『日本人を考える 司馬遼太郎対談集』 一

再読しながら、印象に残った部分を引用中。 十二名との対談→四名を区切りとします。(三で完結予定) 梅棹忠夫(うめさお ただお) 犬養道子(いぬかい みちこ) 梅原猛(うめはら たけし) 続きを読む
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白汀 @hakutei0528

再読第一弾。司馬遼太郎対談集『日本人を考える』(文春文庫)を読んでいきます。1978年発刊ですが、今に通じる、言うなれば予言となった部分も多々。 #日本人を考える

2013-01-01 09:13:53
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 たとえば日本人というのは、オランダ語が必要だとなると遮二無二これにしがみつくけれども、間もなく英国文明の方が上だとなると、遠慮会釈もなく英語に切りかえてしまう。福沢諭吉なんか、彼の前半生で個人としてそれを体験している。→

2013-01-01 09:19:21
白汀 @hakutei0528

→ 医学においても明治初年にドイツからホフマンを招(よ)んで以来、オランダ語は弊履のように捨てさられてドイツ語です。そういう遠慮会釈のないところは、どこか遊牧民のやり口に似ているんじゃないか。 #日本人を考える

2013-01-01 09:19:43
白汀 @hakutei0528

梅棹忠夫 ヨーロッパでも南の方は、たとえばメシを食うのに二時間から三時間かかる。日本人は昼食なら、早い人で五分間。(笑)食事を義務と思うか人生そのものと思うか、このちがいは大変なことです。 #日本人を考える

2013-01-02 10:38:05
白汀 @hakutei0528

梅棹 思想というのは伝染病みたいなもので、一度ひどいのにかかると当分免疫性ができて、次のがきてもかからない。仏教がやってきたとき、日本はいわばバージンだったからまともに感染して、あげく荘厳な舞台装置というか仕掛けをつくってしまった。 #日本人を考える

2013-01-03 08:21:48
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 しかしまだわれわれがいまひとつ遅れていると思うのは、遊ぶ能力がないことですね。遊びには才能が必要ですよ。熱気球を着想して、それをつくって飛ばすには才能がいる。→

2013-01-04 09:34:02
白汀 @hakutei0528

→梅棹 これから教育というものの目的があるとしたら、遊びの能力、いかにうまい遊びを発見・想像できるかというところにあると思いますね。 #日本人を考える

2013-01-04 09:34:22
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 これからの日本の社会、ゲバルトを相当に包容しながら進行すると思うんです。たとえば公害の問題なんか、裁判所に訴えるより、みんなでその工場にいって滅茶苦茶にブチ壊した方が早いですよ。そうしておいて裁判へもっていって一人頭五億円くらいの損害賠償を請求する。→

2013-01-05 06:18:08
白汀 @hakutei0528

→そういう小さな市民的暴力の他に、管理社会における企業組織の膨張反応に反省の機会を与える方法はありませんね。これは思想じゃない。思想なんてものは、もう役に立たん時代ですな。 #日本人を考える

2013-01-05 06:18:30

梅棹忠夫(うめさお ただお) 
大正九年生まれ。国立民族学博物館教授、館長。社会人類学専攻。
その著『文明の生態史観』など、ユニークな比較文明論で知られる。

白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 犬養道子 まわりが海で他の民族と肌でふれ合うことがないから、よその国に対して幻想を抱くんですね。よその国を抽象化して考えるしかない。ところが日本を見てもわかるように、どこの国だって泥棒もいれば人殺しもいる。善人ばかりじゃない。→

2013-01-06 08:26:52
白汀 @hakutei0528

→ヨーロッパでは国境を接して肌でふれ合っているから、どこの国もどうせ一〇〇パーセント善良な国になりっこないということを、実感として理解しているわけですよ。絶対平和が幻想だということも、ね。 #日本人を考える

2013-01-06 08:27:08
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 そりゃ日本にもときどきインフルエンザのようにして絶対思想が吹き荒れます。古くは阿弥陀様を絶対のものとする一向宗の一向一揆から切支丹、尊王絶対の思想、マルキシズムといったふうに……。しかしいずれも、日本の風土にはいま一つ定着しにくかったですな。→

2013-01-07 06:34:06
白汀 @hakutei0528

→犬養 日本というのは、別に批判的な意味じゃなくて、あらゆる面で相対の国ですね。 #日本人を考える

2013-01-07 06:34:26
白汀 @hakutei0528

司馬 徳川幕府の老中にしても、同じ役目で何人もいる。絶対的な権力をもった最終の責任者というのがない。井伊直弼なんかむりやりに絶対権力を握ろうとしたが、とたんに殺されちゃった。つまり絶対権力というのは日本では力学的に心理的安定を欠くんです。 #日本人を考える

2013-01-08 08:12:43
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 犬養 ヨーロッパでは一つの絶対神という巨大なプリンシプルがあって、これに絶えずぶつかる形で新しい何かが再生されていくけれども、日本の場合はよそから借りてきてちょっと使いしては、また新しいものをよそに求める。→

2013-01-09 08:31:26
白汀 @hakutei0528

→さっき家庭電気製品といったけれども、モデルチェンジで繁栄している電機メーカーや自動車メーカーみたいなもので、だからこそエネルギーがいつになってもなくならないということなんですね、逆に。その点ヨーロッパというのはプリンシプルが牢固としてあるという意味で保守です。 #日本人を考える

2013-01-09 08:31:47
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 犬養 なにしろヨーロッパには、建て前を説明する建て前もあるわけで、(笑)それをまた聞くという建て前もあるわけですよ。だから談義のプロセスを大切にする議会制度の政治が根づく下地があったともいえる。ところが日本人は十七文字かなんかで、パッとわかっちゃうでしょう。→

2013-01-10 09:30:46
白汀 @hakutei0528

→そういうところ、議会政治や外交なんかで弱みになるんですね。外交では、すでにわかり合っていると思うことでもくどくどと説明しなきゃいけない。日本人にはそれができない。パッと飛んじゃうんです。だって説明しようにも、説明すべき建て前がないんですからね。 #日本人を考える

2013-01-10 09:31:13
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 たとえば坂本竜馬なんか、ルソーを読んだことがないのに晩年の言動はルソーの思想が匂っている。幕府を倒すのが正義だということについて、理論的な自信が必要でしょう。それはたった一つ、勝海舟から聞いた話からきている。アメリカの大統領は徳川のように世襲じゃない。→

2013-01-11 07:53:14
白汀 @hakutei0528

→それに大統領は下僚の給料の心配をするけれども、日本の将軍はどうだ……それだけ聞いて、竜馬は自分のいわば革命への主観世界をつくっちゃう。これは猛烈にエスプリの聞いた話で、単純・軽薄といったことじゃない。日本人というのは猛烈に聡(さと)い民族なんですよ。 #日本人を考える

2013-01-11 07:53:41

犬養道子(いぬかい みちこ)
評論家。祖父の毅は総理大臣を、父の健は法務大臣をつとめた。
外国生活の経験が長く、著書に『お嬢さん放浪記』などあり。

白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 梅原猛 日本はいま文化的に、非常に有利な条件にあると思うんです。つまり、日本は西洋文明を百年の努力によってかなり理解できる。と同時に東洋文明も、聖徳太子以来の先人の努力によって、これまたかなりのていど理解できる。→

2013-01-12 08:45:17
白汀 @hakutei0528

→二つの文明を支えてきた原理を土台に、人類が新しい文明の原理を模索していこうとしている時代に、両方をかなり理解できる日本は非常な文化的チャンスに恵まれていると思うんです。 #日本人を考える

2013-01-12 08:45:32
白汀 @hakutei0528

梅原 坊主の子が坊主になるという世襲制が最大の悪をなしているんです。この間の東本願寺の騒動(大谷光紹新門の管長就任をめぐる紛争)も結局はそれですよ。血の原理だというけれども、親鸞が説いた原理にそんなものはない。野たれ死にしてもかまわんというのが親鸞の考え方です #日本人を考える

2013-01-13 08:26:22