十返舎一九さんインタビュー

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

【新春特別企画】あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。本日は新春特別企画と題しまして、東海道中膝栗毛作者の十返舎一九さんをお招きしました。インタビューの様子を3日間に渡りお届けしますのでどうぞご覧ください。

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼんた「初めまして。ぼんたと申します。本日はよろしくお願いします」十返舎一九「初めまして。よろしくお願いします」 http://t.co/AKvUO5GZ

拡大

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼ「東海道中膝栗毛、発売から200年以上経った今でも大変な人気ですね」十「ありがとうございます。私もまさか、歩き旅が主流ではない時代までこの本が読まれるとは思っていませんでした。こうして何代も後の世代の人に読んでいただき、たいへん感謝しています」

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼ「現在私が超意訳で連載しているものはもうすぐ二編がスタートするわけですけれども、初版本では二編ではなく『浮世道中膝栗毛 後編』というタイトルでしたね」十「はい、当初はこの辺りで一区切りつける予定で、大井川が最終回のつもりだったんです」ぼ「実際は八編までの出版ですね」

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

十「おかげさまでたいへん売れまして、増刷を重ねるうちに版木が擦り切れ、再版することになったときにタイトルを改めました。八編まで出版されたあとも金比羅道中などいろいろ出ていますから、弥次喜多は神田を出発してから21年も江戸に戻れなかったのです (笑)」

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼ「発売前のエピソードなどはございますか」十「実は最初、できあがった原稿を蔦屋重三郎さんのところへ持ち込んだのです。でも『あなたの書いた小説は当たったことがないので』と断られてしまいましたよ」 http://t.co/XAJP7g22

拡大

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼ「東海道中膝栗毛の版元は村田屋治郎兵衛さんですよね」十「ええ、あの人も最初は渋々でした。本が売れてずいぶんホッとしていたようです。当時から印税システムがあったら、私も死ぬまで金に困らずに済んだかもしれませんね。ははは」

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼ「この作品は旅行ガイドブックとしての位置づけもありますが、それより弥次喜多や他の登場人物とのハプニングが何より魅力的です。実は、十返舎さんも弥次喜多のような愉快なおじさまかなと思って来たのですが、今日お会いしてずいぶん違う印象を受けました」

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

十「当時の読者のかた達からもそう思われていたみたいです。一度知り合いの紹介で、私と旅をしたいという人と一緒に歩いたのですが、ずいぶん退屈そうでしたよ。後で聞いたところでは『ずっと何か書いていてロクにしゃべりもしない。あんなにつまらない男だったとは』とボヤいていたそうです」

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼ「旅が進むに従って当然江戸から離れていきますが、取材なさっていると、言葉や文化の違いなどが普通の旅以上に気になるのではありませんか」 http://t.co/4q3UeS4E

拡大

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

十「方言というものは、古代の言葉が形を変えながらその地方に根付いたものなのだなということを実感しますね。私は駿河の出身なので尾張辺りまでならなんとかわかりますが、西方や奥州などは言葉の理解が困難でした」

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼ「わからない言葉はどうやって調べたのでしょう」十「私が子供のころに『諸国物類祢呼』という日本で初めての方言集が出ておりまして、これは大いに参考になりました。越谷吾山という人の著書です」

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼ「これから先の弥次喜多に、どんな出来事が待ち受けているか、とても楽しみです」十「二編以降も、初編と同様にたくさんの登場人物が出てきますよ。楽しみにしていてください」

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ぼ「本日は貴重なお話をたくさん聴かせていただき、ありがとうございました」十「ありがとうございました」［おわり]

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

※［ネタバレ］インタビュー内のエピソードは、岩波文庫「東海道中膝栗毛(上)」の解説などより引用しました。