シュペーマン『原子力時代の驕り』②

ロベルト・シュペーマン『原子力時代の驕り―「後は野となれ山となれ」でメルトダウン』(山脇直司他訳)に関する、宗教学者 島薗進氏の2つ目の連続ツイートです。
11
島薗進 @Shimazono

0ロベルト・シュペーマン『原子力時代の驕り―「後は野となれ山となれ」でメルトダウン』(山脇・辻訳)②脱原発を決めたドイツの世論、またキリスト教界の世論に大きな影響を及ぼした哲学者の1970年代から3.11後に至る議論をまとめた書物12月刊。http://t.co/wgF7V2TN

2013-01-03 11:55:06
島薗進 @Shimazono

1ロベルト・シュペーマン『原子力時代の驕り―「後は野となれ山となれ」でメルトダウン』(山脇直司他訳)②シュペーマンは自分たちが利益を得て将来世代にひどく負担を背負わせる科学技術として核利用を見ている。将来世代への負担を無視・軽視する楽観論の背後に近代科学の視野狭窄がある。

2013-01-03 11:55:23
島薗進 @Shimazono

2シュペーマン『原子力時代の驕り』②著者の考えでは、楽観による失敗は手近な経済的な利益を得るための科学技術に対する過度の期待がある。それは将来世代の負担を増やし生存を脅かすのだが、そのことには目をつぶろうとする。この驕りこそ、邦訳書の副題であり、原著の正題である

2013-01-03 11:55:38
島薗進 @Shimazono

3シュペーマン『原子力時代の驕り』②「〈後は野となれ山となれ〉でメルトダウン Nach uns die Kernschmelze」の意味する所。私なりに解釈すると―「メルトダウンが起こるとしても私たちの生きている間のことではない」のだし求めていることは別のたいへん大きな利益なので

2013-01-03 11:56:57
島薗進 @Shimazono

4シュペーマン『原子力時代の驕り』目的である良い経済効果に付随的な悪影響があるとしても「後で解決すればよい」という考えを指すものだ。ここでシュペーマンが問題とするのは、近代科学が陥りがちな重大な視野狭窄だ。シュペーマンはある目的にためになされる科学技術の追求から生じる

2013-01-03 11:57:14
島薗進 @Shimazono

5シュペーマン『原子力時代の驕り』②「付随的諸影響」を軽んじる傾向を問題にしている。これは原子力開発だけの問題ではない。シュペーマンは生命科学の問題にもふれている。生殖補助医療や人胚研究から生じる危険にもふれている。「認識欲は正当なものであり続けますが、その適用に関わる技術の」

2013-01-03 11:57:31
島薗進 @Shimazono

6シュペーマン『原子力時代の驕り』②「至るところで、人間は認識と非常にナイーブな付き合い方をしているように私には思えます」(111ページ)。ES細胞培養やクローン技術を、またiPS細胞の研究を人に適用して、どこまで研究を進めてよいのかきわめて難しい倫理問題が関わる。

2013-01-03 11:57:45
島薗進 @Shimazono

7シュペーマン『原子力時代の驕り』②だがそのような問題はできるだけ避けて通りたい。そうしないと国際競争で遅れを取ってしまうだろう。楽観論の背後にある近代科学の問題を浮彫にする逸話として、物理学者のカール・フリードリヒ・フォン・ヴァイツゼッカーの広島原爆投下の際の追憶をあげている。

2013-01-03 11:58:04
島薗進 @Shimazono

8シュペーマン『原子力時代の驕り』②ナチス政権の外務次官を務めた父をもち、戦後ドイツの大統領となった兄をもつこの物理学者はナチス時代は原爆の開発に携わり、戦後はキリスト教の立場から平和運動を進める哲学者となり、シュペーマンと同じくハイデルベルク大学で哲学教授となった。

2013-01-03 11:58:24
島薗進 @Shimazono

9シュペーマン『原子力時代の驕り』②「フォン・ヴァイツゼッカーは私に、彼が他の物理学者と一緒に捕われていたとき、日本への二度の原爆投下について経験したことを次のように話してくれました。私たちの最初の反応は、「ウォー、うまくいった」だった。けれども、だんだん、「恐ろしいことだ」」

2013-01-03 11:58:37
島薗進 @Shimazono

10シュペーマン『原子力時代の驕り』②「という認識が沸いてきた、と。こうした最初の深い満足感に関する咎めから、科学者たちは自由でありません。ヴァイツゼッカーは、いわゆる残余リスクについて知っていたにもかかわらず、オーストリアで、当時の首相ブルーノ・クライスキーに原子力発電所の」

2013-01-03 11:58:49
島薗進 @Shimazono

11シュペーマン『原子力時代の驕り』②「建設に肩入れをするよう助言しました。しかもその時、通常では何も起こりえないということを彼は前提にしていたのです。」(p108-9)著者は近代科学が「疑わしいときは自由を」選ぶという倫理をもつと捉え、この倫理は受け入れられないとする。(続)

2013-01-03 11:59:44