渡辺真也さん( @curatorshinya )の連続ツイート「柄谷行人の『哲学の起原』を読んで考えたこと」

柄谷行人『哲学の起源』(岩波書店、2012年)を材料にしながら、その読みどころと可能性(民主主義の原風景の原風景)を丁寧に紹介しつつも同時に、狭義の「哲学」「政治学」の枠組みに囚われず、その発想をヒントに、文明論の視座で「民主」と「自由」を論じる斬新な試み。 柄谷行人『哲学の起源』(岩波書店、2012年)に関しては以下の通り(岩波書店の紹介より)。 http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-024040-6 続きを読む
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Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

連続ツイート「柄谷行人の『哲学の起原』を読んで考えたこと」

2013-02-12 19:43:57
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄1)柄谷行人の著作は、「世界共和国へ」以降、文章が格段に読み易くなった。特に最近の著作「世界史の構造」と「哲学の起原」は、文句なしに素晴らしいものだ。この二冊は現在の日本からある種必然的に誕生した、現在進行形の最高の哲学書の一つと言えるだろう。

2013-02-12 19:45:37
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄2)「哲学の起原」 http://t.co/xH318Wuh は、柄谷氏の著作を読んでいない人には、少し難易度が高いと思う。柄谷氏の本を読んだことの無い人で、哲学者に触れてみたいと思う方には、まず初めに「探求」 http://t.co/CKXRW8uk をお勧めしたい。

2013-02-12 19:46:11
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄3)「哲学の起原」は、多くの人が漠然と疑問に思っていたプレ・ソクラテス期の哲学の見据えながら、現代人が民主主義のルーツと考えているアテネは、実は古代イオニアにおける自由ゆえに平等であったイソノミア(無支配)の成功しなかった再建の企てだった、と斬新な答えを出してくれた。

2013-02-12 19:46:36
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄4)アテネの政治や文化のルーツがイオニアにあり、アテネ人はその思想や政治の影響を受け入れつつ必死にそれを抑圧したという指摘には、全く同感だ。現在でもそれは、アビ・ヴァールブルグの言う「アテネは繰り返し、アレキサンドリアから奪還されなくてはならない」として再演され続けている。

2013-02-12 19:47:03
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄5)イオニアにおいて切り離されないとした物質と運動を、切り離してしまったのがピタゴラスであり、彼は物質の根底に、数学で把握される様な関係が存在すると考えたこと、つまり世界を静止的に見ること(=数学)が可能となり、それをヘラクレイトスが批判した、という下りは素晴らしいと思った。

2013-02-12 19:47:25
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄6)近代の民主主義とは、自由主義と民主主義の結合、自由-民主主義だが、これは相克する自由と平等の結合であり、この自由=不平等の肯定と、平等=自由の損失というジレンマを超えることができないことから、リバタリアンと社会民主主義の極を触れ続ける、という柄谷氏の指摘は鋭い。

2013-02-12 19:47:47
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄7)カール・ポパーのイソノミア理解をアメリカ的な自由民主主義の如き物だと批判し、プラトンの哲人王に該当するのはボリシェビズムであり、それに対してポパーが自由民主主義を対置し、それを「開かれた社会」だとするのは間違いだという下りは、極めてハイレベルで、核心を突いていると思った。

2013-02-12 19:48:11
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄8)僭越ながら、「世界史の構造的」な視点と、私のユーラシア論の視点から、柄谷氏が指摘する民主主義の発生としてのアイスランドと、さらにそれ以前にマン島で発生したとも言われる民主主義の発生場所を訪ねて来たことを交えて、簡単に応答してみたい。

2013-02-12 19:48:35
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄9)アイスランド人はノルマンコンクエストの時代、アイスランドへと植民したデーン人男性と、奴隷化されたアイルランドのケルト人女性たちから生まれたことが遺伝子解析から判明しており、柄谷氏が男女平等が描かれていると述べたアイスランド・サガは、この混血の女性達が生み出したものである。

2013-02-12 19:49:01
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄10)柄谷氏の「北欧神話はギリシア神話が北欧まで広がってできたものだと想定されているのだが、アイスランドでは北欧神話の神々は斥けられている」という下りは疑問符が残る。北欧神話はギリシャとは多少異なるゲルマン系のものであり、アイスランドのエッダは北欧神話の宝庫だ。

2013-02-12 19:49:26
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄11)世界最古の議会とされるマン島のティンワルドは、現在でも伝統に則った青空議会が開かれるが、私は丘の上にあるこの場所を訪ねた際、遊牧民が開いたクリルタイの様な対話形式の影響があるのではないかと感じた。 http://t.co/HHd8tl1p

2013-02-12 19:49:56
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄12)似た様な場面は、ポーランドの1573年のRoyal Electionをテーマにした絵画からも伺える。 https://t.co/ilMkPmNp 世界最古の議会を巡り、アイスランドとマン島が競っている訳だが、なんだか微笑ましくもあった。

2013-02-12 19:50:19
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄13)アイスランドでは国民議会であるアルシングが成立するとほぼ同時期にアニミズム派が敗北、キリスト教へと改宗している。この議会はアトランティック・リフトと呼ばれる大陸プレートの接合点の崖に位置しており、自然の雄大さが一目瞭然であった場所に成立したことを考える必要があるだろう。

2013-02-12 19:50:45
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄14)イオニアでピタゴラスらの哲学が生まれたのとほぼ同時に、中国の春秋戦国時代に孔子らの諸子百家が生まれた(いわゆる枢軸時代)のは、シルクロードより北にあるステップロードを通じて、スキタイ(サカ)により、東方世界と西方世界は繋がっていたからではないか、と私は考える。

2013-02-12 19:51:29
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄15)ステップロードを通じて遊牧系のクリルタイ的な議システムの影響を受けたデーン人が、大陸から隔離した諸島にて発達させたのがティンワルドやアルシング、つまり民主主義ではないか?現在のデンマーク人の多くから、古代のアラブ地域住民の遺伝子が発見されていることにも、補助線が引ける。

2013-02-12 19:51:56
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄16)またデモクリトスの教師はジャイナ教徒のディガンバラ派と考えられるが、アテネに影響を与えたイオニアという視点にフォーカスを与えすぎた結果、イオニアに影響を与えたインドの存在が過小評価されている様にも感じた。

2013-02-12 19:52:21
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(柄17)柄谷氏は、交換様式Dが普遍宗教として現れることを強調しながら、それが宗教という形を取らずに現れた最初の事例を、イオニアの政治と思想に見出した。そこにはネーション・ステーツという近代以降の神話から脱却のヒントがあり、その考えを先に進めるのは、私たちの仕事なのかもしれない。

2013-02-12 19:53:28
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

連続ツイート「柄谷行人の『哲学の起原』を読んで考えたこと」でした。長文を読んで下さった皆様、ありがとうございました。

2013-02-12 19:53:55