斎藤環先生「湯浅誠さんとの講演会」つぶやき

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東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

昨日は盛岡市男女共同参画青少年対策室主催の『もりおかユース塾』で湯浅誠さんとの講演会+対談。僕はひきこもり支援について、湯浅さんはホームレス支援について語ったが、予想通りと言うべきか、支援については驚くほど一致点や共通点が多かった。以下、思いついたことをランダムに呟きます。

2012-12-23 10:28:06
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

まず、いずれも先行するモデルが存在しないこと。日本の精神医療は、従来、海外の先行研究を輸入し、そこに独自の工夫と修正を加えて独自の概念に仕立て上げてきた。近年では「スチューデント・アパシー」が好例かな。

2012-12-23 10:29:44
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ホームレス支援では、むろん英米に先行事例はあるものの、日本のホームレスの特殊性(若年者は比較的少なく、中高年の野宿者が多い)もあって、そのままでは適用しにくいと。ちなみに湯浅さんによればホームレス人口は減少傾向とのこと。一万二〇〇〇人程度とか。減ったぶんは生活保護に移行した由。

2012-12-23 10:30:25
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ついでに言えば、日本の若年ホームレス人口は先進諸国中でも異例に少ない。以前から述べているとおり、社会的排除のスタイルとしてホームレスとひきこもりの二種類があり、日本や韓国ではひきこもりが多くなりがちであるため。家族主義、すなわち成人の親との同居率が高い国では必然的にそうなる。

2012-12-23 10:31:22
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

支援において重要なのは、ニーズを”掘り起こす”ためのアイディア。被災地に行っていきなり「困っていることは?」と尋ねても「何もありません」となるのは当然。ひきこもりやホームレスの支援もそうだが、まず相手の自己開示を前提とした支援は、入口での”作法”が大切。

2012-12-23 10:31:54
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

支援ニーズの把握は、問いかけの角度が重要。時には斜めからのアプローチも必要となる。正攻法で尋ね回って断られたあげくに「ニーズはなかった」と結論づけるのは問題。問いかけの作法や角度に問題がなかったかの検証とともに、さまざまな手法を試行錯誤する必要がある。

2012-12-23 10:33:20
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

被災地支援で、しばしば「こころのケア」が敬遠されたのはたぶんそういうことだろう。自己開示の作法は文化によって区々でありうる。そうした可能性を想像しつつ、どういう角度から切り込むかを考えなければならない。

2012-12-23 10:33:51
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

湯浅さんの提案は、例えば「足湯」。足湯に浸かってマッサージをする15分間は、そこで被災者の呟きをひろっていく。あるいは「炊きだし」。すべて支援者が準備するのではなく、例えば材料だけを用意して協力を依頼する。共同作業の中でつながりが生まれ、彼らのニーズも見えてくる。

2012-12-23 10:35:00
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

僕の経験から補足するなら、医療ボランティアで使用した血圧計がそれにあたる。ゆっくりマンシェットを巻いて血圧を測定する二~三分ほどの時間だけでも、一気に口がほぐれる被災者は少なくなかった。触診のコツは患部から遠い場所からはじめるのが大原則だが、心についても同じこと。

2012-12-23 10:35:29
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

「支援してやる」タイプの支援は、ハコモノか支援窓口を作っておしまい。困っている人はみずから声を挙げるべき、援助希求をせずに困るのは自己責任、というタイプはたぶん支援者向きではない。これからの支援者は社会的弱者の新たなニーズを積極的に発見し命名し、時には発明しなくてはならない。

2012-12-23 10:36:17
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

つまり「支援」に「関係」が先行するモデル。「コミュニケーション」ではなく「関係」が。福祉や支援をシンプルなアーキテクチャで一元化しようという発想の問題は、こうした「現前性に基づく関係性の構築」の超えられるモデルが存在しないから。精神療法がヴァーチャル化できないのと同じことだ。

2012-12-23 10:38:48
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ニーズの早期発見、早期支援の入口として湯浅氏も僕も「学校」を重視する。本気でひきこもり人口の統計を取りたければ、学校やPTAを通じてのアプローチが最も正確であろう(藤里町の例)。就労支援についても学校が積極的に外部からの支援を導入することでずいぶん変わってくる。

2012-12-23 10:39:18
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ひきこもり支援において本人の承認欲求を最重要視する意義について、いつも「マズローの五段階」を引用してきた。被災地を例にして「家を津波で流されて、何もなくなった時にまず何を考えるか」→第一段階の「生理的欲求」としてきたけど、これはミスリードだった。

2012-12-23 10:42:20
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

被災した人はまず家族の安否を気遣うはず、という当然のツッコミを質問紙でいただき反省しきり。今後は「山で一人で遭難したら」とかにたとえを変えないと。

2012-12-23 10:42:47
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

本当はもうこの五段階理論は通用しないと思う。まず「承認欲求」が異常に肥大しているはず。それと「情報飢餓=情報への欲求」の位置づけ。この欲求には安全欲求や関係欲求が含まれるはずだから位置づけが難しい。見方を変えれば情報とは欲求に関する情報だから、メタ欲求という位置づけになるかな。

2012-12-23 10:43:32
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

湯浅さんは著書「ヒーローを待っていても世界は変わらない」(朝日新聞出版)で切り込み隊長タイプのヒーローを否定している。悪の根源を名指し、ばっさり退治するタイプのヒーロー。そういうヒーローを待望する姿勢は民主主義を弱体化させると。

2012-12-23 10:44:28
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

しかし「湯浅誠」その人もまた、貧困支援のヒーローではなかったか。ただし、もちろん切り込み隊長タイプではない。いわば交渉するヒーローであり、折衝型ヒーローである。湯浅氏はその意味で、ヒーロー像に新しいロールモデルを追加したのだと僕は考えている。ご本人は否定するだろうが。

2012-12-23 10:45:59
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

脱原発運動の迷走は、基本的には悪者退治型ヒーローに依存しがちであることのように思われる。本当に必要だったのは、交渉に巧みな折衝型ヒーローだったはずなのに、「エア御用」とか下らない言葉遊びでその芽を潰してしまった可能性はないか。

2012-12-23 10:46:40
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

関係ないけど、湯浅さんと僕は靴が同じだった。黒のヤコフォーム。僕のよりも年季が入ってた。確か柄谷行人氏もヤコフォームだったはず(形状ゆえ”愛称”がデコッ八・笑)。まあお洒落とは言えまいが、たくさん歩く人向けの靴だ。http://t.co/wuIvCfQq

2012-12-23 10:46:58