ICRP・LNT仮説に対するそれぞれの熱い思い…

・東京電力福島第一原発事故後、現状の居住地における低線量放射線被ばくでは、「健康影響はあるかもしれないけと、チョ~小さすぎて、よく分からない」と意見は一致しているはずなんですけど、「健康影響がある」、あるいは「いやない」、と何故、白黒つけたがり揉めているのでしょうか?(・_・?) ・瞬間100mSv、あるいは短期間の累積100mSv以下で健康影響があると国際的にコンセンサスが得られた時は、私までお知らせ下さいw (現状の数mSv以下の放射線被ばく状況では騒ぐことではないし、揉めることではないと思う次第です。) ・ちなみに、現在の汚染状況やチェルノブイリ原発事故との比較は下記をご確認ください。 続きを読む
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■しきい値無し直線仮説(Linear Non-Threshold : LNT仮説)とは?

 放射線の被ばく線量と影響の間には、しきい値がなく直線的な関係が成り立つという考え方を「しきい値無し直線仮説」と呼びます。(放射線安全研究センターより)

確定的影響と確率的影響

  • 放射線の人体への影響は、「確定的影響」と「確率的影響」の2つに分けけることができます。
  • このうち、確定的影響には主に高線量被ばく時に見られる障害で、脱毛を含む皮膚の障害や、骨髄障害あるいは白内障などが含まれ、それ以下では障害が起こらない線量、すなわちしきい値のあることが知られています。
  • 一方、発がんを中心とする確率的影響ついては、1個の細胞に生じたDNAの傷が原因となってがんが起こりうるという非常に単純化された考えに基づいて、影響の発生確率は被ばく線量に比例するとされています。しかし、実際には、広島・長崎の原爆被爆者を対象とした膨大なデータをもってしても、100ミリシーベルト程度よりも低い線量では発がんリスクの有意な上昇は認められていません。これよりも低い線量域では、発がんリスクを疫学的に示すことができないということです。

    なぜ「仮説」なのか?

  • このように確たる情報に乏しい低線量の範囲について、放射線防護の立場からリスクを推定するために導入されたのがLNT仮説です。低線量放射線の影響についてはよくわからないが、影響があると考えておいた方が安全側だという考え方に基づいたもので、科学的に解明されたものではないことから「仮説」と呼ばれています。

    LNT仮説の問題点

  • 各種の線量限度等を勧告している国際放射線防護委員会(ICRP)でも、「この仮説は放射線管理の目的のためにのみ用いるべきであり、すでに起こったわずかな線量の被曝についてのリスクを評価するために用いるのは適切ではない」としています。
  • それにもかかわらず、微量の被ばくに対してLNT仮説を用いてリスクが評価される場合が後を絶たず(*1)、このような情報を受け取った一般の方々に誤解を与え、放射線に対する恐怖感、不安感を助長する結果になっています。

    低線量放射線研究からわかってきたこと

  • これまでの当センターを含めた多くの低線量放射線研究から、LNT仮説では説明できない事例が数多く見つかっています(*2)。また、当センターを含めた国内外の研究成果をとりまとめた「線量・線量率マップ」(*3)からは、放射線は一度に被ばくした場合と、少量ずつ時間をかけて被ばくした場合とでは影響が異なることも明らかになっています。このことは、放射線作業従事者が少量の放射線を何度も被ばくするような場合には、LNT仮説から予想されるよりも実際のリスクはずっと小さくなることを示唆しています。

  *1 低線量放射線の発がんリスクに関連する報道について
  *2 当センターの研究成果
  *3 電中研ニュース401号「解明すすむ微量放射線の影響」

発端はこの過去のまとめから…

まとめ ICRPのLNTモデルは安全側に立った仮説というのは誤解/曲解/歪曲のいずれかである。 最初反語表現でタイトルを考えたのですが… 念の為、付け加えますと、ICRPのLNTが科学的に正しいという主張をしているわけではありません。ICRPの文章を読んでおいて、それを専門家が「安全側に立った」仮説であると説明・解釈するのはおかしいと言いたいのです。 で、後段の重要な点というのもLNTモデルが正しいのであれば、という話です。 #リスクの分かち合いについて2つツイートを足しました。 #さらに駆け足でICRP Publication 99も眺めたので、それに関しても付け加えました。 宣伝ついでに、よろしければ、こどもたちを放射能から守る科学者ネットワークのFacebookページもご覧ください(アカウント不要です)。 https://www.facebook.com/ScientistsForCh.. 16245 pv 260 17 users 16

地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

久しぶりに読み返したが、やはり @M_shirabe さんのこの論考は優れたものだと思う。→ ICRPのLNTモデルは安全側に立った仮説というのは誤解/曲解/歪曲のいずれかである。 http://t.co/YgQy6Sqm

2013-01-23 23:30:33
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

生物学的な実験と一緒くたに言っても、in vivoとin vitroでは全然いえることが違う、ということは知られていないのかな。例えば、ある酵素の反応速度パラメータを決める場合、ある人工的な条件下(つまり予備検討の結果、パラメータを取りやすい条件)でデータを取るわけ。(続く)

2013-01-23 23:34:25
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

(承前)でも、それはあくまでin vitroの結果で、in vivoでは阻害物質やら塩濃度の違いとか、他のタンパクの相互作用とか、いろんなパラメータが介在していて、その中でどのように働いているかについては多くの場合正確には測れない。

2013-01-23 23:37:00
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、当然そのほかのものでもそうで、in vitroの結果が定量的であっても、in vivoに対しては定性的なことは言えても、その数値を外挿することは基本的には無理筋。ましてや、測定装置の精度やデータのバラつきなどを考えれば、まあ無理。

2013-01-23 23:40:59
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、例えば今度は動物実験でin vivoのデータを取ってヒトに外挿しよう、というときも同じような問題は発生する。そもそも同じ動物だって実験に使うものは遺伝的に均一化されたもので、同じ種全体にその数値が適用可能であることすら保証できないわけで、種も違うし、様々なヴァリアント(続く)

2013-01-23 23:43:28
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

(承前)があるヒト全体への外挿だって、必然的にかなりの部分定性的なものにならざるを得ない、ということは常識の範疇だと思う。なので、生物学的な知見でLNT仮説構築に対して得られる情報は、「閾値があるかどうか」「線形関係がある範囲で見られるか」「線量率効果はあるのか」くらいでしょう。

2013-01-23 23:46:50
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

基本的にはそういった情報を尊重した上で、仮説構築のためのメインデータである疫学データにアプローチをすることになるわけだけど、まず一部で囁かれている「日本は疫学偏重」というのは全くの事実誤認で、LSS研究は確かに世界的にも非常に優れた疫学研究であるけど、そのあとに続くもの(続く)

2013-01-23 23:49:39
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

(承前)は、今のところあまりぱっとしないものばかり。少なくとも欧米に対しては相当のビハインドを負ってしまったというのが事実。で、疫学データは人に対するリスク評価のゴールドスタンダードである、ということは世界的な共通認識。ただ、疫学にもいろいろ問題はある。

2013-01-23 23:51:52
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

例えば、定性的な雑多な情報をどれくらい定量的な情報に変えられるか、とかどこまで背景因子とか環境因子とかをデータを簡便にかつ必要十分にとることができるか、とか。あわせて統計的パワーを上げるためにサンプルサイズを大きくすると、データの個人レベルでの質は落ちてしまう、といった(続く)

2013-01-23 23:54:41
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

(承前)トレードオフが生じてしまうというのもまた事実。あるいは、コホート集団というのは案外ヘンテコなバイアスが入りやすい(健康バイアスなど)。そうはいっても、データを取らなければ話ははじまらない。逆に、疫学データも「その程度のもの」というくらいで見る目が必要。

2013-01-23 23:56:39
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

最近はゲノムコホートなんかもやり始めたので、生物学的メカニズムとの関連性は以前よりはつけやすくなったとはいえ、その研究成果が得られるまでにはまだ大分時間がかかる。LNT仮説構築に用いられている疫学データは、まあそんなものだし、チェルノブイリにしてもそう。

2013-01-23 23:59:48
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

なので、「生物学的事実」を以てDDREF=2などを正当化することはそもそもできない。単に今ある疫学データで最も「そんなもんじゃね?」といえそうな値を適当に(デタラメにではないけど)設定しているくらいだし、リスクモデルだって同じで、要するにパラメータは単にテクニカルなもの。

2013-01-24 00:02:40
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

ただ、それを否定するような「強いデータ」がないわけで、それならば現状と明らかに反事実的でないくらいにはそこそこ整合的な今の仮説で行こう、ということで、少なくともパラメータの値なんかは今後も結構変わるんではないかと思われ。

2013-01-24 00:07:19
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

ただ、うまいというかずるいというか、新しいデータが入ったのでモデルを更新しました、という形でやんわりと数値とかを入れ替えることができたりする、という面もあるわけで、そういう意味でもLNT「仮説」って否定しにくいようにできているようにも見えますぬ。

2013-01-24 00:09:05

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