第3回twitter小説大賞応募・ざっくりすぎるセルフ一次選考。

しーな@GO2完走 @xsheeenax

はいはいはい、慌てないで慌てないで！えーと、吉、小吉、おめでとう大吉、残念凶！順番に言ってくから待ってってば！あああ頭こんがらがるううう！そんなに強く振らなくてもいいじゃないのー……酔う。むしろ酔った。はいサボってないよー中吉！ #twnovel お正月、おみくじの中の人は大変。

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あなたの声、重みや体温、匂いや唇の感触を何度も思い出す。忘れてしまわないように焼きつけてしまえたらいいのに、油断するとすぐにも消えてしまいそう。もうあなたに触れてもこの手はするりと通り抜けてしまってそのぬくもりすら感じることが出来ない。ねえ、私は目の前にいるよ。 #twnovel

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やばいやばい。終電に間に合うように店を出て彼女を急かすように歩く。駅に着いて時間を確認し、ちゃんと帰れることに安心して振り返る。「間に合ったよ、気をつけて帰っ……」人波の中立ち止まり、俯いたまま僕の言葉を遮るように袖をぐいと引いた。「どうしても帰んなきゃダメ？」 #twnovel

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botを作ったらバグが出た。どうやらフォロワーの一人に恋をしたらしい。朝から晩まで「I love you」とリプライする。リムーブされても止まらない。とうとうブロックされるとそのリプライは彼女に届くことなくタイムラインを埋め尽くすようになった。中の人などいない。 #twnovel

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一度使っただけの通販サイトからダイレクトメールが頻繁に届くようになった。新商品、購入履歴を踏まえたオススメ商品、果ては雑談まで。そのうちお茶に誘われた。「一度きりのご縁で終わらせたくないのです」明らかに反則な販促だ。いつの間にか中の人がリコメンドされてるなんて。 #twnovel

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酔ってしまいそうな満月を背負った女が不思議な魔女、と名乗った。凪いだ夜を震わせる、透徹とした声。表情は読み取れない。何を想っているのか、何を考えているのかさっぱり悟らせない様子で、ただ、そこに。その様に酩酊を覚え、私は後ずさった。ああ。これが。不思議な魔女、か。 #twnovel

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夕飯時、テレビに映し出される笑顔のお年寄りを見て僕は言った。「おじいちゃんもここに入れば？」途端、父親にものすごい勢いで張り倒された。「何てこと言うんや！」訳が判らず、ぼろぼろ泣きながら父親越しにテレビを眺める。老人ホームに入れば幸せになれるって言ってるの、に。 #twnovel

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「うちら早よなおしたら嫁に行き遅れるんやて」「誰がそんなん言い出したん。迷惑な」「で、結局出さなんだら意味あらへん」三人官女の愚痴で箱の中でも季節を知る。あたたかな気温。梅の香り。今年も私はここから出られないまま。でも旦那様と従者たちが隣にいるからさみしくない。 #twnovel

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「まだお前らはこの時期になると話題になるだけいいじゃねぇか」隣の箱から声がした。「俺なんて本気で数年だけだぞ。よくて小学校上がる前までだ。鯉のぼりなんざ鯉こくにもなってないのにあちこちぼろぼろだし」若武者の声もだいぶ大人びてきた。さぞかしその中では息苦しかろう。 #twnovel

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あたしは売れないミュージシャン。今度の曲が売れなかったらクビ勧告が出ている。今夜もいつもの時間いつもの場所でストリートライブをして、CDを手売りする。瓦礫の山を踏み越えいつものステージへ。今日は持ち歌はやらない。アコギ一本で子守歌をレクイエムを。夜が明けるまで。 #twnovel

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黒いスーツを着たくなかった。かと言って白いスーツなんて持ってる訳がない。仕方ないので、彼氏にプレゼントして貰ったナース服を着ることにした。本物の看護師さんじゃなくて、ごめんね。何度キスしてもあなたが目を開けてくれないのは、あたしがニセモノだからだよね。ごめんね。 #twnovel

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街中の誰もがマスクをして全く個人識別が出来なくなったので、目立つところに個人情報を明記した名札をつけることが義務付けられた。学生のように左胸に、ビジネスパーソンのように首から、ファッション感覚で肩や腕に。そんな日々が続き、遂に個人情報保護法は廃止されてしまった。 #twnovel

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「あんたは本当の子じゃないのよ」母は毎日嘘をつく。「はいはい、知ってるよ。段ボール箱に入ってたんだろ」俺の返事も毎日同じだ。十三年続いている日常。今日も言われたのでいつもの返事をしようと口を開きかける。母親は無言でカレンダーを指差していた。「それでもうちの子よ」 #twnovel

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桜は悩んでいた。梅からは「花」の代名詞を奪われたと責められ、コスモスからは同じ桜の字を使うのにずるいと言われた。橘には俺の立場がないといじけられた。みんなと喧嘩したくない桜はせめて早く散ることにした。それがより一層その美しさを際立たせるということにも気づかずに。 #twnovel

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インターネットは素敵だ。簡単に私の夢を叶えてくれる。平凡な名前でも地味な性格でもなく、憧れの職業に就いて人生を謳歌している。理想の自分。なりたかった自分。つまらない現実なんかよりずっと楽しい仮想現実。お誘いはあるけど、忙しいからオフ会はパスよ。 #twnovel #twnvday

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私たちはいつもリネン室でひっそりと逢う。白いシーツとタオルの海に溺れて、誰にも見つからないようにして。甘い声も、赤いしみすらも膨大な量の白に塗り潰されてしまうように、私たちの秘密もその奥底に隠してしまおう。リネン室の逢引、と言うとあなたはとても楽しそうに笑った。 #twnovel

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僕は花を育てるのが下手だ。小学生の頃、朝顔を満足に咲かせられなかった。友人がふざけてくれたサボテンですら枯らしてしまう始末。大事に大事に育てていたのに、ちゃんと愛情と一緒に水やりをしていたのに、どうしてだろう。未だに理由が判らない。だから怖くて君に触れられない。 #twnovel

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先程まで笑いさざめいていた声がひそりと収まる。滑らかに動いていた人影がぴたりと止まる。動き出す前の定位置で。「もう、このポーズは肩凝りと筋肉痛が酷くって」「俺は腰痛」朝日が差し込む神殿で、人の形を象った大理石の塊が唯一魂を吹き込まれる瞬間。それは誰にも見えない。 #twnovel

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ガクアジサイの花束を作ると、ぼろぼろとちいさなつぼみがこぼれ落ちる。青いそれがまるで涙のように見えて、僕は、花が泣くにまかせたまま、雨上がりの庭に立ち尽くす。湿った土の上にこぼれる青い粒。涙のように、もう届かない僕の思いのように。見上げると、空を塞ぐ曇天。嘆息。 #twnovel

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「……ひも」「ひもやねぇ。買うたとき飾りやと思ってて、家帰ってきてびっくりした」「これが超ひも理論か」「それは多分違う」「解いていい？」「やっぱり普通に脱がせへんねや」「だってひもやし」「そっか」「うん」「引っ張りたいん？」「うん」「今度固結びしてくる」「えー」 #twnovel

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手をつないで夜の線路沿いをてくてく歩く。「ここどこ？」「多分こっちで合ってる」てくてく。「踏切とかガード、ないっぽいね」「引き返そうか。ごめん」てくてくてくてく。「迷った分手つないでいられるから、謝らなくていいよ」「うん」てくてく。歩きながら、滲む月を見上げた。 #twnovel

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僕の言うことを信じないでくれ。息をするように、千の言葉を連ねていくつもの嘘をつく詐欺師なのだから。君には本当のことを告げたいのに、笑顔が張り付いた仮面の取り方を忘れてしまった。今まで騙してきた人の数だけ罰が当たるのだろうか。今日も僕は君に耳触りのいい言葉を紡ぐ。 #twnovel

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よくぞわたしを呼び出した、人間。願いをひとつだけ叶えてやろう。無論慈善事業ではないので対価が必要である。そなたの魂と引き換えでどうだ。ん？ わたしの科白回しが古典的でつまらないだと？ だがわたしはこれで長年悪魔をやってきたのだ……むう、職業は経営コンサルタント？ #twnovel

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高いスーツを着てネクタイを締める。仕事用の自分になる。身の回りのもの一つとっても本来の自分には不似合いで不必要なもの。でも、仕事をするには必要なもの。そういう姿を装うのが僕に課せられた義務。全部脱ぎ捨ててすっかり別人になった僕を、君はちゃんと見てくれるだろうか。 #twnovel

しーな@GO2完走 @xsheeenax

みっともなくてみすぼらしい僕を隠す為、あれこれと偽装する。弱味を見せないように、隙を見せないように、誰にも本当の僕を見つけられないように。自分でも本当の僕がどんなだったかよく思い出せなくなるくらい。見た目良く着飾った僕だけ見ていて。その向こう側には何もないから。 #twnovel