【三題噺 #六人夜話 】カレンダー、運が悪い、紅茶
@triarbor @Lailaren @ki7_2n @toha_too お、でしたら遠慮なく一題出させてもらいましょうか 「紅茶」
2013-01-23 00:15:10@ki7_2n @triarbor @sechs_huxi @toha_too @mkm_ じゃあ、私からは「青空」で。
2013-01-23 00:17:23@Lailaren @ki7_2n @triarbor @sechs_huxi @toha_too では、わたしからは「骨」
2013-01-23 00:19:52@toha_too @ki7_2n @triarbor @Sechs_Huxi @mkm_ 6つ揃ったら前から順に>「カレンダー、運が悪い、紅茶」、「青空、骨、めがね」ですね。
2013-01-23 00:22:25@triarbor @lailaren @mkm_ @sechs_huxi @toha_too じゃぁ今日は、カレンダー、運が悪い、紅茶 ですね!!
2013-01-23 00:22:56@Lailaren @toha_too @ki7_2n @Sechs_Huxi @mkm_ どのくらいで考え付くかわからないので、2:00過ぎそうなら明日に回しましょうか。後で読みやすいようタグでもつけましょう #六人夜話 とか。
2013-01-23 00:26:40【三題噺 1/3】俺はひどく運が悪い。薄暗いバーカウンターの隅で、すっかり冷めきったブランデーを啜りながら男がつぶやく。店の主は聞いているのかいないのか、黙ってグラスを磨いている。俺の人生はまるで紅茶だ、今度こそ…と新しい湯を注げば注ぐほど味も香りも薄まってゆく。 #六人夜話
2013-01-23 01:09:01【三題噺 2/3】今じゃすっかり出がらしだ…男が溜息をつくたび、茶色い染みのような影が揺れる。マスターおかわりを、と男がカウンターにグラスを置く。注ぎ足されたのは透明の液体、立ち上る湯気に男が眉をひそめる。今夜はそろそろ店じまいだ、と店主が囁く。 #六人夜話
2013-01-23 01:09:40【三題噺 3/3】そうして、男の首根っこをつまみ、ひょいと身体を持ち上げた。ああ、ああ、俺は運が悪い。美しい令嬢に見初められた兄弟もいたというのに。男の嘆きは店主の耳には届かない。店主はティーバッグを古い日めくりカレンダーで包み、流しの三角コーナーに棄てた。 #六人夜話
2013-01-23 01:11:22今日の俺は、どうもついてない。会社で失敗連発して後始末の残業確定だ。 ほんとなら、今夜はちょっと美味しいディナーを食べに行きたかったのになぁ。出来れば気になるあの娘も誘って…なんて思っていたのに。 #六人夜話
2013-01-23 01:39:03カレンダーを眺めながら、次のチャンスはいつ頃かな、と考える。楽しいディナーを想像してると、ちょっとにやけていたらしい。 「先輩、何ニヤニヤしてるんですか」と後輩の女子に突っ込まれてしまった。 #六人夜話
2013-01-23 01:39:12この子は、何かというと俺に絡んでくる。どうも俺のことをいじられキャラだと思っているらしい。正直面倒なんだけどなぁ。でも悪い子じゃないんだよな。 なんて思ってたら、まるで心を読んだみたいなタイミングでカップを手渡された。 #六人夜話
2013-01-23 01:39:23ほのかな湯気。暖かな紅茶のまろみのある味と香りを口に含んで流しこむ。この子の淹れるお茶は美味しい。普通のティーバッグのはずなんだけど、どうやったらこれだけ美味しく淹れられるんだろう。 #六人夜話
2013-01-23 01:39:33その時の俺は、まだ気がついてなかった。彼女が美味しい紅茶を淹れるために、カップをしっかり保温してたこと。俺が残業するときは必ず紅茶を淹れてくれてたこと。 そして何かしら仕事が出来たといって、一緒に残業してたこと。 #六人夜話
2013-01-23 01:39:44彼女の気持ちに気がついたのは、彼女が会社を辞める時だった。 お父さんが倒れて実家に戻るのだ、と俺に伝えたとき、最後に声をつまらせて小さく、先輩、さよなら、とつぶやくと、彼女は後ろを向いて足早に立ち去っていった。 #六人夜話
2013-01-23 01:39:59おいおい…いま彼女、泣いてなかったか? その時やっと俺は気がついたのだ。あの子、俺のこと好きだったのか…? #六人夜話
2013-01-23 01:40:09俺は本当に運が悪い男だ。蜃気楼みたいな女を追いかけてる間に、気のいい娘が慕ってくれていたのに気が付かなかった。いや、運が悪いんじゃないな。気が付かない俺が悪いんだ。そこにいて当然になってしまって幸せが側にあることに気が付かなかった。 #六人夜話
2013-01-23 01:40:20俺は彼女の去ってゆく背中を見送ると、しばらく考えた。 そして手帳を取り出してカレンダーにしるしをつけた。 この日、君に会いに行こう。もう遅いかもしれないけど。できることなら、君の淹れる紅茶がまた飲みたいから。 #六人夜話
2013-01-23 01:40:42①「30日にな」唐突に男が口を開いた。この小奇麗な喫茶店に似つかわしくない中年の男だ。躊躇うように、冷めた紅茶に口をつけ、「参観日があるんだ。」と告げた。「それで?」店主は、可笑しそうに微笑みながら答えた。「それでな、その日の仕事が抜けられそうにないんだ。」#六人夜話
2013-01-23 01:47:58②申し訳なさそうな顔で、店主の表情を窺っている。「だから?」もう、笑みを隠そうともしない。「悪いんだが…行ってやってくれないか?」もう5本目になる煙草に火をつけながら、歯切れ悪そうに男は口にした。 #六人夜話
2013-01-23 01:48:08