誤解を招きやすい厚労省・文科省発表の就職内定率についての考察

2012年6月7日のツイートに補足を加えてまとめました。 これらの考察をもとに一般向けの記事にしたものはこちら 「どっちがホント?」 異なる就職率が併存する理由と弊害 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120829/236163/
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片山さつき @katayama_s

@hinagiku_may @lcsi82失業者があふれてる?他の先進国の失業率は軒並み10%、日本は4%台。この春の新卒も93%就職。どこと比べて?少子高齢化、近隣国との競争激化は、政治のせいだけではありませんよ。日本人全体がかつての貪欲さ、勤勉さ、なくしつつあります。

2012-06-06 18:29:12
上西充子 @mu0283

↓ 「この春の新卒も93%就職」、こう使われちゃうんだよな・・。

2012-06-07 12:55:29
上西充子 @mu0283

1:というわけで、もう少しリアルな就職率を算定してみます。厚生労働省と文部科学省が共同で調査している就職内定率、これは「就職希望者数(内定者数+就職を希望する未内定者数)を分母に、「内定者数」を分子にして算出された数値。

2012-06-07 13:35:28
上西充子 @mu0283

2:大学4年次の10/1、12/1、2/1、卒業後の4/1の4時点で同じサンプル(62校の5000人程度?)に対して行った調査を基にしている。注意すべきは、就職をあきらめた人は分母の「就職希望者数」から順次除かれている、ということ。

2012-06-07 13:35:40
上西充子 @mu0283

3:そのような数字の「からくり」があることは、内閣府「平成15年版 国民生活白書」のコラムで詳しく解説されている。http://t.co/4eAf19k9

2012-06-07 13:35:51
上西充子 @mu0283

4:したがって就職率93.6%http://t.co/scuIHP5uといっても、当初から就職を希望していた人の93.6%が就職できたわけではない。

2012-06-07 13:36:01
上西充子 @mu0283

5:では、当初から就職を希望していた人を母数とした就職率はどう算出しうるか。上述の通り、「大学等卒業者の就職状況調査」は4時点で同じサンプルに追跡調査を行っている。また、そのサンプルから大学生全体の推計値が厚生労働省発表資料では示されている。

2012-06-07 13:36:23
上西充子 @mu0283

6:そのため、大学4年の10/1時点で就職を希望していた人を母数とした推移であれば、上記の4時点の調査から算出することができる(大学4年次の10/1までに就職をあきらめた人については、算出はできない)。

2012-06-07 13:36:37
上西充子 @mu0283

7:厚労省の発表資料によると、推定値として、2012年3月の大学卒業者数は55万人。うち就職希望者数は4時点で42.5万人→41.6万人→40.6万人→38.1万人と減少している(つまり、あきらめたり、進路変更したりしている)。

2012-06-07 13:36:54
上西充子 @mu0283

8:一方、就職(内定)者数は、同じく推定値として、25.4万人→29.9万人→32.7万人→35.6万人と増えている。このそれぞれの時点での就職希望者数を分母に、内定者数を分子にして就職率を算出すると、厚生労働省公表の通り、59.9%→71.9%→80.5%→93.6%となる。

2012-06-07 13:37:09
上西充子 @mu0283

9:しかし、当初の就職希望者数42.5万人を4時点すべての就職率算出の母数とすると、59.8%(10/1時点)→70.4%(12/1時点)→76.9%(2/1時点)→83.8%(4/1時点)となる。

2012-06-07 13:37:51
上西充子 @mu0283

10:厚労省・文科省の公式の就職率と、ここで独自計算した就職率を比較すると下記の通り。計算ミスがあればご教示ください。 http://t.co/6D1N308f

2012-06-07 13:39:52
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上西充子 @mu0283

当時はtwitpicへの鮮明な画像の上げ方が分かっていなかったので、下記に再作成したものを再掲。

2013-02-04 10:42:48
上西充子 @mu0283

厚生労働省発表の就職希望者数・就職内定者(就職者)数から算出した内定率・就職率。それぞれの時点における就職希望者数を分母に置いた厚生労働省方式と、10月1日時点での就職希望者数を分母に置いた独自算出。 http://t.co/9wVNf7R7

2013-02-04 10:51:22
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上西充子 @mu0283

2012年3月卒の内定率・就職率に関するデータ出所(厚生労働省発表)10月1日現在http://t.co/1PfYEg6f  12月1日現在http://t.co/ZjshKtQF

2013-02-04 10:52:10
上西充子 @mu0283

厚生労働省の発表資料に記されている内定率・就職率(59.9%→71.9%→80.5%→93.6%)と、厚生労働省の発表資料の就職希望者数および内定(就職)者数の推計値から厚生労働省方式で算出した内定率・就職率(59.8%→71.9%→80.5%→93.4%)

2013-02-04 11:13:58
上西充子 @mu0283

これが微妙に数値として異なるのは、就職希望者数および内定(就職)者数の推計値が千人の単位までしか表示されていないことから生じる誤差だと考えられます。

2013-02-04 11:14:09
上西充子 @mu0283

厚生労働省発表の就職希望者数・就職内定者(就職者)数から算出した内定率・就職率。それぞれの時点における就職希望者数を分母に置いた厚生労働省方式と、10月1日時点での就職希望者数を分母に置いた独自算出(グラフ) http://t.co/VnHAEapy

2013-02-04 11:11:53
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上西充子 @mu0283

11:なお、サンプル(62校の5000人程度?)と書いたのは、「大学、短期大学、高等専門学校併せて5,690人」という数値の内訳が示されていないから。

2012-06-07 13:41:27
上西充子 @mu0283

12:サンプル対象校62校の内訳は国立大学21校、公立大学3校、私立大学38校と、国公立大学の比率が高い。

2012-06-07 13:43:03
上西充子 @mu0283

13:この就職内定率については、上田晶美「研究ノート 大学生の就職率調査の現状とその問題点」という論文がある(『嘉悦大学研究論集』第54巻第2号2012年3月(大学図書館データベースCiNiiで全文PDF入手可能)。

2012-06-07 14:03:33
上西充子 @mu0283

14:これは(1)厚労省・文科省の「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」と (2)文科省の学校基本調査、(3)各都道府県労働局の就職率の3つの代表的な大学生の就職率調査について検討したもの。(1)については厚生労働省担当者に直接疑問点を訪ね聞き取り調査した、と。

2012-06-07 14:03:44
上西充子 @mu0283

15:上田(2012)より(要旨):サンプル校は公表されていない。また、調査では33.9%が国立大学となっているが、大学数としては国立大学は全体の11%であり、代表性に疑問。

2012-06-07 14:03:57
上西充子 @mu0283

16:上田(2012)より(要旨):国公立大学の就職率は私立大学に比べ、10ポイント以上高い。そのため、抽出大学のうち国公立大学の比率を高くして全体を推計すると、全体の就職率は事実よりも高くなる。

2012-06-07 14:04:06