山本七平botまとめ/【恐ろしい話①】/死の商人よりも恐ろしい「死の詐欺師」/~資源がある期間だけにすぎない産油国の富~

山本七平著『無所属の時間』/恐ろしい話/69頁以降より抜粋引用。
3
山本七平bot @yamamoto7hei

①【恐ろしい話】…外国雑誌で読んだ「ひどい話」を紹介しよう。…石油成金とされている…X王国…にとって石油は唯一の財産だけに、これの防衛には相当に神経過敏である。ところが細い湾をへだてた隣国も、砂漠をへだてた隣国も石油によって獲得した外貨で強大な軍備をもっている。<『無所属の時間』

2012-12-21 22:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

②自分のところも何とかしなければと思っているところへ、セールスマンが来た。…王様はセールスマンから物を買うのは慣れている。 そこでカタログを見せられ、色々説明されて、王様はまるでキャデラックを買うような調子で、最新式の戦闘機を一機買った。

2012-12-21 22:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

③車と比べると少々高かったがこれも致し方ないであろう。何しろ空を飛ぶのだから――。 だが、これが王様にとっては運の尽きであった。 少し経つと別のセールスマンが来て飛行場が必要だと言った。…そして滑走路、格納庫、補給用パイプライン、地下弾薬庫等々々の巨額な建設契約が成立した。

2012-12-21 23:28:01
山本七平bot @yamamoto7hei

④するとまたセールスマンが来た、管制塔と電子機器が一そろい必要という、次にまたセールスマンが来た、地対空ミサイルが必要という、次にまたセールスマンが……、次にまたセールスマンが……、……、……。 すべての買物がすんだ。

2012-12-21 23:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤最初は小国にふさわしい戦闘機数機のつもりが巨大な一大軍事施設群に変化し、膨大な天文学的数字のドルの流出となった。 しかしまだ戦闘機は飛べない。 複雑な機械を操作する搭乗員、これを整備する整備員、電子機器を取扱う専門家等々々を養成しなければ、すべてはスクラップにすぎない。

2012-12-22 00:27:50
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥しかし、ベドウィンの子弟に、まず外国語の修得からはじめて、これらを完全にマスターさせるまでには、どうしても数年かかる。 その時は、購入した兵器は全部、時代遅れのスクラップになっているであろうという。 これでははじめから、スクラップを売りつけているのと同じである。

2012-12-22 00:57:39
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦「死の商人」という言葉があった。 彼は、たとえ「死の商人」であれ「商人」ではあった。 しかしこれらの例は、もはや商人とはいえず「死の詐欺師」と言うべきかもしれない。

2012-12-22 01:27:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧そしてこれを行なっているという点では、東側も西側も同罪であって、彼らの目的は、スクラップを高く売りつけて手っとり早くドルを回収ないしは獲得する、という以外に、何の目的もないように見える。

2012-12-22 01:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨一時はアラブ産油国に半永久的にドルが蓄積するように言われていたが、現在では、多くの専門家はそういう見方をしていない。 オイルショックによる世界的インフレは、まわりまわって農産物や工業製品の価格を押し上げるから、油価が、相対的には下落するという事態が起こる。

2012-12-22 02:27:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩従って産油国のドル蓄積は、それまでのタイムラグの間だけ、という見方すらある。 とすると、その間に一気にスクラップを売りつけようという魂胆であろうか――。 そうこうしているうちに、三十年、四十年はすぐすぎる。 小産油国の石油は掘りつくされる。

2012-12-22 02:57:40
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪残ったものは廃坑とゴーストタウンとスクラップに等しい高価な兵器。そのときが来たら、その地は、1920年代と同様、すべての国から見棄てられるであろう。 もちろん、日本のマスコミからは完全に姿を消す。 少々ひどすぎる話だと思うが――。

2012-12-22 03:27:47