バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト #7

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何しに来たの」キナコは呟いた。「ダイジョブ」ハチミツが慰めるように髪を撫で、耳朶を吸う。「嫌」キナコは反射的にハチミツを振り払った。心地よい筈の愛撫を急に異物めいて感じ、ばつの悪い思いに戸惑った。「無事で良かった」アコライトは言った。そしてサスマタで連行されて行った。1

2013-02-07 17:16:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト」 #7 )2

2013-02-07 17:17:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カンツァイ=サン」「ハイ!」「手を叩きなさい」「今ですか?」「今だ」「ハイ!」明け方のバトルドージョーに乾いた拍手の音が響き渡った。「よろしい。では片手で叩くとどうかな?」「ハイ!叩けません!」「ダメ!」「グワーッ!」 3

2013-02-07 17:23:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アコライトは目を開いた。彼は石牢の中でアグラしている。ぐるぐると首を回し、肩を回し、深く呼吸した。鉄格子の間からネズミが覗き込んでいた。ネズミはアコライトに勘付かれると、素早く走り去った。アコライトは再び目を閉じかけ、また開いた。近づいてくる足音有り。 4

2013-02-07 17:33:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。ナンシー=サン」「遅くなってごめんなさいね」鉄格子の向こうでナンシーが身を屈めた。「いえ、寝ていましたから」アコライトは言った。ナンシーは来た道を振り返る。「今なら平気」「すぐに」アコライトは頷き、躊躇う事なく、己の口内に指を差し込んだ。 5

2013-02-07 17:59:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「嘔吐?アコライト=サンが?」ガンダルヴァは眉をしかめた。「ハイ」護衛戦士は跪き、指示を待つ。「仮病の類か?闘技を先延ばしにしようてか」オーバーウェルムが顔をしかめた。「今更そのような時間稼ぎをするとも思えぬが」「もしもの事があっては興醒めだ」とガンダルヴァ。「ドクターを」6

2013-02-07 18:19:11
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「日程はどうする」「フゥーム……」ガンダルヴァはオイランの胸を揉みながら沈思した。やがて命じた。「幸い、日程には余裕がある。オハギ・オークションを前倒しにせよ」「アーン……わかりました」胸を揉まれていたオイランは身を離し、スケジュール変更を段取る為に退出した。 7

2013-02-07 18:40:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アナスタシアめ」ガンダルヴァは表情を曇らせた。「まだ見つからぬか」「秘書であったからな」オーバーウェルムは言った。「この島はあの女にとっても庭よ」「わからんものだ!私が与えた待遇のなにが不服だ」「さあな」オーバーウェルムは腕を組んだ。「きつい仕置きをしてやろう」 8

2013-02-07 18:56:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オーバーウェルムの指示下、今も宮殿内、更には周辺の廃墟ビル群を、護衛戦士達が慌ただしく行き来している。単独でこの島を脱出することは不可能だ。できるだけ早く彼女を捕らねばならぬ。少なくともこの闇カンファレンスの会期内には。彼女の目的は不明だが、彼らは決して楽観視しなかった。 9

2013-02-07 19:15:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アナスタシアが何らかの機関の潜入工作員である可能性を彼らは重視した。その手の横槍が必ず入るであろう事は想定済だ。彼らはアナスタシアの素性を暴いた上で徹底的に洗脳・籠絡し、二重スパイに仕立て上げる気でいた。 10

2013-02-07 19:47:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セッタイ・アイズルはカネと快楽を無限に生み出す機関。ガンダルヴァの邪悪な意志とオーバーウェルムの暴力で回す、利己的タービンだ。オーバーウェルムは冷徹に己をわきまえている。この狂った主を頂点に据え、自らが力を行使する。さすればカネ、権力は思うままだ。まだまだ甘い汁を吸える。 11

2013-02-07 19:52:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このカルトの現状は、オーバーウェルムの実力であれば本来得られてしかるべき栄華の、いまだ序の口。主の無限の欲望をマネジメントし、適切に導く必要がある。アナスタシアには情けをかけ過ぎた。必要以上の才覚は危険だ。(((まあいい。所詮LAN直結能力すらも封じられた非ニンジャの屑)))12

2013-02-07 20:12:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オーバーウェルムは金メッキ防水UNIXのモニタの監視状況を眺める。(((ネットワークが無ければ結局この地に釘付けの……)))彼は眉根を寄せた。幾つかの懸念がパズルめいて組み合わさる。アコライトの自暴自棄。見つからぬアナスタシア。嘔吐。「ガンダルヴァ=サン。鍵はあるか?」 13

2013-02-07 20:17:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「鍵?」ガンダルヴァは目を細めた。「……フー。鍵だと?」「拘束具の鍵だ。アナスタシアの」オーバーウェルムは言った。「思えばアコライトの立ち回りは不自然であった。貴公への接触も……」「……」ガンダルヴァは金のリングを取り出した。鍵は無い。彼は顔をしかめた。「あの時か。盗人め!」14

2013-02-07 20:33:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ボンズ!」オーバーウェルムが苦々しく吐き捨てる。「調子に乗りおって!」「粛々と進める他あるまい……」ガンダルヴァは恍惚じみて言い、次のオイランを抱き寄せる。「ジバヌチ=サンのセプクのかかった神聖闘技が控えておる。それを待たずしてボンズを害すれば、カネモチが納得すまい」 15

2013-02-07 20:52:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ジバヌチ!奴もだ。くだらんスタンドプレーを……何を企んでおる?」オーバーウェルムは言った。「よくよく今期のカンファレンスは呪われておる。どいつもこいつも」「試練よ」ガンダルヴァは言った。「聖人とは、えてして試練を経る定め。神々が嫉妬するがゆえに」 16

2013-02-07 20:55:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ブルシット」オーバーウェルムが忌々しげに言った。「サイケデリック発言はあのイディオットどもの前だけにしろ」「なに、お前は見えずともよい……おお!おお!よいぞ……とにかくあの女を捜し出せ、要はそれよ」「……!」その点異論無は無い。そして部隊は既に動いている。待つしかないのだ。17

2013-02-07 21:04:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オーバーウェルムは手近のオイラン二人の首を荒々しく掴み、別室へ引きずってゆく。背後ではガンダルヴァの声。「おお……おお……神仙界に遊ぶ……」18

2013-02-07 21:09:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カンカンカンカンカンカン!頭上を鉄靴の音が通り過ぎるのを、ナンシーは狭い溝にうずくまり、息を殺してやり過ごした。一定時間ごとに潜伏個所を移す作業は彼女に極度の緊張を強いている。しかも彼女はこのサヴァイヴァル状況に置かれる直前まで、監禁の憂き目に遭っていたのだ。 20

2013-02-08 00:04:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女は奥歯を噛み締め、耳後ろの生体LANジャックに触れた。懐かしい凹凸。それだけで気持ちが幾らか安らいだ。アコライトから鍵を受け取り、LAN拘束具を外すまで、まるで生きた心地がしなかった。それは彼女に、あのつらい楽園放逐の体験を再び思い出させるものだった。 21

2013-02-08 00:10:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンダルヴァは彼なりの不可思議な神秘主義センスのもとでこの宮殿を設計しており、UNIXデッキの設置場所は限られている。忌々しいLAN拘束具などという代物を取り出して来た事からもわかるように、彼はネットワークに対して、ある種の忌避感情を抱いているようだ。 22

2013-02-08 00:14:52