山本七平botまとめ/【バシー海峡④】/「バシー海峡の悲劇」はまだ終わっていない!/~「やるだけの事はやった」という”バシー海峡的”行き方を続けている日本人~

山本七平著『日本はなぜ敗れるのか』/第2章 バシー海峡/63頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①ではなぜこのように全く成果のあがらない事をするのか。言うまでもなくそれは、成果があがらないとなると、その方向へただ量だけふやして、同じ事を繰り返す事が、それを克服する方法としか考えられなくなるからである。 …そしてこの事を非常に大がかりにやったのが「バシー海峡」であった。

2013-01-08 19:57:40
山本七平bot @yamamoto7hei

②ガソリンがないといえば反射的に技術者を送る。相手がそこへ来るといえば、これまた反射的にそこへ兵力をもっていく。そして沈められれば沈められるだけ、さらに次々と大量に船と兵員を投入して「死へのベルトコンベア」に乗せてしまう。<『日本はなぜ敗れるのか』

2013-01-08 20:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

③それはまさに機械的な拡大再生産的繰り返しであり、この際、ひるがえって自らの意図を再確認し、新しい方法論を探究し、それに基づく組織を新たに作りなおそうとはしない。 むしろ逆になり、そういう弱気は許されず、そういうことを言う者は敗北主義者という形になる。

2013-01-08 20:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

④従って相手には、日本の出方は手にとるようにわかるから、ただ「バシー海峡」で待っていればよい、ということになってしまう。

2013-01-08 21:27:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤この傾向は日露戦争における旅順の無駄な突撃の繰り返しから…毎年毎年繰り返される「春闘」まで一貫し、戦後の典型的同一例をあげれば「60年安保」で、これは、同一方法・同一方向へとただデモの数を増すという繰り返し的拡大にのみ終始し、その極限で一挙に崩壊している。

2013-01-08 21:57:40
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥一方、私が戦った相手、アメリカ軍は常に方法を変えてきた。 あの手がだめならこれ、この手がだめならあれ、と。 同じ型の突撃を馬鹿の一つ覚えのように機械的に何回も繰り返して自滅したり…ボロ船船団を同じ様に繰り返し送り出して自ら大量「死へのベルトコンベア」を作る様な事はしなかった。

2013-01-08 22:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦これは、ベトナム問題への対処の仕方にも表われているであろう。 あれが日本軍なら、五十万をおくってだめなら百万を送り、百万を送ってだめなら二百万をおくる。 そして極限まで来て自滅するとき「やるだけのことはやった、思い残すことはない」と言うのであろう。

2013-01-08 22:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧一億何千万円とかを投入した小野田少尉の捜索が失敗した時、それに携わった人が言った言葉が、やはり「やるだけの事はやった」であった。 そしてバシー海峡で全ての船舶を喪失し、何十万という兵員を海底に沈め終った時、軍の首脳はやはり言ったであろう、 「やるだけの事はやった」と。

2013-01-08 23:27:56
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨これらの言葉の中には「あらゆる方法を探究し、可能な方法論のすべてを試みた」という意味はない。

2013-01-08 23:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩ただある一方法を一方向に、極限まで繰り返し、その繰り返しのための損害の量と、その損害を克服するため投じつづけた量と、それを投ずるため払った犠牲に自己満足し、それで力を出しきったとして自己を正当化しているということだけであろう。

2013-01-09 00:27:47
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫従って小松氏が、敗因の中にこの海峡の名をあげたのは、当然すぎるほど当然であった。 太平洋戦争自体が、バシー海峡的行き方、一方法を一方向へ拡大しつつ繰り返し、あらゆる犠牲を無視して極限まで来て自ら倒壊したその行き方そのままであった。

2013-01-09 01:27:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬だがしかし、わずか二十年で、すべての人がこの名を忘れてしまった。 なぜであろうか。 おそらくそれは、今でも基本的には全く同じ行き方をつづけているため、この問題に触れることを、無意識に避けてきたからであろう。

2013-01-09 01:57:36
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭従ってバシー海峡の悲劇はまだ終っておらず、従って今それを克服しておかなければ、将来、別の形で噴出して来るであろう。

2013-01-09 02:27:46