代数学と幾何学が融合できるのは何かしら公理があるからか?

数学の専門家、@yon_ichiro さんによる連続ツィート。。代数学と幾何学を橋渡しする公理が存在するのか?という問いをうけてのもの。ちょっと話が広すぎたためか深い突っ込みに欠けるかも。 ポイントは・・・うーん、今回は絞りにくいな。「公理って、いわばゲームのルールです」「代数っていうのは演算の構造を考える学問」「幾何っていうのは空間の構造を考える学問」「代数と幾何をつなぐ公理は『あたりまえ』にみえるようなもの」といったところかなあ。
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四一郎 @yon_ichiro

(0)みなさまこんばんは。いまから、@sencho204 さんからのご質問「代数学と幾何学が融合できるのは何かしら公理があるからでしょうか」にお答えすべくツイートしようと思います。しかし答える側からすると難問。わかりにくいところや見当違いがありましたらみなさまどうぞご指摘を。

2012-12-28 23:49:02
四一郎 @yon_ichiro

(1)はじめに「代数学」「幾何学」「公理」とは何か、を説明しないといけないでしょう。とうてい日常語とはいえないので。まず「公理」ですが、何かしらの数学の理論を考える上で、なぜ? ということを問わずに、成立を前提とするようなことがらのことを言います。しかしこれでは心は伝えてない。

2012-12-28 23:52:29
四一郎 @yon_ichiro

(2)もともとは《浮世根問》を回避するために、昔々(紀元前だよ)の数学者たちは「公理」を設定したのでしょう。「直線って何?」「点がまっすぐ並んで…」「点って何? まっすぐってどういうこと?」「点とは位置だけがあり…」「位置って何?」こうなると困るので、議論の出発点として

2012-12-28 23:55:29
四一郎 @yon_ichiro

(3)いくつか基本的な術語を選び「この意味は訊かないでくれ!」と、理論を考察する人にお願いしたのが「無定義用語」と言われるもの。そして、それらを組み合わせて作られる主張のうち、やはり基本的ないくつかを選び「これは成立すると認めて議論を始めよう!」としたのが、公理です。もともとは。

2012-12-28 23:58:28
四一郎 @yon_ichiro

(4)たとえば、エウクレイデス原論』では、「」「直線」「(直線が点を)通る」などを無定義用語とし、「2点を通る直線はただ1つだけ存在する」などを公理としています。こんなのだれもが「当然じゃん」の一言で片付けてしまいそうなところですが、これをエッセンスとして採ったのがすごい。

2012-12-29 00:01:45
四一郎 @yon_ichiro

(うわあどうしよう、この調子で書いていったら今日も大長編連続ツイートになってしまう……しかも気持ちはあんまり長くならないようにって思っているから記述が中途半端だ……まあしかたがない、開き直って続けよう。)

2012-12-29 00:03:16
四一郎 @yon_ichiro

(5)しかし、現代数学の立場からすると、公理の設定とはもっと積極的な気持ちを込めたものだといっていいと思います。「公理」とは、「ゲームのルール」なんです。数学の理論とは、そこで考えることを楽しむゲーム。ゲームにはルールが必要で、それが公理。数学者は、自分たちの定めたルールに

2012-12-29 00:05:11
四一郎 @yon_ichiro

(6)厳格にのっとり、数学というゲームをするのです。その結果、自分たちや周りの人が「おお!」というような面白いことを見つけたり証明したりするのが、このゲームの目的。……どういうのが「面白い」のかはまた重大な別テーマなのですが、野崎先生の『数学的センス』には答えの一例があります。

2012-12-29 00:07:29
四一郎 @yon_ichiro

(7)で、ゲームですからルールがある。というより、ルールすなわちゲームシステム(実際のボードゲームやカードゲームではコンポーネントの手触りとかも大切ですが、ここではおくとして)。ルールの定め方によって、ゲームの世界や楽しみ方はまったく違ってきます。

2012-12-29 00:10:31
四一郎 @yon_ichiro

(8)たとえば、将棋のルールのうち桂馬のところだけ「桂馬は飛び越せないよ」と変更したとしましょう。これずいぶんゲーム性変わりますよ。いま流行の横歩取りとか石田流とかの戦法も、終盤の玉の寄せ方もまったく変わってしまいます。公理をどう設定するかは、その数学にとってもっとも重要です。

2012-12-29 00:13:00
四一郎 @yon_ichiro

(9)たとえば、先ほど挙げた『原論』の 平面幾何部分には、(表現はちょっと改変しますが)「1点とそれを通らない1直線があるとき、その点を通りその直線と平行な直線は1本以下しかない」という、私たちの日常感覚からすると「そりゃそうでしょ」としか思えないものが入っています。

2012-12-29 00:18:04
四一郎 @yon_ichiro

(10)ところが、この公理を「1点とそれを通らない1直線があるとき、その点を通りその直線と平行な直線は2本以上ある」と書き換えても、全体として矛盾が生じないことがわかっています。つまり、私たちの日常感覚には合わないものの、これはこれで一つの数学世界、ゲームを提示しているのです。

2012-12-29 00:19:34
四一郎 @yon_ichiro

(11)公理の設定とは、「いまこういうゲーム(数学世界)を考えてみたんだけど、いっしょに遊ばない? ルール(公理)はこれだけ、あとは考えればわかるから!」というゲームデザイナー(数学者)からの提案なのです。

2012-12-29 00:21:39
四一郎 @yon_ichiro

(12)もちろん、実際のゲームがそうであるように、公理から作られる数学の世界にも、楽しいものとそうでないものがあります。数学者は楽しみたくて数学をやっているわけですから、やはり楽しい数学をさせてくれる公理が生き残りますー数学の歴史長いですからねえ、風雪に耐えた公理、ということ。

2012-12-29 00:23:47
四一郎 @yon_ichiro

(「公理」の説明だけで12ツイートもつかっちゃった……どうするのこれから……しかもこれでも言葉足らず感炸裂中……)

2012-12-29 00:24:50
四一郎 @yon_ichiro

(13)ところでこういうと、じゃあ数学者は自然も社会も見ずに勝手に公理(ゲームのルール)を作って遊んでいるだけか、といわれてしまいそうですが、ええ、完全に否定はしないです。しかし、不思議なことに、そうやって空理空論のように思われていた数学が、後から実用できることがわかったりする。

2012-12-29 00:27:37
四一郎 @yon_ichiro

(14)さっき例にした「与えられた1点とそれを通らない1直線に対し、その点を通りその直線と交わらない直線が2本以上ある」という世界、双曲幾何というんですが、これもロバチェフスキーボヤイが発見・発表したころには、実世界にはありえないたんなるオハナシだと思われていました。ところが

2012-12-29 00:30:32
四一郎 @yon_ichiro

(15)今ではその双曲幾何が、物理学者が宇宙の形とか相対性理論とかを研究するのに、必要不可欠なツールとなっています。奇妙な公理とそれに基づく奇妙な世界を数学者が捏造した、と(世間も、たぶん本人も)思っていても、実世界はそれと同じくらい(それ以上?)奇妙だったりするのですね。

2012-12-29 00:33:47
四一郎 @yon_ichiro

(公理のはなしは、別に章立てして正面からやったほうがいいような気がしてきました……みなさまに誤解されることも多い話なので。)

2012-12-29 00:35:54
四一郎 @yon_ichiro

(16)公理とは何か、の話は長くなるので、あと一言だけで。私は、囲碁の「囲めば取れる」と「着手禁止点」のルールが、公理の例としてもっともいいと思うのです。あれだけで「二眼あれば活き」という『定理』ができあがる。二眼あれば活き」ってルールじゃない。そして見事な碁の世界が作られた。

2012-12-29 00:40:03
四一郎 @yon_ichiro

(17)ともあれ、話を進めます。ええと次は「代数」ですね。これも本当にいろいろな使われ方をする言葉ですが、うんと大雑把にいうと、『数』『式』などの間に演算ルールを公理として設定したとき、どのような構造が現れるかを研究するのが、「代数 algebra」という数学分野です。

2012-12-29 00:42:13
四一郎 @yon_ichiro

(18)たとえば、『整数』という世界には加減乗(たす・ひく・かける)という演算(算法)があります。あります、っていうといかにももともとあるみたいですが、現代数学の立場からは、そういう演算の存在を公理として要請した、ってことになるんですが、まあそれはおいといて、これでどうなるか。

2012-12-29 00:44:22
四一郎 @yon_ichiro

(19)演算を知らずにみる『整数』の世界は、ただ数たちが等間隔にずらっと並んでいるだけのもの。しかし、加減乗を知ることにより、「割り切れる」「約数・倍数」などの概念が生まれ、たとえば「5の倍数と3の倍数の積はいつも15の倍数だ」とか「7の倍数同士の和は必ず7の倍数だ」とか、

2012-12-29 00:46:35
四一郎 @yon_ichiro

(20)いろいろな定理が見えてきます。ここでは簡単な例しか挙げられませんが、素数に関することとか、平方剰余の相互法則とか、ディリクレ関数のこととか、かなり楽しい結果がたくさん知られています。これらがすべて『整数』に加減乗を与えた世界での結果で、こういうのが代数的」なものの一例

2012-12-29 00:50:38
四一郎 @yon_ichiro

(21)一方「幾何」とは何か。こちらは、図形のことを考える数学だよ、といえば多くの人は納得してくださると思います。角度とか長さとか、合同だとか相似だとか……うーん、しかし、2012年の時点でそういって終わりにしちゃだめだよなやっぱり。

2012-12-29 00:53:41
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コメント

ステレ(菅野たくみ/ステージレフトP) @elderalliance 2012年12月29日
いくつかの公理系と定義によって、幾何学そのものが代数学の「例題」になっているという、基本的だが大切な話。この辺プログラミングすると、ロボットが動いたり経済が動いたりする。
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