楠樹暖 Twitter小説自選集(2011-2012年)

2011年から2012年にかけて作ったTwitter小説の自選集です。 第3回ツイッター小説大賞への応募用にまとめました。 応募した作品は色を変えてあります。
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楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel かつて家があった場所に帰ってきた。瓦礫と化した家財を視界から外したくて、僕らは自然と空を見上げていた。電気の来ない町は星が綺麗だ。「知ってる? 一等星、二等星の等星って、英語でマグニチュードって言うんだって」瞳に映る星がユラユラと滲んでいき、涙が頬を伝った。

2011-05-15 16:43:54
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 夢を見た。実家で飼っている猫のミケが死ぬ夢だ。もう14歳になる。夢の中で大泣きをして目を覚ました。ケータイを見るとメールが着信していた。不安になって内容を読む。父親が倒れて危篤とのこと。よかったミケじゃなくて。ホッと一安心。

2011-05-22 20:52:55
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 大好きな彼。目をつむっていても、彼が近づくと私には分かる。なんとなくケモノ臭い。犬好きな彼。

2011-05-28 20:11:43
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 戸籍抄本を見て初めて知った、自分が次男であることを。ずっと一人っ子だと思っていた。両親がいつも見ているフォトスタンドの赤ちゃんは、自分ではなかったんだ。兄さんが赤ちゃんというのは何か変な感じだ。両親には気付いてない振りをしているが、写真に話しかけるようになった。

2011-06-19 22:07:25
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 「俺が死んだら葬式にはこの曲を流してくれ」なんて、アニメのDVDを見ながら言っていたあの人。そんなバカバカしい遺言を、私を置いて先に逝ってしまった罰として実行することにした。曲が流れ、歌が始まる……涙がこぼれた。初めてあの人と気持ちが通じた気がした。

2011-07-24 19:23:25
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 「私達やっぱり逢わない方がいいと思うの」彼女とはツイッターで知り合った。家も近くみたいだし見ているテレビも同じ。すぐに意気投合し、逢ってみようという話になった途端だった。悲しくて夜通し泣いた。彼女も泣いていたに違いない。翌朝、起きると母親が目を赤く腫らしていた。

2011-07-31 22:29:37
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 『行間を読む』能力に目覚めた。この能力が発動すると、本を読んでいても作者の心境やその時の状況が勝手に浮かんできて話に集中できない。ある日、絵本を読み聞かせている少女に会った。彼女の語る物語に対しては能力が発動しない。今や、彼女の朗読だけが唯一の読書の楽しみだ。

2011-08-19 23:12:43
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 泣ける話を聞かせて人魚の涙を採取する真珠の養殖。落ち目の自分の話を聞きに来る人魚もとうとう一匹になってしまった。この仕事も潮時か。「業務後に話してくれたコメディが好き」そんな彼女のためだけに、最後に思いっ切り笑える話を作った。彼女は涙を流しながら笑ってくれた。

2011-09-02 01:37:47
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel アレはどこにいったんだろう?探しているけど見つからない。「探し物をスグ見つけるコツは、無くしたときに最初に探す場所に仕舞うようにすればいいのよ」亡くなった妻の言葉を思い出した。思い出の中に君は居た。

2012-02-22 00:32:54
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 恋人の契約期限が今月末で切れる。でも、契約更新の打診が無い。このまま別れちゃうのかな?最近の状況だとそれも仕方ないか……。間を空けると大変なので早く次を探さなきゃ。「3月末で契約を打ち切ります」あぁ、やっぱり。「4月からは正式な家族になって貰えませんか?」

2012-03-19 22:02:03
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 4月23日、サン・ジョルディの日に彼に本を贈った。彼からも本を贈られた。本好きの私にとってはその方が嬉しいけど、男性から女性へは花を贈るもの。詰めが甘いんだから。本を開くと押し花にされた薔薇の栞が入っていた。

2012-04-23 23:58:40
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 廃棄された娼婦ロボには愛がインストールされていた。ロボは村外れで疫病にかかっている青年に会った。どんな人でも愛せるロボは青年と一緒にいる時間が増えた。ある日ロボが青年の手に触れた。「寄るな売女!もうここへは来るな」傷つきながらも愛すことしかできないロボは去った。

2012-05-31 01:25:39
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 彼のスマホを借りてメモ代わりに。『あ』と打ったら予測変換で「愛してる」と出た。何これ?こんな事言われたことも無いしメールでも見たこと無い。彼のメールを探ると私宛の未送信の下書きがあった。『け』と打ったら「結婚してください」と出た。あれから数日、早くメール頂戴よ。

2012-06-02 22:49:26
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 王様はバカには見えない服を着ていました。実は詐欺なのですが、バカ認定されるのをおそれて誰も指摘できません。そこへ全裸中年男性が現れました。「王様はどうしてパンツを履いているんじゃ?」王様はこの言葉にひどく感銘を受けました。こうして全裸中年男性が二人になりました。

2012-06-24 00:03:13
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel むかし読んだ童話をもう一度読みたいと彼女が言った。早速、ネットで注文した。「コレじゃない!ラストが違う!」ハッとして自分の部屋の押入を探すと、むかし二人で読んだ童話が出てきた。主人公が悲しくて、僕がハッピーエンドに書き換えた童話が。

2012-06-27 22:31:03
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 喉の手術を終えた。これで仕事に復帰できる。前を歩いている女性が車に牽かれそうだ。今大声を出せば喉は潰れてしまうが人の命には代えられない。「危ない!」しかし声は届かない。牽かれた女性は大音量で音楽を聞いていたのだ。イヤホンから漏れる音からは俺の歌声が聞こえていた。

2012-06-30 21:29:32
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 【1:アナタは世界を救う勇者です。→4】【2:魔王はアナタに言いました。「仲間になるなら世界の半分をやろう」はい→2、いいえ→5】【3:「ゆうべはお楽しみでしたね」】【4:遂に魔王のフロアに辿り着いた。→2】【5:アナタは魔王を倒しました。めでたしめでたし。】

2012-07-14 00:16:17
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 線香花火に火をつけた。ジジ……ジジ……。俺の人生もこんな地味な人生だったなぁ。「あら、でもこうすればチョットはマシじゃない?」女房がもう一本の線香花火を寄り添わせてきた。玉が大きくなり線香花火の輝きが増した。 #twnvday

2012-07-14 01:35:07
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 夢のジャンク屋に売った夢は二度と叶うことはない。「本当にいいんですかい?」膝を故障した僕は泣く泣く夢を売ることにした。大きくなり結婚をした。プロスポーツ選手のお嫁さんになる夢を売った女性とだ。今は二人で、自分たちの子がインターハイで活躍する夢を見ている。

2012-07-20 21:06:18
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 頭痛が痛い早朝の朝、会社へ出社するために歩いて歩行していると黒い黒猫が前を横切った。縁起の悪いジンクスだ。案の定、会社では苦情のクレームが山積みだ。定型のルーチンワークを済ませると、来客のお客さんに目を奪われた。なんて美人なベッピンさんだ。私は恋に恋した。

2012-10-26 19:50:10
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 意中の人の前でわざとハンカチを落とす。昔の女学生のあいだで流行っていたキッカケ作り。私はそんなハシタないことはしない。ずっと胸に秘め続ける。でもある日、ものスゴく好みの男性に遭遇。一目惚れをした。気が付くとハンカチが落ちていた。いや、故意に落ちた。

2012-12-16 21:27:17
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel けものみみのもののけがのけものにされていたのは、もらいもののももをもちさったから。みのけもよだつものがたりはもうおしまい。

2012-12-21 21:56:08
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 「ねぇ、24日の夜って空いてる?」なんだろう?どうせ仕事を変わってくれって話だろう。「みんなでパーティやるんだけど」あぁなるほど。「ごめーん、みんな来られなくなったみたい」当日は二人っきりだ。まさか最初から計画されていた?結局、僕らは男二人でイブの夜を過ごした。

2012-12-24 00:29:57