創造性の高い研究開発をするコツ

研究開発は新しいものを想像するための作業だが、意外にコツをつかめていない人が多い。雑な思考をして現象を見逃したり、緻密すぎる実験をしたりしてヘトヘトに疲れたり。「思考は緻密に、試行は大胆に」それが創造性の高い研究開発を行うのに重要だ。
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shinshinohara @ShinShinohara

画期的な研究をするには、緻密すぎても雑すぎてもうまくいかないようだ。緻密すぎる人は、まだ現象の実態もつかめていないのにたくさんの細かい実験をして疲れてしまい、「新しいことは何もなかった」と結論づけてしまう。雑な人は雑すぎて、実験のノイズに新現象が隠れてしまう。

2013-02-05 17:53:15
shinshinohara @ShinShinohara

新発見をするには、「緻密な思考とざっくりとした試行」が必要だ。緻密な思考とは、考え得る限りの思考実験を繰り返し、何が大切で何が不要かを取捨選択する作業のこと。この作業をしっかり行うことで、無駄な実験を減らし、疲れないようにすることができる。それでいて、新現象を見逃すことがない。

2013-02-05 17:56:28
shinshinohara @ShinShinohara

ざっくりとした試行とは、正確・精密に新現象を捉えることができるわけではないが、もし新現象が起きたとしたら必ず感じ取れる「大きな網」をかけることだ。緻密な思考とざっくりとした試行は、一見すると矛盾しているようだが、この両方がないと新現象の発見は難しい。

2013-02-05 17:59:09
shinshinohara @ShinShinohara

たとえば水に何か問題になる物質が含まれているらしい、という場合、物質を突き止めるにも、「緻密な思考、ざっくりとした試行」が重要だ。緻密な性格の人は「緻密な試行」をしてしまい、高価な分析機器で調べる。無数の物質が検出され、疲れて「何が原因か特定できませんでした」で終わり。

2013-02-05 18:03:41
shinshinohara @ShinShinohara

ざっくりとした思考の人は「きっと世間で有名な有害物質に違いない」と決めつけて実験し、見込み違いの結果が出ると、「何の問題もない水である」という誤った結論を出す。緻密な試行も、ざっくりとした思考も、新現象を発見することのじゃまになる。

2013-02-05 18:05:27
shinshinohara @ShinShinohara

「緻密な思考、ざっくりとした試行」をする人は、思考は慎重、実験は大胆に行う。「まずは煮込んでみよう」というおおざっぱな実験をやってみる。それで無害化するなら、有害物質は熱に弱い物質だと絞り込める。次に酸を入れたりアルカリを入れたり。ざっくりした実験で正体を少しずつ突き止める。

2013-02-05 18:07:42
shinshinohara @ShinShinohara

思考は緻密に、試行はざっくりと大づかみするように。この緩急をうまくやらないと、新現象をつかめないまま研究の時間を無駄に過ごしてしまう。

2013-02-05 18:12:50
shinshinohara @ShinShinohara

大学で講義をする場合、私は学生に次のような問いかけをする。「みなさんが分析屋さんだとしよう。お客さんがある物質を持ってきて、これが何か調べてほしい、と依頼が来たとしよう。君たちはどうする?」かなり長い間、無言が続く。国立大学理系でもそんなもの。

2013-02-05 18:16:40
shinshinohara @ShinShinohara

しばらくすると、ちょっと知識のある学生が「いろいろな分析機器で調べたらどうでしょう」と発言する。私は「君は大胆だねえ。訳の分からないものを1000万円もする高価な分析機器にブチュッと入れて、壊れてもいいのかい?」と答えると、考え込む。

2013-02-05 18:19:03
shinshinohara @ShinShinohara

そのうち、「水に入れてみたら?」という声が出てくる。これで水に溶ける物質がどうかが絞り込める。「燃やしてみたら?」有機物かどうかをざっくり見極めることができる。「ざっくり実験」は、可能性をこぼさずに現象を見極める優れた手法なのだ。

2013-02-05 18:29:46
shinshinohara @ShinShinohara

「水に溶かした後、電気が通るかどうか調べたら?」これでイオン性の物質かどうかが見極められる。「臭いはするかな?」揮発性の物質かどうかが分かる。ざっくり実験をたくさん行うことで、物質の正体をどんどん見極めることができる。実験はざっくり行う方が有効なのだ。

2013-02-05 18:34:33
shinshinohara @ShinShinohara

「緻密な思考、緻密な試行」をする人は、「水に溶かしてみたら?」というざっくり実験のことを、「水に溶けると決めつけている」と誤解する傾向がある(不思議だが)。このため、事実上の思考停止になる人も多い。こうした人は「指示待ち人間」に多い。指示されたことはできるが独創が苦手。

2013-02-05 18:37:49
shinshinohara @ShinShinohara

「雑な思考、雑な試行」の人はなぜか大胆にも「きっとこういう現象に違いない」と決めつける傾向がある。自分の直感に不思議なほど自信を持つことが多い。しかし直感がはずれると、「もともと考えるに値しない、下らないものだ」と否定する。ブドウを酸っぱいとけなす狐の童話とそっくり。

2013-02-05 18:41:06
shinshinohara @ShinShinohara

「緻密な思考、ざっくりとした試行」の人は、ありとあらゆる可能性を排除しない、緻密で柔軟な思考を持つ。それでいて実験は、実に簡単明瞭、大胆に見える手法を取る。実験だけを見ていると、雑な思考な人だと勘違いされることが多い。だが、思考は実に緻密だ。

2013-02-05 18:43:41
shinshinohara @ShinShinohara

研究開発を行う人は、「緻密な思考、ざっくりとした試行」を使いこなせるよう、訓練しよう。創造性の高い発見・発明には、この両方が必要だ。どうしても緻密な試行(細かいことが気になる)をしてしまう人は、テクニシャン向き。雑な思考をする人は・・・うーん。思考には緻密さがやはり必要。

2013-02-05 18:46:43
shinshinohara @ShinShinohara

実は私は、創造性の高い研究開発は誰でもできると思っている。ただ、コツがつかめていない人は意外に多い。細かいことが気になって立ち往生する人、雑すぎて新現象に気づかない人。コツが分かっていないからだ。思考は緻密に、試行は大胆に。コツさえつかめれば、誰でも創造性の高い研究ができる。

2013-02-05 18:50:01
shinshinohara @ShinShinohara

「天網恢々、粗にして漏らさず(天の網は地平線に届くくらい広く、穴だらけなのに漏らすということがない)」という老子の言葉は、矛盾もいいところの言葉のようだが、創造性の高い研究を行うためには、示唆に富む言葉だ。広く網をかけ、どんな新現象も見逃さない。「天網恢々」は研究開発に必須だ。

2013-02-05 18:54:19