噴火とともに消滅した伊東市小川沢の化石湖の謎と「赤牛」伝説

まとめました。
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月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

伊東市小川沢の謎、たぶん解けた。何年も悩んでいたことがすべてつながって説明がつく。

2013-01-01 22:31:22
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

1)数万年前、伊東温泉街の西にある小川沢の中流で巨大地すべりが生じた。岩手宮城内陸地震にともなう荒砥沢クラスのやつ。崩壊・堆積地形の一部がはっきり残っている。地すべりは東に流れ、南伊東のあたりで幅1kmにわたって松川の谷を埋めた。その後、松川が再び流路の谷間を広げた。

2013-01-01 22:47:42
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

2)伊東競輪場とか、旭小学校のグランドとか、その北東の凹地とか、火口でもないのに変な凹地があって成因に悩んでいたが、おそらく地すべりブロックが小さな谷の出口をふさいで作った地形だ。

2013-01-01 22:50:06
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

3)この地すべりブロックの上には、少なくとも2つの湖ができた。崩壊地のすぐ下の小川沢にそったものが大きいが、その東の小川沢の出口付近にもあった。どちらも湖の底でたまった泥層や土石流が分布する。

2013-01-01 22:53:39
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

4)湖底にたまった泥の厚さは上流側のが30m、下流側のが10mはあるので、数千年間は安定した存在であったろう。しかし2万3000年前にその静寂が破られた。伊豆東部火山群の馬場平ー鉢ヶ窪火口の噴火だ。この割れ目火口の北東部は地すべりを貫き、噴火とともに2つの湖が決壊して消滅した。

2013-01-01 23:04:52
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

5)そのことは、馬場平ー鉢ヶ窪のスコリア(陸上堆積)が、湖底にたまった泥層の上を直接おおうことからわかる。南西の馬場平火口のスコリアの特徴が通常のストロンボリ式噴火を示すのに対し、湖を貫いて生じた鉢ヶ窪火口のものは水とマグマが反応して爆発的になった。

2013-01-01 23:09:28
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

6)鉢ヶ窪火口から出たスコリアは20m以上の厚さをもって前述の地すべりブロックの上をおおってしまったため、地層が観察できる露頭の数がごく限られている。このことが長らくこの地質学的事件の存在をおおい隠した。

2013-01-01 23:13:14
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

7)地質図の下書きようやく完成。このストーリーは今春発売の「火山がつくった中伊豆の風景」(伊豆半島のジオマップ4)で図解する予定です。乞うご期待

2013-01-01 23:22:47
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

8)余談を語り忘れた。伊東温泉街南部にある伊豆東部火山群の火口湖のひとつである一碧湖には「赤牛」の伝説がある。湖底に赤牛という怪物が住んでいて旅人を悩ませた。この伝説には不思議なエピソードがついている。赤牛はかつて「小川沢」にあった湖に住んでいたという。

2013-01-01 23:26:23
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

9)現在の小川沢のどこにも湖はない。2万3000年前の噴火とともに決壊・消滅した前述の化石湖の記憶が伝説と化したのだろうか? いやそれはあまりに古過ぎる記憶だ。いくらなんでも縄文時代の風景の記憶が現代にまで語り伝えられるとは考えにくい。

2013-01-01 23:29:22
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

10)この謎については、今春刊行される伊東市史の自然・災害編で解説します。こちらもお楽しみに!

2013-01-01 23:31:52
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

11)ちなみに小川沢というのは、ハトヤホテルの北側にある深い谷間のことです。森林公園の「大平の森」に行く道路ぞいの谷間。

2013-01-01 23:35:32
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

12)この話題になった地域の赤色立体地図です。どこがどこだか考えてみると楽しいですよ。 http://t.co/C7Oy6bgr

2013-01-01 23:40:32
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T.INOKUCHI / 井口 隆 @nied_inok

@usa_hakase ツイートに添付した地すべり地形分布図の「岡」か「鎌田」の地名がある地すべりでしょうか?地すべりと火山活動のダイナミックな地史の詳しい解説のあるジオマップに期待します。 http://t.co/xsLW9kYl

2013-01-01 23:45:29
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T.INOKUCHI / 井口 隆 @nied_inok

@usa_hakase なるほど、よく分かります。防災科研の地すべり分布図では移動体は川の左岸側しか認定していないけど、対岸も地すべり移動体ですね。地震w誘因とした地すべりでしょうか?

2013-01-01 23:56:26
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

おっしゃる通り「岡」「鎌田」の地滑りです。それが鉢ヶ窪スコリア丘をはさんでその西の小川沢の地滑りにつながります。スコリア丘に覆われたため地形的に分断されました。RT @nied_inok: ツイートに添付した地すべり地形分布図の「岡」か「鎌田」の地名がある地すべりでしょうか?

2013-01-02 00:12:24
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

地滑りそのものに噴火と絡んだ証拠はないので、おそらく地震だと思います。RT @nied_inok: なるほど、よく分かります。防災科研の地すべり分布図では移動体は川の左岸側しか認定していないけど、対岸も地すべり移動体ですね。地震w誘因とした地すべりでしょうか?

2013-01-02 00:14:40
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

そのとおり対岸も地滑り移動体だと考えます。RT @nied_inok: なるほど、よく分かります。防災科研の地すべり分布図では移動体は川の左岸側しか認定していないけど、対岸も地すべり移動体ですね。地震w誘因とした地すべりでしょうか?

2013-01-02 00:16:22
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

この地すべり地形図すごいですね。これを最初から見てれば問題解決は早まったかもです。RT @nied_inok:ツイートに添付した地すべり地形分布図の「岡」か「鎌田」の地名がある地すべりでしょうか? http://t.co/zvO5aDwv

2013-01-02 00:18:54
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T.INOKUCHI / 井口 隆 @nied_inok

@usa_hakase 返信ツイートありがとうございます。今春に刊行予定のジオマップや市史が待ち遠しいです。期待します。地震・火山・地すべり・洪水 氾濫など災害に関連する多様な地変をバラバラでなく総合的に組み立てていく事が大事だということも論述して欲しいです。

2013-01-02 00:24:29
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

あれ2万3000年前は縄文時代じゃなくて旧石器時代だ。まちがえた。

2013-01-02 00:25:45
T.INOKUCHI / 井口 隆 @nied_inok

@usa_hakase この図式での地図画像は北海道以外はまだ未公表ですが、似たものはWebサイトから閲覧できます。今後の研究に是非ご活用下さい。 http://t.co/pY0yBIAu http://t.co/SqasDx46

2013-01-02 00:36:00
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月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

13)伊東温泉街の南西、小川沢の地すべり移動体が底にあり、その上に馬場平ー鉢ヶ窪スコリア丘ができた丘陵地は、現在「水道山」の名で親しまれている。ここに大量の湧き水があり、戦前から伊東市の水源として役立てられてきたからだ。「第一水源」の名をもつ由緒ある水源もある。

2013-01-02 08:44:19
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

14)鉢ヶ窪火山をつくったマグマを供給した岩脈が、スコリア層中に地下ダムをつくった。伊東市の第一水源は、そのわきから流れ出ている湧水を利用している。写真→http://t.co/oD5F1IMT

2013-01-02 08:49:30
月野うさはかせ Prof.Lièvre @usa_hakase

15)ここ以外にも水道山のあちこちに水源がある。鉢ヶ窪の厚いスコリアに胚胎する地下水だと単純に考えていたが、底にある地すべりブロックと土石流が不透水層として機能しているのだろう。あるいは前述の化石湖の一部が、いまだに地下にあると考えてもよいのかもしれない。

2013-01-02 08:54:19