時が経つのって、本当に早いですね…。気づいたら、このフェア・ユースのワーキングチームの報告書がでて、10日も経ってしまいました。 http://bit.ly/8ep56C
2010-01-31 00:38:03まず、内容にはいる前に、メンバーなのですが。全10名のうち、学者が6名(小泉先生はTMIにもいらっしゃいますが。)、裁判官1名、法務省局付2名、弁護士1名です。
2010-01-31 00:40:38いつも思うことなのですが、このメンバー構成で、まず半分、流れが決まっているような気がします。冷静に現状や課題を分析しようということで、学者の先生方を中心にしたのには、それなりに理由もアルトは思いますが、
2010-01-31 00:41:22それにしても、弁護士の人が1人しかいなくて、かつ、どちらかというと権利保護に厚い傾向の強い山本隆司先生のみ、というのは、バランスとしてどうなんでしょうか。せめて、インターネット上の新しいビジネスや利用に詳しい弁護士をもう一人位入れるべきだったような気がします。
2010-01-31 00:47:04北大の田村善之先生は、よく、「立法形成過程の歪み」ということをおっしゃいます。つまり、立法過程で反映される意見が、広く国民の意見をきちんと反映できているのか、という問題意識です。
2010-01-31 00:50:23そういう意味では、どんなに「空中戦を回避して冷静な分析を」といっても、できるだけ多くの意見が反映されるようなメンバー構成にすることは重要なんじゃないかなぁと、いつも思っている私です。
2010-01-31 00:51:52ともあれ、中身に入っていきましょう。第1章の「一般規定導入の必要性」については、「立法的な対応が必要であると判断するためには、権利制限の一般規定がないことにより、実際に社会的な混乱が生じている等の立法事実」について検討が必要だ、とあります。
2010-01-31 00:53:37要するに、フェア・ユースのような一般規定がないことで、何が困っているのかという具体例が沢山ないとダメですね、ということを言っている訳です。
2010-01-31 00:55:44どんなに、経済学や法律学(表現の自由や研究開発の自由など)などから考えれば、あった方がいいに決まっている、というような「合理的」な説明をしても、日本の立法過程ではあまり相手にされない、ということにも聞こえます。
2010-01-31 00:58:00むしろ、「こんな人がこんなふうに困っている」(しかも、それなりにロビイングの力がある人達が困っている)というような事実があった方が、立法が簡単に進むということなのですね。フェア・ユースの導入を実現したい!という人たちは、具体的にどんな場面で困っていて、どんな弊害があるのか、
2010-01-31 00:58:55その事実を積み上げることがとっても大事だということです。どこかに、そんなウィキか掲示板のページでも作って、広くみんなから意見を集めてみてもいいかもしれませんね。
2010-01-31 00:59:50さて、「仮に問題が生じているとした場合」に、「今の制度ではダメなのか?」を検討した第1章第2節。この、私もよく参考にさせていただいているブログでもコメントされていましたが、 http://bit.ly/c0iyLz
2010-01-31 01:02:12「既存の個別権利制限規定を拡大解釈している例がある」から「妥当な解決が図られている」と紹介されているのが、非常に驚きでした。これは、普通は、一般制限規定がないことの問題点として紹介されている判例ではないのかなぁ。
2010-01-31 01:04:45つまり、「これが侵害になるのは、あんまりだろう」と思う事例なのだけれども、既存の権利制限規定を当てはめると、なんとなく侵害であるという結論になる気がする。しかし、それでは問題なので、権利制限規定の要件をゆるく解釈したり、権利濫用であると判断したりして、救済してあげる。
2010-01-31 01:06:02これは、本来、あまり健全なことではないから、そのような事例を正面から合法にできるようにするために、立法しましょう、というのが、今回のフェア・ユース立法論の話ではなかったのだろうか。
2010-01-31 01:08:26また、「黙示的許諾」(つまり、明確にはOKしていないけど、文脈を考えれば利用をOKしていたと考えるべきでしょ、という理論)があるから解決出来ている、なんていうけれども、権利者が明らかに拒否しているような場合には、そもそも使えないわけで、
2010-01-31 01:10:19そういうふうに権利者が許諾を拒否している場合にも、利用を認めるべき場合があるのではないか、というのが今回の一般制限規定なのではなかったのでしょうか。
2010-01-31 01:11:46ついでに、「例外規定を類推解釈して侵害を否定した判決はないが、そもそも裁判で主張されている事例がないからであって、厳格に解釈しているという証拠ではない」とも記載していますが、これも、実務で裁判をしている立場としては、ちょっと驚きのコメント。
2010-01-31 01:13:36原則は複製などをしたら権利侵害で、これを免除する例外規定は厳格に解釈すべきだ、というのは、加戸氏の「著作権法逐条講義」などでも書いてあった記憶があるし、そもそも、法律家は、安易に「類推解釈」「拡大解釈」を主張すべきでない(そういう主張は筋が悪い)というのが普通の感覚では?
2010-01-31 01:16:03それとも、文化庁は、類推解釈などを、弁護士がもっと法定でバンバン主張してもいい、ということなのかなぁ。しかし、弁護士としては、「この規定を真面目に読むと、例外規定に入らないけど、ここが似ているから、拡大解釈できるでしょう」とか「類推解釈できるでしょう」なんていうアドバイスは
2010-01-31 01:18:48怖くてとてもじゃないけどできない。(裁判になったら、仕方ないから、一生懸命主張するかもしれないけど。)
2010-01-31 01:22:24だから、結局のところ、裁判でみんながどんどん「拡大解釈」「類推解釈」を主張して判例を築き、広く認められる状況にならない限り、ビジネスアドバイスなどでは、「拡大解釈」「類推解釈」なんて全く役に立たないってことを、この報告書は全くわかってないと思います。
2010-01-31 01:23:33その次に、さらに興味深いコメントとして、立法と裁判ではどちらが早いかというと、立法は平均で30ヶ月、裁判は平均で55ヶ月だから、「特段両者で目立った差は認められない」と言っていますが、この前提となっている数字がちょっと恣意的な気がします。
2010-01-31 01:27:29