夜の社会心理学者さんの「放射能被害を不安に思っている人は、なぜ不安を増大させる情報を選択的に入手しようとするのか?」

・シリーズ第一作目  感情バイアス・認知的不協和のお話。
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ひだりん @hidarin911

夜の社会心理学者

ひだりん @hidarin911

これまで,何回も指摘してきましたが,被災地とひとくくりにされても,被災の仕方や影響は,地域や個人によって大きく違っていますし,今何を求めるかについても,抽象的レベルでは同じかもしれませんが,具体的な方法レベルでは大きく異なっている可能性が高くあります。ひとりひとり違うのですよね。

2012-12-17 16:11:43
ひだりん @hidarin911

声を大きくして自分の要求を訴えることができる人もいるようですが,毎日をせいいいっぱいに,黙々と過ごしている人も多い訳ですから,ひとりひとりのこの違いを,どのくらい汲み取っていけるかが大切な問題になってくる訳です。社会心理学でいうところの,リーダーシップの「配慮行動」です。

2012-12-17 16:19:10

ひだりん @hidarin911

1950年代に、フェスティンガー、ハイダー、ニューカムといった社会心理学者たちが認知的均衡理論と総称される理論を次々に提唱しました。これらの理論の基本的な仮定は「人は一貫し矛盾のないように自分や外界をとらえようとする」というものです。認知が相互に均衡することを仮定しています。

2013-01-22 12:49:20
ひだりん @hidarin911

たとえば、「いま、天気は晴れている」という認知と、「いま、自分は雨に濡れている」という認知は、相互に矛盾してしまいます。このような認知的な不均衡状態は、人にとって、とても不愉快だったり、緊張したりするので、この緊張状態を解消しようとする行動が生起することを仮定しているのです。

2013-01-22 12:51:38
ひだりん @hidarin911

どちらか一方の要素の認知を変更したり(よくみたら、雨雲があるよね)、第三の新しい認知を加えたり(キツネに化かされたキツネ雨だ)といったことで、認知的な均衡状態が回復します。

2013-01-22 12:54:19
ひだりん @hidarin911

「低線量被ばくでも重篤な健康被害をもたらす」と信じている人たちにとって、事故から2年を迎えようとしているのに「現在のところ重篤な健康被害はもたらされていないばかりか、軽微な健康被害もない」という現状認識は、認知的不均衡な状態にあることになります。自分の信念と現状が一貫していない。

2013-01-22 13:06:24
ひだりん @hidarin911

そこで、「政府は情報を隠蔽している」とか「ほんとうは健康被害がもたらされているのにマスコミが公表しない」とか、「2年では健康被害はまだ発生しないが、5年後や10年後に発生するだろう」とか解釈して、自分の信念と一貫するようなかたちで、認知を均衡化していくことになります。

2013-01-22 13:08:54
ひだりん @hidarin911

デマばっかり流す沖縄移住のおばさんやウソつきの元ジャーナリストの言うことを信じてしまったり、煽ってばかりの東○新聞の記事ばかりを選択的に信じようとしてしまうのも、この認知的均衡を図ろうとするメカニズムによるものと考えられます。だから、どんなに説得しようとしても、難しいのですよね。

2013-01-22 13:53:31
ひだりん @hidarin911

だから、「放射能被害を不安に思っている人のほうが、わざわざ不安を増大させるような情報を選択的に入手しようとする」という一見するとパラドクシカルな行動をとることが多くなるのです。あえて不安を増大させるような情報に接すると、「やっぱり自分の信念は正しかった」と思えるようになるのです

2013-01-22 14:06:55
ひだりん @hidarin911

もちろん認知的均衡を達成しようとする働きは「現在の低線量被ばくは健康被害をもたらす可能性は低い」と信じている人たちにも起こります。「健康被害はない」という認知と「重篤な健康被害がもたらされれている」という認知とは明らかに相互に一貫しないので、どちらかを変更する必要がありますよね。

2013-01-22 14:13:05
ひだりん @hidarin911

ぼくがこれまで懸念してきたのは、これらの異なる信念を持つ人たちのあいだで、相互の共通理解やコミュニケーションが困難になったり、感情的な対立や対人葛藤が生起してしまうことでした。そして、さらに残念なことは、ぼくの力では、この問題の解決方法がみつからないことでした。

2013-01-22 14:19:52
ひだりん @hidarin911

でも、あきらめてはいないのです。なぜなら、低線量被ばくを極度に恐れていた人のなかにも、過剰な心配をすることがなくなったという方がたくさんいらっしゃるからです。これらの方のツイートやブログには、信念が変容した契機のようなことが書かれていることが多いのです。多くのヒントが得られます。

2013-01-22 14:32:03
ひだりん @hidarin911

そのヒントです。まず、とても大切なことは、身近に見放したりしない親密な関係が存在していることです。配偶者、家族、友人の存在が大きいのです。信念が違うからといって、社会的に孤立してしまうのはとても危険ですよね。身近な人たちと暖かい関係が築けていることは、とても大切なことなのです。

2013-01-22 16:47:47
ひだりん @hidarin911

情報が矛盾していることに自発的に気づくことがあります。「あれ、この人、この前はこう言っていたけど、今はこう言っているなぁ。いったいどちらが正しいの?」と報の矛盾に気づくことが新しい気づきの契機となる場合があるようです。教えられるのではなくご本人が自発的に気づくことが必要みたい。

2013-01-22 16:53:14
ひだりん @hidarin911

実測してみたり、自分で体験することも、ひとつの契機となるようです。自分で計ったり、確かめてみる。ちょっと前「新幹線で福島駅に近づいた途端、みんなのガイガーカウンターが警告音を発した」とデマを振りまいた人がいましたが、ぼくは何回も新幹線を利用していますが、そんなことは一度もない。

2013-01-22 16:58:35
ひだりん @hidarin911

「なんだか、おかしいぞ」とか「自分の実感や体験とちがうなぁ」といったちょっとした違和感のような小さな感覚が、確固としていた信念の変化といった大きな変化を引き起こすことになるようです。「小さな変化は、やがて大きな変化をもたらす」のですよね。

2013-01-22 17:21:04
ひだりん @hidarin911

当時の社会心理学のビッグネームたちがこぞって認知的均衡理論を提唱したものですから、多くの研究者がその理論を検証しようと試みました。そして、じっさい多くの状況や場面で、認知的均衡理論の予測に一致する実験結果が得られたのです。ここでもみられる、こっちでもみられる。ブームとなりました。

2013-01-22 21:51:44
ひだりん @hidarin911

ただ、人は複雑ですから、認知的な均衡を求めるだけでなく、あえて不均衡を求める場合もあるという側面もあるはずです。ただ、残念ながら、この不均衡を志向する側面について、多くの社会心理学者たちは重きを置かないことになってしまいました。認知的均衡理論に一致しないからです。

2013-01-22 21:55:47
ひだりん @hidarin911

この認知の均衡と不均衡について理論的に取り組んだのは、発達心理学者のピアジェです。彼は自分の認知的な枠組みに合致するように外界を理解しようとする側面と、外界にあわせて自分の認知的な枠組みを変容させる側面の双方が働くことを見いだし、それぞれの働きを「同化」と「調節」と名付けました。

2013-01-22 22:00:52
ひだりん @hidarin911

社会心理学者たちは、ピアジェのいう「同化」の側面ばかりに注目してしまい「調節」の働きの解明をおそろかにしてしまっていたのかもしれません。でも、今、求められるのは「調節」が起こるメカニズムやその条件を解明することですよね。発達心理学者のみなさんから、アドバイスをいただけるといいな。

2013-01-22 22:05:42
  • 夜の社会心理学者さんの続き…
ひだりん @hidarin911

記念すべき(?)1,000ツィート目です。社会心理学は、その学問の特徴から、戦争に利用されることが多くありました。戦争に勝利するために、兵士たちの志気を高めたり(集団志気)、攻撃精度を高めたり(集団パフォーマンス)するための方法やテクニックなどが研究され、応用されてきたのです。

2013-01-24 11:48:55