sinwanohateさんによる「放射線と細胞」(放射線の細胞影響に関する説明)

sinwanohate(@sinwanohate)さんによる「放射線と細胞」(放射線の細胞影響に関する分かりやすい説明)連続ツイート
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レイジ @sinwanohate

放射線と細胞0:放射線は癌など体に様々な悪影響があるけど、具体的な正体がわからず漠然と心配している。放射線が私たちの体にどんな作用をするのか具体的なイメージを持ちたい、ただ漠然と恐れるより相手の正体を知たい、という気持ちで勉強してみました。

2013-02-08 22:50:10
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞1:放射線をうけると細胞が死んだり癌になる。その時細胞内で何が起こっているのか勉強してみた。懸念される放射線はα、β、γ線。これらは電離放射線と呼ばれている。電離とは物質から電子をはじき飛ばすイオン化作用のこと。この性質が細胞内で悪さをする諸悪の根源だ。

2013-02-08 21:08:27
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞2:物質は電子をはじき飛ばされてイオン化すると、他の分子と反応したがる性質を獲得する。例えば図は活性酸素の生成。活性酸素ができると細胞内のいろいろな物質と反応して性質を変化させ、老化などの原因になるのはご存知の通り。 http://t.co/BJ4VGga6

2013-02-08 21:10:53
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レイジ @sinwanohate

放射線と細胞3:放射線がDNAに悪さをするのも、電離作用による。この作用がDNAを切断したり塩基配列を改変する。放射線が DNA自身を直接イオン化して切断することもあれば(直接作用)、DNA近くの水などをイオン化し、それがDNAを切断することもある(間接作用)。

2013-02-08 21:13:04
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞4:DNAが切れたり損傷すると、それを直す修復機構が働く。DNAは二重鎖。二本の鎖が互いのお手本(鋳型)になる。一本が切断された場合は、もう一本の鎖がお手本になるので修復は優しい。ただし修復はタンパク質の仕事。ある確率で間違いも起こるはずだ。

2013-02-08 21:47:56
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞5:両方の鎖が同時に切れたら手本がない。DNA複製後は同じDNAのセットがもう一つあるので、それをお手本に直す方法もある。でもその仕組みを使うよりも、応急処置的に手本なしにくっつけてしまうことが多い。だから間違いがとても多くなる。

2013-02-08 22:03:12
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞6:二重鎖切断でもう一つ怖いのは、複数箇所切れたときにつなぎ間違いがおこること。これによって染色体の転座や欠失、逆位などの染色体異常が起きる。染色体は父由来と母由来の2セットがほとんど完璧に揃っていることが大事。 http://t.co/svZHb8YK

2013-02-08 22:16:07
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レイジ @sinwanohate

放射線と細胞7:染色体異常は、細胞分裂のときに染色体の一部がなくなったりするゲノム不安定性を引き起こす。染色体はXの形をしている。その交点が動原体。細胞分裂のとき動原体に糸が両端からくっついて引っ張ることで染色体を分配する。 http://t.co/ypcR9oKA

2013-02-08 22:27:35
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放射線と細胞8:染色体異常で動原体がないものは分配のための糸がつけないし、二動原体染色体は2カ所に糸がくっついてへんな形で引っ張られてしまうだろう。こうして染色体を一部でも失うと、やがて細胞は死んでしまう。

2013-02-08 22:32:55
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞9:それにしても細胞の精巧さ。DNAの損傷を感知し、損傷箇所を取り除いて修復する。しかも面白いのは修復をしている間は、DNA複製や細胞分裂のステップに入らないよう「待て」の状態を維持して、その間にせっせと修復するのだ。「待て」ってどんなシグナルなんだ?不思議。

2013-02-08 22:59:55
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞10:放射線によるDNA損傷について調べたことを考えると、放射線の影響に閾値を設定することの無意味さが見えてくる。放射線は確率的にDNAに傷を与え、細胞は修復能力はあるけど確率的に間違える。くじの確率の高低のように考えた方が論理的。閾値の設定は政治的。

2013-02-09 00:11:47
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞11:放射線のDNA損傷は確率的だから、心配なのは当然だ。その確率がどれくらい増えたか真剣に調べようとしない医療行政は許せない。それと心配することを被災地への差別だと非難する人がいるが、確率の心配が差別と結びつくことはないし、絶対結びつけてはいけないことは明白。

2013-02-09 21:16:59
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞12:チェルノの調査をみても、放射線の影響は癌以外にも様々だ。その原因の一つはDNA損傷を引き金とした細胞増殖の停止だろう。DNAが修復される際、細胞増殖がとまる。だから損傷が多ければ止まる時間も長い。また染色体異常を起こした細胞は細胞分裂すると死んでしまう。

2013-02-09 21:18:47
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞13:そのため細胞分裂が必要な造血組織、免疫系、消化管や呼吸器の粘膜などが影響を受ける。その症状は、抗がん剤の副作用に似ている。抗がん剤は細胞増殖を阻害する薬だから話は合う。免疫応答では抗体産生のためにリンパ細胞が増えないといけないんだよね。

2013-02-09 21:27:00
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞14:DNA損傷による修復ミスや染色体異常は遺伝子を改変することだ。その改変が癌を引き起こす。癌とは細胞増殖に関わる遺伝子が改変されて増殖が止められなくなった状態。そのような癌遺伝子はだいたい3種類に大別される。

2013-02-09 21:30:03
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞15:①細胞増殖を促進する遺伝子が過剰に活性化する②増殖を抑制する遺伝子が機能しない、③DNA修復遺伝子がこわれて修復能が低下する。これらが複合的にくみ合わさって、細胞分裂が制御できなくなったのが発癌。

2013-02-09 21:30:52
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞16:甲状腺癌の原因遺伝子の一つRET遺伝子を例に、染色体異常から発癌までのしくみを追ってみる。RET遺伝子が放射線により分断され、さらに転座がおきる。切れた遺伝子が中途半端なタンパク質を作り、これが悪さをする。 http://t.co/lHixjUQB

2013-02-09 21:33:09
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レイジ @sinwanohate

放射線と細胞17:正常なRETタンパク質は細胞膜にささった形(1)、シグナル(GDNF)がきたときだけ活性化する(2)。転座した遺伝子から作られたRET(3)は常時活性がある。だから細胞を増殖させる遺伝子が働き続けてしまうのだ。 http://t.co/XN8GT6ul

2013-02-09 21:38:52
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レイジ @sinwanohate

放射線と細胞18:では甲状腺癌がいつもRET遺伝子の転座によってできるかというと、そんなことはない。癌関連遺伝子はたくさんあり、甲状腺癌での変異のパターンもいろいろ。一筋縄ではいかない。

2013-02-09 21:47:12
レイジ @sinwanohate

きょうは癌遺伝子について調べてみました。癌関連遺伝子はものすごくたくさん見つかっていて奥が深い。深いけど治療は難しいのですよね。私、身近に癌を患っている人がいるので、そういう困難さがわかってつらいです。きょうはこのへんで連続TWは終わります。読んでくださった方、ありがとう。

2013-02-09 21:57:41
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞19:今まで放射線によるDNA損傷に対する比較的長期の細胞の反応を見てきましたが、短期的な反応についても調べました。DNA切断によってまず何が起きるのか?

2013-02-10 22:47:42
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞20:①DNA切断面に親和性のある3タンパク質の複合体が結合する。②ATM(リン酸化酵素)が活性化され、標的のp53やChk2タンパク質がリン酸化され活性化する。これらが細胞増殖の阻害や細胞死誘導の働きを持つ。 http://t.co/1uXXJ1Uw

2013-02-10 22:48:08
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レイジ @sinwanohate

放射線と細胞21:ATMはp53など、遺伝子発現を調節するタンパク質をリン酸化して活性を変化させる。細胞はそれぞれ固有の遺伝子発現のパターンを持っているが、放射線によるATM活性化は、その細胞の遺伝子発現のパターンを変化させる。

2013-02-10 22:50:19
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞22:この遺伝子発現パターン変化を利用して、放射線の線量に依存した反応の違いの研究が始まっている。ある研究では20mSvから4Svまで放射線を変化させた時、20mSvでも遺伝子発現に変化が現れ、低中高の線量でそれぞれ特異的な遺伝子発現を検出したと報告している。

2013-02-10 22:54:15
レイジ @sinwanohate

放射線と細胞23:こういう研究が、線量に応じた細胞の反応の違い、特に低線量での細胞反応のメカニズムを明らかにするかもしれない。また、細胞が受けた線量をモニターするのに、線量依存的に発現量が変化する遺伝子がマーカーとして使えるかもしれない。

2013-02-10 22:56:04