映画『ホビット』と指輪物語の世界

琴瀬美沙さんによる、映画『ホビット』の詳細緻密な分析です。前作『ロード・オブ・ザ・リング』や原典との比較、照応など、詳細にわたって検討されています。
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琴瀬美沙 @K_misa_maguro

今から「ホビット」観てきます。

2013-01-09 19:35:19
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

さて「ホビット」観て参りました。観終えてあれこれと気になって仕方なくなり、帰宅してから『ホビットの冒険』『シルマリルの物語』『指輪物語 追補編』と引っ張り出して調べもの。やっと目当ての記述が見つかって落ち着いたので、感想呟きます。

2013-01-10 00:47:44
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:まず全体の感想。原作のエピソードを一つ一つ非常に丁寧に、しかも膨らませて映像化していると思いました。『指輪物語』より遥かに短い『ホビットの冒険』を、同じ三部作として映画化するとあって、原作のエピソードがはしょられるどころか、逆にエピソードが増えたりしています。

2013-01-10 00:52:23
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:しかし、映画化に当たって加えられたエピソードも、完成オリジナルというわけではなく、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作へと繋がる伏線や架け橋的場面であったり、『ホビットの冒険』本文以外のトールキンの文章をもとにしていたりすることに好感が持てます。

2013-01-10 00:56:13
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:「ロード・オブ・ザ・リング」にも登場している役は、役者さんが続投しているのも嬉しいところ。冒頭に少し登場する老ビルボとフロド、ガンダルフ、エルロンド。→

2013-01-10 01:01:47
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

→また、原作『ホビットの冒険』には登場しませんが、映画では『指輪物語』への伏線となるオリジナルシーンに登場するサルマン、ガラドリエル。「ロード・オブ・ザ・リング」を観てるとこれだけでにやにやしてしまう。

2013-01-10 01:02:57
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:一番の脚色はもしかしてドワーフのビジュアルか? 若者のフィーリ、キーリなんかはともかく、トーリンは原作読む限りもっとお爺ちゃんのイメージでしたが、えらく格好良いお兄さんになってました。まあビルボが狂言回しで物語の主役はトーリンみたいなものだしなあ。

2013-01-10 01:07:39
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:全体的に動きが大きく立ち回りも多く、画面が派手に見える演出がされてました。『ホビットの冒険』ってもっと地味な話じゃなかったかなあ?と思ったのですが、→

2013-01-10 01:11:43
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

→原作を確認したところ、これは予想外だったのですが、映画ではオークに襲われる回数が増えたくらいで、エピソードの内容も順序も物凄く原作に忠実に作られていました。原作だとさらっと書かれているので読み飛ばしていたのに、忠実に映像化するとあんなにも派手な場面に作ることができるのか、と。

2013-01-10 01:15:55
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

一応『ホビットの冒険』『指輪物語』『シルマリルの物語』は全編読破してます。ただし、10年くらい前に。なのでゴブリンとの戦闘だの岩場での雷合戦だの松ぼっくりだの、派手なのは皆映画オリジナルシーンかと思ったんですよ。で、原作確認したんですよ。全部原作に書かれてるんだ、これが。

2013-01-10 01:24:25
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

あ、中つ国関係のトールキンのテキストでは『終わらざりし物語』と、『中つ国の歴史』(未訳?)の草稿集類は未チェックです。『終わらざりし物語』の邦訳が出た時は嬉しかったけど、結局読んでない、と。

2013-01-10 01:28:04
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:嬉しい演出。冒頭、『指輪物語』本編開始時点のビルボとフロドが登場すること。ビルボが「赤表紙本」の執筆を始めるのですが、その書き出しは原作『ホビットの冒険』の冒頭そのままです。(ビルボの執筆した日記・回想録の抜粋の翻訳本が『ホビットの冒険』という設定の世界観なので)

2013-01-10 01:36:10
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:嬉しい演出。歌。ビルボの家に押し掛けて好き勝手やってるドワーフ達が歌う歌、旅立ちに向けてのドワーフの歌、ゴブリンの歌、等々。全部原作通りで歌詞もおそらく本文そのまま。恐ろしい凝り様です。

2013-01-10 01:39:36
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:嬉しい演出。茶色のラダガスト大活躍。これは完全オリジナルシーンですね。原作では確か存在は示されてるけれど出番はろくになかった魔法使いラダガスト。ウサギ橇で走り回るとか可愛過ぎる。あとハリネズミも可愛かったなあ。

2013-01-10 01:42:57
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

×完成→○完全 RT @K_misa_maguro: 「ホビット」:しかし、映画化に当たって加えられたエピソードも、完成オリジナルというわけではなく、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作へと繋がる伏線や架け橋的場面であったり、『ホビットの冒険』本文以外のトールキンの文章を//

2013-01-10 01:44:10
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:嬉しい演出。このシーンが見たかった! ゴラム(ゴクリ)とビルボのなぞなぞ問答。『指輪物語』に直接繋がるこの場面が凄く丁寧に作られていたのが本当に嬉しい。なぞなぞの数は原作よりはしょられていたけれど、許容範囲。忠実にしていたらくどかったかも。

2013-01-10 01:48:10
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

いやー、一時間くらい見た辺りからでしょうかね、一作目で原作のどこまで進むのかな、と気になり出したの。まさかなぞなぞまでやってくれるとは思いもよらず。

2013-01-10 01:50:24
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

松ぼっくりは本気で驚いて、なんて演出なんだと呆れて、原作通りだと知って再び驚いた。

2013-01-10 01:52:21
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:大きめの改変。はなれ山のドワーフの歴史と、トーリンとオークのアゾグの関係。映画冒頭、老ビルボの記述内容という形で『ホビットの冒険』の前日譚が流れます。エレボール(はなれ山)の下のドワーフの王国とその滅亡、ドワーフ達が流浪の身となった経緯について。→

2013-01-10 02:00:19
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:原作ではビルボの家にやってきたトーリンの口から語られるドワーフの身の上話ですが、映画の方が描写が詳しい。何か典拠があるのか、と探したところ、それらしいのを見つけました。→

2013-01-10 02:02:34
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:→『指輪物語 追補編』より、「A 王たち、統治者たちの年代記」の「III ドゥリンの一族」がそれです。原作『ホビットの冒険』でのトーリンの話と、映画「ホビット」冒頭のドワーフの歴史に重なる内容が、固有名詞入りで詳しく書かれてます。

2013-01-10 02:06:28
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:映画では、はなれ山の王国滅亡以来のトーリンの宿敵として繰り返し現れるオークの首領アゾグですが、この関係は映画オリジナルです。ただし、ドワーフの王国滅亡以後の流れに関係のあるアゾグという名のオークは存在しています(前述「III ドゥリンの一族」の記述による)→

2013-01-10 02:11:21
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:→ただし、「III ドゥリンの一族」でのアゾグは『ホビットの冒険』の時点では既に死亡しています。映画ではこの辺りのキャラクターの設定を少し変えて、本編にサブのストーリーとして組み込んだものと思われます。

2013-01-10 02:14:34
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:エルフとドワーフの関係について。映画ではドワーフはエルフを良く思っていないことが繰り返し描かれ、それは、はなれ山の王国が竜のスマウグに襲われて滅亡したとき、エルフが助けてはくれなかったことに由来するように映像からは受け取れます。→

2013-01-10 02:20:38
琴瀬美沙 @K_misa_maguro

「ホビット」:→しかし、原作では『ホビットの冒険』においても『指輪物語 追補編』「III ドゥリンの一族』でも、はなれ山の王国の滅亡に絡んでエルフは登場しません。この展開も映画オリジナルか?

2013-01-10 02:27:27