形に至っているのである。

2012-12-19 16:59:21