【習作】名前のない料理店第一話
- crosstaichi
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【前口上】古今東西!暇と興味津々な人は寄っといで! 本日語られるのはバイーンのハンターとにゅたおの料理人の合縁奇縁! 果たしてこの縁どうなるか! どうぞ御照覧あれぃ! 【前口上】
2012-11-12 19:35:59【ある料理人の日誌より抜粋】 希少な食材には稀有な力を持つものが多い。 水中で呼吸ができたり、力を向上させたり。 時にはその姿を変えたりするものさえある。 料理の限界を目指すもの達と切っても切り離せないもの。 それが希少食材である。
2012-11-12 19:37:19しかし希少食材の中には危険な生物そのものが含まれることが往々にしてある。 オルヴァン、ワニ、リザードマン……そしてドラゴン。 それらは一人で採取するのに危険を伴う。 狩るべき相手から自分が狩られるかも知れないのだ。
2012-11-12 19:38:36それゆえに戦闘を専業とする「ハンター」が存在する。 ハンターたちは希少食品と引き換えに高額な報酬を得る。 我々は彼らと上手に付き合うことで美食家の下を唸らせ、奇跡を起こす。 それゆえにハンターとは対等に付き合い…
2012-11-12 19:38:56【AncientAge ユグ海岸】 女:店を買い取った? 私は震える声でカウンター越しに立つニューターの男にそう質問した。 ここはユグ海岸にある「まいほ堂」。 私がハンター契約を結んで働いてきた店だ。 しかし私はこの男を見た覚えがまったく無い。 …ひょっとして新人社員かしら?
2012-11-12 19:41:14そういうと男はカウンターの棚から封筒を取り出した。 ひったくる様にして受け取ったそれにはこの店の店長だった男の名前があった。 封筒を破ると紙が一枚出てくる。
2012-11-12 19:41:53『リンさんへ ギャンブルに負けちゃった!テヘペロ!! まいほ』 ーーーーーー!!!!!!! \ぐしゃり!/ 思わず紙を握りつぶしてしまった…
2012-11-12 19:42:11怒りが全身にこみ上げぶるぶると体が震える。 今の私はきっと鬼のような表情だろう。 男:あー…あのぅ… 男が声をかけてくる。 スー:僕、スーサーンっていいます。 まだ店を構えたてでハンターさんと契約もしてませんし… よろしければこのまま働いてはもらえないでしょうか?
2012-11-12 19:42:45渡りに船、ではある。 しかし私は希少食材の採取が基本となる。 …はたしてこの店にそれだけの資金があるのだろうか… 店を持つだけでもとんでもない出費である。 その上希少食材を扱うゆとりはあるんだろうか…
2012-11-12 19:43:28思わず言葉を濁してしまう。 スーサーンは悲しそうな目でこっちを見てくる。 スー:一応ギルドに斡旋をお願いしたんですけど…断られまして… 資金繰りや評価が安定するまではって言うことで… 聞けば数年、十数年待てということみたいなんです
2012-11-12 19:45:18ギルドにも斡旋のルールが存在する。 1:貯蓄額 2:経営期間 この二つが絶対的な条件になっている。 当然契約である以上商売の安定性は大切だから安心して契約できるように、である。 もちろん前の店長のような例外は存在するわけだけれど…
2012-11-12 19:46:49スー:『店舗購入に限り全店舗の雇用ハンターとのみ再契約を結ぶことは可能』 …そういわれて…ぜひよろしければと… 規則には当然例外もある。 以前の店舗と契約していたハンターにとっての保障としてできた例外がこれである。 新しく開店した店との交渉権を最初に得ることができるのだ。
2012-11-12 19:47:59報酬交渉しだいでは以前よりも高待遇になるし、何より長く契約を結べれば信頼関係が成り立つ。 その交渉は相手の店がまだ小さいときほど有利に交渉できる。 …大きい店になると安定を代償に値段を叩かれたり、品質でけちをつけられてイラつくことも多くなる。 だからこそ店との信頼関係は重要だ。
2012-11-12 19:50:20リン:そぅねえ… 条件は間違いなくこっちに対して有利である。 悩むのは相手のことを私がまったく知らないということ。 それは信用に足るパートナーか見極めれてないということ。 前回の件もあるし…急いで結論は出せないのだ。
2012-11-12 19:51:35\カランコローン♪/ スー:あ、いらっしゃいませ! 客が入ってきた。 リン:頼んでおいたものは入荷できてるかね? 客はずいぶん日焼けた肌のなパンデモスの男だ。 ほつれたマーチャント装備を着ており、熟練の行商人であることを伺わせる。
2012-11-12 19:52:43スー:グレープジュース1k ふかふかのパン1k… スーサーンが商品名と個数を読み上げながら荷物を渡していく。 親父:ここの料理じゃないと納得しないお得意さんがいてね そこの姉ちゃんもそうかい? あ、こっちに話題が飛んできた。 リン:いえ私は…
2012-11-12 19:53:08親父:ああ!ナルホド!恋人か!! ようやく店も構えたしいよいよ結婚か!やったな! スーサーンの肩をばしばし叩きながらおっさんがガハハと笑う。 ! いやそんな場合じゃない! 私勘違いされてる!!
2012-11-12 19:54:01リン:いや私達は今日始めてあったばっかりで… スー:いえこれからお願いすることがあって… 同時にしゃべった言葉が重なる。 親父:わかってるわかってる! 一目ぼれってやつだろ! 俺も今回の行商が終わったら久々に家に帰るんだ!! いいよなあ!恋愛ってなあ!
2012-11-12 19:55:00ああ…完全に誤解してる… 親父:二人の邪魔はできねえ! 次回はお祝いで高めの食品の注文とって来るから安心しておけ! スーサーンまたくるぜ! 私達がオロオロしてる間に荷物を馬車に乗せた親父はそそくさと店を出て行った。 …これどうしたらいいの…
2012-11-12 19:56:30リン:… スー:と、とりあえずですね! あなたの事を僕に任せてもらえませんか! 契約は横においておいてもらって結構ですので!! 顔を上気させながらスーサーンが早口で言う。 は!? こいつも急に何を言ってるの! 僕に身を任せてとかなんなのもう!なんなの!
2012-11-12 19:57:06リン:… スー:…… リン:………… スー:…………… 見る見る間に沈黙が積み重なる。 沈黙が伸びるほどスーサーンの顔が沈鬱になっていくのが見てわかる。 …この人正直で素直な人ね…ほっといたら悪い業者にだまされるかも…ううう胸が痛む… はぁ…ため息が漏れた。
2012-11-12 19:58:53リン:じゃあ…まずはお試しはどうかしら? 条件はここに住まわせてくれることとハンターの仕事が無いときでも店員として雇うこと! もちろん部屋は個室を要求するし、宿屋じゃないからお金も払えないわよ? それでもよかったらあなたを見極めさせてもらうわ! 我ながら無茶苦茶な提案である。
2012-11-12 19:59:49////// もう顔が真っ赤になっていくのが自分でもわかる。 なんなの!初心者でもやらないようなこの譲歩案は! でも料理人だったら万一襲われても対処はできるし! この提案なら私のほうがメリットがあるはず! ううう! 脳みそがぐちゃぐちゃになりそう!
2012-11-12 20:01:07\ぱぁあああああ!/ スーサーンが満面の笑みでこっちを見る。 飼い主を見つけた犬のようなそんな笑顔。 う。 ううう…! なんて邪気のない笑顔なのかしら… …いやいや! そんな気持ちはまだないし!
2012-11-12 20:01:56