山本七平botまとめ/【マッカーサーの戦争観②】/「平和憲法」を”占領手段として”利用したマッカーサー/~自己との苦しい戦いを回避して、安易な選択(戦争)を選び、滅亡した日本~

山本七平著『ある異常体験者の偏見』/マッカーサーの戦争観/203頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

1】話はだいぶ横道にそれたが、それついでにもう少しそれると、私の見た範囲では、金大中事件が日本国憲法との関連において論じられた形跡がないのが全く不思議であった。「主権の侵害」という言葉が戦後はじめて出てきた、と何かに書かれていた。<『ある異常体験者の偏見』

2012-12-16 14:28:01
山本七平bot @yamamoto7hei

2】これは「主権の侵害」が、戦後はじめて「ジャーナリズム」に取り上げられたということであろう。多くの戦争の発端が国際間の紛争により主権を侵害された、もしくは侵害されたと感じたときにはじまるわけだから、(続

2012-12-16 14:57:40
山本七平bot @yamamoto7hei

3】続>日本国憲法に定められた通り「国際間の紛争解決の手段として戦争を放棄し」「国の交戦権を認めない」場合、「主権の侵害」という問題の解決はこのようにすべきだ、という議論が当然に出てよいはずだと思ったが、どうもお目にかからなかったように思う。

2012-12-16 15:27:56
山本七平bot @yamamoto7hei

4】端的にいってしまえば、この事件は日本側には「パネー号事件」におけるような意味でのいわゆる実害はない。そして実害がない場合こそ原則通りに行動できる筈である。 従って「平和憲法下における主権侵害問題解決の原則」が何一つ提示されないとしたら、これは随分おかしな話だと思う。

2012-12-16 15:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

5】もちろん「経済援助の停止」や「停止」をちらつかせるなどという、過去においてアメリカがさんざん行った愚行、しかも日本のジャーナリズムが常に批判していたその愚行を再演するなら、それは実に滑稽なことだといわねばなるまいし、それが「平和憲法に基づく原則」とは勿論いえまい。

2012-12-16 16:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

6】ではこの問題について、一体われわれに何か明確な原則があるのであろうか。 おそらくないであろう。 原則がないということは「中立」という概念がないことである。

2012-12-16 16:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

7】いうまでもなく中立とは原則の側に立って自己と戦うことであり、この自己自身との戦いぐらい苦しい戦いはあるまい。 スイスの大統領が第二次大戦直後に消耗のあまり死んだという話を聞いたが、中立というのは、元来、一人間を消耗のあまり殺してしまうほどの苦しい戦いのはずである。

2012-12-16 17:28:01
山本七平bot @yamamoto7hei

8】それと比べれば、銃をもってとび出す方が、また自動小銃に体当りをくらわせる方が、はるかに安易である。 自己との戦いを避けて最も安易な道を選んだ。 そしてその安易な道は、聖書に記されている通り「滅びへの道」であった。

2012-12-16 17:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

9】確かに「中村大尉事件」の最中に、日露戦争の血の代償といわれた「満州の権益」を全部すてて在満邦人を全部引揚げるという道を選ぶことは、絶対に安易な道ではない。 第一、そんなことを一言でも口にしたら「世論」の袋だたきに会うだけでなく、殺されてしまうだろう。

2012-12-16 18:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

10】私は今の日本でも、同じような事態が起きたら、こういった道は到底とれないだけでなく、上記のような発言すら出来ないであろうと、金大中事件でしみじみと感じた。 確かにそういう道をとるより銃をつかんで飛び出す方がずっと安易なのである。

2012-12-16 18:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

11】すべてに同じことが見られ、原則との苦闘は常に回避される――。 確かに太平洋戦争は苦難の道だが、その道を選ぶにあたっては、常に、最も苦しい自己との戦いを回避して、その時その時の最も安易な方向へと進んだことは否定できない。

2012-12-16 19:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

12】そして戦後現われたさまざまの戦争批判の中で、常に欠落しているのは、「戦争とは実は最も安易な道だ」という、戦争というものがもつ実に不思議な要素を見ようとしないことである。

2012-12-16 19:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

13】この非常に奇妙な点は、平和憲法ができた当時には、理屈ではなしに、一つの実感として人びとの中に残っていたはずである。 そして金大中事件は、私にとっては、「あの実感が、もう完全に消失したんだな」と思わせた事件でもあった。

2012-12-16 20:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

14】そんなことを考えていた時、いわゆる「長沼判決」が出た…何回も読むうちに非常に強く感じたことは、この憲法が出来るに至った一つの民族の体験、それに基づいて、当時、程度の差こそあれ、すべての人がもっていたはずの「実感」が、これまた完全に消失したのだなと思わせた判決であった。

2012-12-16 20:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

15】否、これは福島裁判長だけの問題ではない。 「上告すれば合憲ときまっている」とか、やれ青法協がどうのこうのとか、やれ判決が事前に洩れたとか洩れないとか、こういった議論自体が、この憲法の背後にあった民族の体験とも言うべきものが、すでに忘れられていることを示していよう。

2012-12-16 21:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

17】「戦功を横取りして部下を憤激させた」このメイ将の目的が、占領政策を成功裏に終らせ、それによって政治家として名声も確立して次のステップヘと進むことだけであり、「平和憲法」も彼にとってはその手段の一つにすぎなかったであろう。 それは否定できまい。

2012-12-16 22:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

18】彼が日本人のために何かをしてくれたなどと考える者があれば、それは「占領ボケ」が未だに抜けていない証拠であろう。 またヴェトナム戦争に関する日本の報道と西欧の報道をつき合わせてみると、日本の報道における戦争観は、ほぼ完全にマックの戦争観だといえる。無理もない。

2012-12-16 22:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

19】すでに多くの人が、プレスコードによってマック宣撫班となった当時のマスコミにその思考を統制され、そこで育ち、そのままに成長してきたマック制下の申し子であり、またマスコミはその体質をそのままもっているのだから。

2012-12-16 23:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

20】しかし皮肉なことに「マックの戦争観」と「平和憲法」とは絶対に相いれないのである。 この矛盾は後にマック自身が自ら露呈するわけだが、結局は、この矛盾が、戦後の、戦争に関するすべての報道、記述、解説にそのまま出てくるのである。

2012-12-16 23:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

21】そしてあるときは「マックの戦争観」で、ある時は「平和憲法」で、と使いわけて、マック同様に、それが自己矛盾でないような顔をしているか、マック的な尊大な態度でごまかしつづけているわけである。

2012-12-17 00:27:49
山本七平bot @yamamoto7hei

22】『朝日ジャーナル』で穂積龍哉氏が、戦争中は「全国の津々浦々に無数の”東条”さんが存在した」と記されているが、戦後は未だに「無数のマックさん」が健在で、この矛盾にちょっとでもふれると、「占領軍総司令官」の如くに激怒するわけである。

2012-12-17 00:57:39
山本七平bot @yamamoto7hei

23】最近もある人が激怒して、「理由はいわない、ただもう絶対何も書くな」という手紙を送って来た。 マック制下に、今までのようなことを書いていれば、一種のプレスコード違反だから、最終的には、いわば「黙れ」といわれるのが当然であろう。

2012-12-17 01:27:53
山本七平bot @yamamoto7hei

24】これは、「この点に触れるな、その前で思考を停止せよ」ということであり、そしてここで停止すると、金大中事件と長沼判決とを、同一の基準で見ていくということが、できなくなるわけである。

2012-12-17 01:57:39