丸山天寿先生の「私はこれらの本を読んで読書の世界にハマった」

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丸山天寿 @tenjumaruyama

さて日曜日のお遊び。最近は漫画やテレビのネタしかやっていないので、久しぶりに本の話(そもそも私は古本屋である)。一年の最初だから、私の最も好きな分野である伝奇小説を紹介。お題は「私はこれらの本を読んで読書の世界にハマった」。全ての異論、叱責、追加を認めます。文中敬称略→

2013-01-27 07:44:19
丸山天寿 @tenjumaruyama

「竹取物語」-作者不詳。俗にいう「かぐや姫」。日本最古の伝奇小説と思われる。物語の導入は民俗潭、ヒロインの魅力は少女小説の基礎、物語の展開は起承転結を踏み、当時の為政者の生活様式や価値観を含み、SFとも解釈出来る意外な結末。どれをとっても一級品の物語。伝奇小説の源流である→

2013-01-27 07:46:00
丸山天寿 @tenjumaruyama

「玉藻の前」-岡本綺堂。中世、九尾の狐の化身となる娘と幼馴染みの成 年との恋を幻想的に描く。「半七捕物帳」の作者だが、この作品の方を愛していたらしい。安倍清明のファンの方は是非読もう。西洋の某奇談小説を巧みに取り入れている点も注目。狐の存在は日本でも中国でも伝奇物語の王道→

2013-01-27 07:48:17
丸山天寿 @tenjumaruyama

「王朝妖狐潭」-宗谷真爾―同じく金毛九尾の妖狐伝説を扱った伝奇時代長編。ただし、こちらは真言立川流の誕生秘話を絡めている(またこの大人向きの話が面白い)。さらに山中漂泊民伝承をも盛り込んだ、大変に読み応えのある作品。この妖しさと面白さは戦後伝奇小説の代表と言っても過言ではない→

2013-01-27 07:51:36
丸山天寿 @tenjumaruyama

「産霊山秘録=むすびのやまひろく」-半村良。半村氏作品はどれも素晴らしい伝奇小説だが今回はあえてこれ。「古代から人知れず歴史の闇に永らえて来た一族が実は現代にも暗躍している」という作者お得意の斬新で衝撃的な物語。正当な歴史小説よりも面白い。半村を語らずして伝奇は語れない。→

2013-01-27 07:53:38
丸山天寿 @tenjumaruyama

「魔界転生」-山田風太郎。作者によって書かれた忍法帖シリーズの中でも他を圧倒する質の高さと面白さを誇る(と私は思っている)一作。死者から再誕して魔人となった剣豪たちと戦う柳生十兵衛が繰り広げる死闘。山田作品は何でもあり。あり得ない設定と展開。なぁに、面白ければ何でも良い。→

2013-01-27 07:55:16
丸山天寿 @tenjumaruyama

「暗黒神話」-諸星大二郎。小説ではなく漫画だが、どうしても付け加えたい。伝奇小説の面白さを個性的な絵でビジュアル化した秀作。(絵がまた素晴らしい)歴史家や民俗学者が避けて通りそうな解釈も漫画の世界なら許される。「孔子暗黒伝」と合わせて読むと面白さは倍増。作者の中国物も必読→

2013-01-27 07:57:12
丸山天寿 @tenjumaruyama

「古事記」-これが伝奇小説かと怒るなかれ。その内容は充分に、否それ以上に伝奇小説たりうる。伝承、お色気、活劇、推理、ありとあらゆる日本の小説の要素が含まれている。私は小学生の時、この本に出会って読書と趣味の道に入った。読んでいない人は読書人生の損をしていると断言出来る。→

2013-01-27 07:58:53
丸山天寿 @tenjumaruyama

伝奇小説の名作は星の数ほど。ここに紹介したのはほんの一部。私は伝奇物語を書きたくて執筆を始めた。古事記に邪馬台国が記載されていないのが、そもそもの始まり。一寸した事情からミステリー風になったが自分では伝奇物語のつもりで書いている。これらの作品の面白さに少しでも近付きたい 了

2013-01-27 08:02:29