体罰が根付いた経緯

戦後、軍国主義を否定したはずの教育界で、なぜ軍国主義を起源とする体罰が根付いたのか。それには「敗戦」が子供社会に与えた衝撃を考える必要がある。
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shinshinohara @ShinShinohara

体罰の歴史が浅いことは述べたが、ではなぜ体罰は根付いたのか。それには「敗戦」という、日本人の精神に大きな衝撃を与えた出来事を考えなければならない。子供の世界は、戦前と戦後で大きく様変わりした。その変化の狭間で、体罰が根付いた。その経過を追ってみたい。

2013-01-23 19:31:32
shinshinohara @ShinShinohara

戦前に学校現場で体罰が行われていた形跡はほとんどないが、それは戦前の子供たちの行儀が大変よく、大人の言うことをよく聞いたこと、そして大人の側も子供に対して寛容だったことがある。体罰をふるわなくても子供たちはまじめに勉強し、きちんとしつけられたのだ。

2013-01-23 19:33:50
shinshinohara @ShinShinohara

@SkiMario aあ、本当ですね。二つ目のつぶやきで「戦前」って書いてしまいましたね。すみません。ここでは「軍国主義台頭前」とすべきでした。修正します。ありがとうございました。

2013-01-25 08:16:57
shinshinohara @ShinShinohara

ところが敗戦したことで、子供社会に大きな衝撃が走った。これまで「お国のために」という正義が間違いだと教えられ、「国のために闘って死ね」といって戦地に生徒を送り込んでいた教師が「戦争は間違いでした」と弁解した。子供たちは何を信じて良いのか分からなくなってしまった。

2013-01-23 19:36:23
shinshinohara @ShinShinohara

「誰の言うことを信じればよいのか分からない」子供たちは、さらに放任されてしまった。戦争の焼け野原で大人たちは生きることに必死で、子供たちの相手をする余裕を失った。戦争孤児も多く、子供社会は劇的に変わった。よく、敗戦時に子供だった世代は思想的混乱があるとされるのはこのためだ。

2013-01-23 19:40:00
shinshinohara @ShinShinohara

子供社会が敗戦を機に荒れてしまったことは、戦後の家庭裁判所が子供の問題に力を注いでいた歴史からも伺える。戦争孤児や、孤児ではなくてもすっかり生活が荒れた家庭で育った子供が多く、非行に走るケースが戦後に激増し、家庭裁判所は彼らをどう更生させるかに力を注いだ。

2013-01-23 19:43:01
shinshinohara @ShinShinohara

教師の側も戦争で受けた傷跡は深かった。戦中の軍国主義教育に慣れ親しんでしまった教師は、軍国主義以前のやり方を知るはずもなく、戦後に「民主主義」といわれてもどう指導すべきかも分からず、途方に暮れた。教育の軸が軍国主義で硬直化させられ、さらに敗戦でポッキリ折れた格好だ。軸が失われた。

2013-01-23 19:46:07
shinshinohara @ShinShinohara

やがて校内暴力が日本中に吹き荒れた。このとき、校内秩序を維持する手段としてとられたのが、体罰だ。体育教師が憎まれ役を買って出て、体罰と規則で厳しく子供たちを縛り、秩序を取り戻した。これにより、体罰の有効性が証明された格好となり、日本で体罰の必要性が認められるようになっていった。

2013-01-23 19:49:20
shinshinohara @ShinShinohara

そもそも、校内暴力が発生したのも、遠因は敗戦ショックだといえる。戦前は子供たちは行儀が良く、大人たちの言うことをよく聞いた。大人のことを信じていたのだ。ところが学校で軍国主義がたたき込まれるようになり、それを信じたあげくに敗戦で「嘘でした」。子供たちは大人を信じられなくなった。

2013-01-23 19:51:36
shinshinohara @ShinShinohara

尾崎豊「卒業」の「信じられぬ大人との争いの中で」というフレーズ。戦前には考えられなかったことだろう。大人は信頼し尊敬すべき存在であり、実際その価値があった。ところが模範であるべき大人が戦争に負けた途端、「正義」をひっくり返した。戦後、子供たちは大人を信じられない状況が続いた。

2013-01-23 19:54:46
shinshinohara @ShinShinohara

しかし大人たちの側も、子供たちの信頼を回復するヒマがなかった。敗戦後の焼け野原を何とか再建すること、戦後の復興を成し遂げること、それに必死で、子供にかまっているヒマがなかった。「企業戦士」の大人が子供社会から離れてしまい、信頼も失ったままのところに、校内暴力が広がったと言える。

2013-01-23 19:57:11
shinshinohara @ShinShinohara

江戸時代や明治、大正の頃の子供たちなら、まず校内暴力などということはあり得ない。体罰で校内秩序を守るような必要もない。子供は大人を信頼し、大人も十分子供に向き合う時間をもてた。敗戦をきっかけに、「信頼」が崩壊したことが、校内暴力につながったと言える。

2013-01-23 19:59:46
shinshinohara @ShinShinohara

ではなぜ、校内暴力に対して校内秩序を守るために、「体罰」という手段をとったのか。それはやはり、軍隊の経験が大きかっただろう。戦前は成人男子全員に兵役があり、軍隊を経験していた。その中で「精神注入棒」で死ぬほど殴られる経験もした。強烈なロールモデルになってしまったのだろう。

2013-01-23 20:02:19
shinshinohara @ShinShinohara

戦後、体罰が根付いてしまったのは、①軍隊での経験がロールモデルになったこと、②敗戦による思想的混乱、③子育て環境の崩壊、この3つが原因だろう。校内暴力で失った秩序を取り戻すのに、体罰という手段しか思い浮かばなかったのは、軍隊にしかロールモデルを求められなかったためだろう。

2013-01-23 20:04:22
shinshinohara @ShinShinohara

そして、敗戦により、子供たちは大人を信じられなくなり、大人も「民主主義の時代」に子供たちに何を伝えればよいのか、混乱した。思想的混乱が大人と子供の信頼関係を損ねたことが大きい。これも、軍国主義という、戦争に勝っているときにしか成り立たない「正義」を信じ込みすぎた結果だろう。

2013-01-23 20:06:14
shinshinohara @ShinShinohara

そして、戦争で焼け野原になったことで、子育て環境が大きく損なわれた。大人は生活するだけで必死、戦争孤児も多く、盗みをはたらく子供も多く、生活苦で愛情を受けられない子供も増えた。戦争、そして敗戦は、江戸時代から大正まで続く「子育てシステム」を破壊してしまった。

2013-01-23 20:08:20
shinshinohara @ShinShinohara

「体罰」は敗戦の混乱に秩序をもたらす強制的手段として、校内暴力の時代に根付き、「一定の教育効果」があると認識されてしまう結果に至ったのだろう。しかし本来、大人が尊敬すべき存在として生き、子供たちが大人を信頼するという、大正以前にあった環境を取り戻せば、体罰は不要なのだ。

2013-01-23 20:10:12
shinshinohara @ShinShinohara

敗戦は軍国主義を否定しようとするあまり、日本で磨かれに磨かれてきた伝統的システムも一緒に抹殺する結果となった。軍国主義は一時期の熱狂であるから、これに対し冷静になるのは必要だが、伝統的システムを破壊するのは行き過ぎだった。もはや私たちは、伝統的システムを思い出すことすら難しい。

2013-01-23 20:12:29
shinshinohara @ShinShinohara

体罰をなくすには、大正以前の子育て環境をどうにか思い起こし、再構築する必要がある。①大人が尊敬し信頼するに足る存在になること。②子供が大人を信頼し、十分に大人から学次官を確保すること。③軍隊という特殊例をロールモデルにするのではなく、大正以前のやり方を見直すこと。

2013-01-23 20:15:37
shinshinohara @ShinShinohara

体罰が根付いた歴史、そして体罰が不要だった時代の歴史を見つめ直し、私たちは教育のあり方をもう一度再考する必要があるだろう。

2013-01-23 20:16:42