では、具体的にどういうことか。それには宮田医院に嫁いでから異聞第3話『拾い子』にて窺い知れる涼子の身の上に起こった出来事を知る必要がある。以下、涼子の身の上に起きたことについて心を痛めている牧野怜治の心中を抜粋していく。
2013-01-27 15:43:50「宮田家に二十三で嫁いでから十年の間、涼子は子宝に恵まれなかった。跡継ぎを産めない嫁として苦労をしている噂を、牧野も知らないわけでは無かった。其れ故に、今年に入って、男児に恵まれたと聞いた時は兄ながら安堵の思いもした。」
2013-01-27 15:44:08「しかし、子供の誕生と引き換えに、涼子は子供を宿せない体になった。跡取息子である司郎への、過剰な愛情と過保護振りは傍から見ていても痛々しいくらいだった。―死んだ。其れも、己の至ら無さが引き起こした災厄が故に。妹がこれから宮田家でどのような立場に置かれるのかと思うと哀れだった。」
2013-01-27 15:44:17ただ子供に恵まれなかった前とは訳が違う。もう二度と子が産めないならば、以前よりもずっと苦しくみじめな立場に置かれるに違いない。涼子が宮田家で生きていく為には、何としても「司郎」の代わりが必要だ。
2013-01-27 15:45:00では、涼子の「愛」とは何なのだろうか。どうも宮田本人は涼子は自分を普通に愛しているものではないと感じている…どころか、涼子からの愛など無いと感じているようにも取れる。
2013-01-27 15:45:24しかし、自分を守る為に彼をなんとしても「宮田司郎」として育て上げなければならない、そういった執着にかられている涼子は、宮田が自分を最も大事にしていないと思った場合に態度が一変する。
2013-01-27 15:46:10宮田が大事にしているものを全否定(人形を捨てる・ラブレターを破る)し、「自分を大事にしろ(=良き息子として立派な宮田医院の跡継ぎとなって、私の立場を守れ)」と宮田にわかるまで言い聞かせる。正に狂気の沙汰だ。
2013-01-27 15:46:24【参照】「ほら、お前のせいであんな風になっちゃったの。お前がお母様よりあんな物を大事にするから……。お前はお母様を大事にしないと駄目。何時も何時も何時までもよ……」(マニアックスp211)
2013-01-27 15:46:58宮田からすれば、母親に「宮田司郎」でない自分の気持ちは全否定されるのである。そして「宮田司郎」であることを強要される。そこに家族の愛などはなく、ただ孤独なんだ。「宮田司郎」が必要とされ、「自分自身」は必要とされていない…それが、母親から自分は普通に愛されていないと感じる理由だ。
2013-01-27 15:47:18