第3回ついのべ大賞に応募した10作品。

・第3回ツイッター小説大賞募集スタート! http://www.d21.co.jp/campaigns/twnovel
13
layback @laybacks

ぱぱの本にはしっぽがあるね。と娘がいう。振り返ると娘は本棚から抜き出した本をぱたぱたとしている。どうやらしっぽとはしおり紐のことらしい。確かに彼女の絵本にはしっぽがない。しっぽ、しっぽ、かわいいね。娘はしっぽで遊びはじめる。本は諦め顔でされるがままになっている。 #twnovel

2012-03-06 00:09:55
layback @laybacks

窓の外には少年が立っていて、壁には海を描いた油彩が掛かっていた。素敵な絵ね。見とれていると、それは窓だよ、と少年がいう。額縁に見えたところは実は窓枠で、ガラスの向こうには本物の海が広がっていた。素敵な景色ね。返事はない。振り向くとそこには少年の絵が掛かっていた。 #twnovel

2012-05-21 02:45:20
layback @laybacks

幽霊を集めていた。袋が一杯になると役場に売りにいく。おびきよせるもなにもない。ただ見つけて話を聞いてやるだけだ。最後まで話し終えた幽霊は自ら袋の中に入ってくれる。大人しいものさ。一袋の対価は銀貨二枚。それでおれは安酒を買う。幽霊から聞いた悲しい話を忘れるために。 #twnovel

2012-06-24 14:44:20
layback @laybacks

おはようございます。ご主人さま。執事ロボットは恭しく礼をする。すぐに朝食を持って参ります。コーヒーとトーストをトレイにのせて戻るとすでに主の姿は消えていた。執事ロボットはトレイを食卓に置き、古びた映写機を直しはじめる。もし直らなければ彼は一人きりになってしまう。 #twnovel

2012-09-05 01:44:08
layback @laybacks

僕は棚の端から順番に本を読んでいた。店の老主人は子供の立ち読みは咎めない。棚の奥で少女が立ち読みを始めた。二人の距離は日に日に縮まり遂に一冊の本に同時に手が伸びた。先に読みな。僕がそう言うと彼女は首を横に振った。字が読めないの。ずっとあなたの真似をしていただけ。 #twnovel

2011-12-02 23:45:11
layback @laybacks

ずっと給食を食べていた。給食の時間内には食べ終わらなくて昼休みも終わって午後の授業が始まって終わりの会が終わってみんな帰っちゃって西日が差して日が暮れて教室は真っ暗になって朝が来ていつのまにか私は大人になってて今もまだ給食を食べている。先生、残してもいいですか? #twnovel

2012-03-30 01:01:27
layback @laybacks

双子の王は声を揃えて言った。「アボガドが食べたいぞ」臣下は答えた。「王よ。アボガドではありません。アボカドです」王は困惑する。「ではこの余った点々をどうしろと言うのだ」「お体にでも貼ればよろしい」双子の王は体に点を貼り付けた。その瞬間、王の間に玉が二つ転がった。 #twnovel

2011-11-18 22:21:30
layback @laybacks

栞。呼びかけると彼女は話を中断する。私は用を足してくる。続きを頼むよ。彼女はふたたび話しはじめる。私は彼女が語る本の物語に夢中になる。おしまいおしまい。彼女は目を閉じる。ありがとう。楽しかったよ。彼女は立ち上がり本棚に入る。昔は本が紙だったなんて。信じられない。 #twnovel

2011-12-23 01:11:57
layback @laybacks

見送りはいいと言っているのに彼女は玄関までついてくる。行ってくるよ。そう言うと彼女は背伸びをしてキスをせがむ。そしていつものように背中からコードが抜ける。だから言ったのに。僕は固まってしまった彼女にキスをする。すると少しだけ電流が走って彼女の頬が赤くなるのだ。 #twnovel

2012-04-09 23:25:09
layback @laybacks

眠っても眠ってもまだ眠い。ここのところずっとそうだった。学校を終えようやく家に帰りついたわたしは制服も脱がずにベッドに倒れ込む。まだ眠らないでくれ。どこからか声がする。無理よ。眠いの。頼む。もう少しだけ一緒にいさせてくれ。あなたは誰? おれは睡魔。きみが好きだ。 #twnovel

2012-05-15 23:49:25