こんな会話がありまして…
. @Poison_R @Butayama3 かるーい症状で、潜伏期間が日の単位で、同じ物を食べても全員がかかるとは限らない食中毒だと、未発見の病原体が山ほどありそうですね。
2013-01-20 14:49:11@apj @Butayama3 そうなると保健所の食中毒検査的には正直お手上げですね。医学部でも食中毒細菌や寄生虫分野の研究室は絶滅の危機に瀕しているので、国立感染研や都道府県の衛生研究所の役割はますます重要になっていると思います。
2013-01-20 14:52:43@Poison_R @apj えっ、絶滅の危機?もうあんまり勉強する人がいないということかしら。
2013-01-20 15:00:45会話のフルバージョンはこちら
これをうけて感染症研究の現状説明(ぼやきと言うか)…
食中毒に限らず、感染症の研究自体が結構危機に瀕してきたという経緯がありまして。その理由は何かというと、「成果が上がったから、予算が削られる」という皮肉な構図。
2013-01-21 06:39:00例えば寄生虫感染症。寄生虫はかつての日本で非常に大きな医学上の問題でした。比較的軽微で命には影響が少ないものが多いながら、線虫やギョウ虫、条虫などから、住血吸虫などの患者は多く、健康被害による損失は大きかった。なので、日本ではかつて寄生虫研究が隆盛し、世界の最先端でした。
2013-01-21 06:43:38偉大な先人が活躍した結果、日本では住血吸虫症がなくなるなど、世界でも例を見ないほど大きな成果が上がった。それで寄生虫症で苦しむ人は激減したのですが…それによって、寄生虫症は大きな社会問題でも魅力的な研究テーマでもなくなった。研究予算は削られ、残った研究課題も重箱の隅つつくものに。
2013-01-21 06:47:14感染症に限らず「疾患の研究」ってのは、こういう「成果を挙げると、将来のメシのタネがなくなる」という面がある。その典型例とも言える。
2013-01-21 06:48:37また感染症研究に関しては、日本だけでなく世界的にも危機的になった時代がある。それは1980年代頃。この頃、天然痘(痘瘡)がワクチン普及によって人間社会から駆逐されつつあり、最終的にはWHOの「天然痘撲滅宣言」が出された。
2013-01-21 06:51:24天然痘撲滅は、ヒトが一つの感染症を克服した、非常に大きな一歩で、社会的に、また専門家の間でも「感染症は、将来、克服可能である」という考え方が後押しされた。
2013-01-21 06:52:51例えば、もう退官したウチの先代の教授が、30年ほど前に微生物学を専攻しようとしたとき「いまどき感染症なんて研究してどうするの?将来はないだろ?」とか周りから言われたそうで。そんな風潮だったので、予算も削られる事態に。
2013-01-21 06:55:01あとまぁ、感染症研究はがんと違ってどうしても「小粒」になりやすいという面もある。感染症を深く掘り下げて研究するとき、病原体が違えば、まるっきり分野違いになりかねなかったりするので。「感染症研究」という分野が大きく見えても、その中でいろんな病原体に細分化される。
2013-01-21 06:58:06当然、社会問題になるような関心の高い病原体を研究する方が予算もつきやすいし、成果も高く評価されるので、みんなそっちに集中する。比較的マイナーな病原体をやるラボは1つか2つ、それでも国内にあれば御の字的な状態に。
2013-01-21 06:59:43