ニセコイ二次創作「テンコウ」

「転校しても、私たちずっと友達だからね」「るりちゃんのこと、ずっと忘れないから」 扉の向こうから聞こえてくる友人たちの声――。私は涙を堪えて震えながらぎゅっと唇を噛み締めていた。
マンガ ニセコイ
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架神恭介(FANBOXやってます) @cagamiincage
「転校しても、私たちずっと友達だからね」「るりちゃんのこと、ずっと忘れないから」 扉の向こうから聞こえてくる友人たちの声――。私は涙を堪えて震えながらぎゅっと唇を噛み締めていた。#テンコウ
架神恭介(FANBOXやってます) @cagamiincage
「小野寺、手伝うよ」 集めたノートを職員室まで運ぼうとしていた私に、一条君が声を掛けてきてくれた。一条君は、やっぱり優しい……。こんなかすかな触れ合いでも私の心は高鳴ってしまう。私は一条君のことが、好き。これまでも何度も告白しそうになったくらいに……。#テンコウ
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職員室までの僅かな道のり。そんなちょっとした時間でも、私は一条君の隣にいるとドギマギして全然会話が続かない。何を話せばいいのか分からなくなって、それで私は、当たり障りのない無難な話題を――、共通の友達の話を切り出した。「最近、るりちゃんずっと学校お休みしてるね」と。#テンコウ
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へっ? というような顔をした後、一条君が微かに笑った。えっ、やだ、私、何か変なこと言ったかな……。一条君は抑揚のない声で言った。「小野寺、何言ってんだよ。宮本は転校しただろ?」 えっ!? #テンコウ
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るりちゃんが……転校……? 私がキョトンとした顔をしてると、一条君は「おいおい、忘れたのかよ」「俺たち一緒に駅まで見送りにいっただろ」「みんなで色紙も書いたじゃないか」そんなことを言ってくるけど、え、どうしてだろ、何も、思い出せない……。#テンコウ
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「一条君……。るりちゃん、いつ、転校したんだったっけ……」私は必死に作り笑いを浮かべて尋ねた。一条君はさも不思議そうな顔で「4日前だろ? どうした、小野寺。今日何かおかしいぞ」と答えてくれた。4日前……? 4日前にるりちゃんが転校?? #テンコウ
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職員室に着いた私は精一杯の平穏を装って一条君にお礼を述べて、逃げるように職員室に駆け込んだ。担任の先生にノートを渡しながら、それとなくるりちゃんの話を振ってみたら、「宮本がいなくなって寂しいと思うが小野寺もしっかりと……」ありきたりの返事が返ってくる。そんな……。#テンコウ
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私はるりちゃんの家に向かった。インターホンを鳴らすと、るりちゃんのお母さんが出てきて、以前と変わらない笑顔で私を迎えてくれた。「あの、おばさん……るりちゃんは?」 私が尋ねると、おばさんもきょとんとした顔を浮かべて、「小咲ちゃん。るりは転校したでしょ?」 #テンコウ
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「え、で、でも、私、全然覚えてなくて……」「るりは、転校したでしょ?」「4日前、私も見送ったんですか? 全然記憶にないんです!」「るりは、転校したでしょ?」 おばさんの声からどんどん抑揚がなくなっていく。石膏のような冷たい瞳が私を見つめる……。#テンコウ
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「し、失礼します!」 非礼を承知で、私はるりちゃんの家に勝手に上がり込み、二階の彼女の部屋へと向かった。おかしい……やっぱりおかしいよ……。転校したのに、どうしてるりちゃんのお母さんは残ってるの? 私はとめどない不安を胸に彼女の部屋の扉を開けた――! #テンコウ
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るりちゃんの部屋は、何の変哲もない、いつもどおりの彼女の部屋だった。でも、だからこそおかしかった。異常だった。どうして、いつもどおりなの……? パジャマは脱ぎっぱなしでベッドの上にあるし、机の上には食べかけのクッキー。ゴミ箱にも中身が入ったまま……。#テンコウ
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タンスの中には彼女のお気に入りの私服が全てキッチリと収められている。教科書類も一通り揃ってる。身辺整理の痕は一切見られなかった。この部屋には、あまりにも生活感がありすぎた。転校というよりは、のっぴきならぬ事情により、取るものもとりあえず急ぎ去ったような、そんな ……。#テンコウ
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何か手がかりが残されていないだろうか。私は彼女の部屋を探った。そうしているうちに、机の引き出しから一冊の黒い日記帳が見つかる。その1ページ目には殴り書きで、でも確かにるりちゃんの筆跡で、こう書かれていた。「このメモは、決して小咲に見せないで」。私は躊躇わず日記を開いた。#テンコウ
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<ここから先の記述は宮本るりの日記帳からの抜粋である。日記帳ではあるが実質的にはメモであり、これらの文章のほとんどは一度にまとめて書かれたようだ。日記が記述されたのは今から5日前、すなわち彼女の『転校』の前日のことである。>#テンコウ
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何から書けばいいのか分からない。こうしている今も指が震えている。私の身に何が迫っているのかも分からないが、私が目下巻き込まれているこの危機的状況は誰かに伝えなければならない。私は、とにかく、冷静になって、この事件の発端から、順を追って、客観的に、情報を記すべきだろう。#テンコウ
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ああ、それにしても、どうしてこんなことになったのか!? いや、事件の発端はハッキリしている。私が、千棘ちゃんの言葉にふとした疑問を抱いた、あの日のことがすべての始まりだったのだ。あの時、私は触れていはいけない扉を開けてしまったのかもしれない。#テンコウ
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何を言ってたんだっけ……そうだ、千棘ちゃんが、小咲とキムチがどうのこうのと訳の分からないことを言っていたんだ。初めはまるで話が見えなかったが、私は不意にピンと来て、すぐに小咲に確認に行った。私の想像通りだった。「キスしていい?」 小咲はついに一条君に告白したんだ! #テンコウ
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えらい! 小咲! よく頑張ったな!! 私は内心小躍りで喜んでいた。私のフォローがなくたって、この子はちゃんと一人でやれるじゃないか。まるで我が子を見るかのような誇らしい気持ちになったんだ。「それで!? それでどうだったの?」「うん、寝てたの……」「え?」「寝てたの」 #テンコウ
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寝てた……? 意味が分からない。「えっと、それって……」「うん、一条君、疲れてたみたいで。その時寝てたから、伝わらなかったみたいで……で、でも、私も本当に言ったのかどうかちょっと自信なくて……」 小咲は恥ずかしそうな、困ったような表情で俯いた。#テンコウ
架神恭介(FANBOXやってます) @cagamiincage
いや、だが小咲が口に出したことは間違いない。でなければ、千棘ちゃんがキムチと聞き間違えるはずはないからだ。小咲が告白したけど、一条君は寝ていて、千棘ちゃんはキムチと聞き間違えた……。なんだこれ? 私の親友が本人すら思いもよらぬ形で必死の告白を成し遂げた結果が、これ?? #テンコウ
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もっと詳しく話を聞いてみると、このような理不尽はこれが初めてではなかったと気付く。「以前も告白しそうになったけど、突然ボールが飛んできて……」「電話が鳴って……」「台風が逸れて……」。一体どういうことなんだろう……。偶然にしては、あまりにも異常すぎる。#テンコウ
架神恭介(FANBOXやってます) @cagamiincage
「あはは、私って間が悪いから……」 苦笑を浮かべる小咲に合わせて私も必死の作り笑いで応えたが、その時の心境はとても笑っていられるものではなかった。用事を思い出したと言って小咲から離れた私は、すぐに一つの実験に着手したのだが、ああ、それは……今でも思い出すだに恐ろしい! #テンコウ
架神恭介(FANBOXやってます) @cagamiincage
下駄箱での実験が三日目に至った時、緊張した面持ちで観察を続ける私の肩を不意に誰かが叩いた。「ひぃ」と小さな悲鳴と共に振り返った、そこに居たのはいつものニヤケヅラのあいつ――、舞子集だった。#テンコウ
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