秘密　ドンへside

むらたま @haengbok_01

愛する人と1つになれる瞬間。それはとびきり幸せを感じられる。例えそれが同じ男同士だとしても。「ふ…あッ…ヒョク……」『何？ドンへ』「大好き…ぁッ…愛し…てる」『ふふッ。オレも愛してるよ』2人で紡ぎ出すこの甘美な時間は、誰にも知られてはいけないオレたちだけの秘密。#秘密 D1

むらたま @haengbok_01

初めて会ったのは高2のクラス替えのとき。自分で言うのもなんだけどオレはわりと男女問わず話す方で、まだ1年しか経ってないのに喋ったことがない人はほとんどいなかった。でもあいつとは一言も話したことはない。窓際一番後ろの席、いつも何か聞いている。名前はイ・ヒョクチェ。#秘密 D2

むらたま @haengbok_01

自分から誰かに話しかけることはなく、話しかけられても素っ気ない。オレは逆に興味を持った。オレならもしかしたらちゃんと反応してくれるかも。そんな密かな期待を持ちながら話しかけた。「いつも何聞いてんの？」『音楽』返ってきたのはそれだけ。ちょっとプライド傷ついた。#秘密 D3

むらたま @haengbok_01

いや、ちょっとじゃなくかなり。オレはムキになって毎日話しかけた。絶対親しくなってやる！って半分やけくそで。他の奴らはいい加減やめたら？って言ったけど、なぜか仲良くなりたいと思った。みんなとは仲いいけど、こんなに他人を知りたいと思ったのは初めてかもしれないな。#秘密 D4

むらたま @haengbok_01

それから四六時中あいつを見てた。朝はギリギリに来て、授業が終わるとすぐ帰る。授業は寝るでもなく、必死にノートをとるでもなく、先生に気づかれないように曲を聞いてる。学力普通。運動普通。黒髪眼鏡。特に目立つものはないけど、オレは直感的に、こいつには何かあると思っていた。#秘密 D5

むらたま @haengbok_01

その何かがわかるまで、そう時間はかからなかった。きっかけは姉ちゃんだった。[ねぇ聞いてお母さん！私ウニョクくんとペアになったの!!ちょー嬉しー♪]姉ちゃんは家から30分くらいのダンススクールに通っている。今度のダンス大会でペアで踊る相手がウニョクという奴らしい。#秘密 D6

むらたま @haengbok_01

姉ちゃん曰く、そいつはかなりダンスが上手く、大会で何度も優勝してるそうだ。「すごいのはわかったけど、なんでそんな嬉しがるの？」[だって上手いだけじゃなくてカッコいいし、なんか色気があるっていうか♪あんたとは大違い]「なんでオレが出てくんのさ」[確かあんたとタメだもん]#秘密 D7

むらたま @haengbok_01

オレとタメか。「写真ある？」[あるけど後ろ姿だけ]ちぇ。[という訳で、私明日から練習に打ち込むんで帰り遅くなるから]姉ちゃんは宣言通り、次の日から帰りが遅くなった。数日後23時半。[ドンへ、ちょっとお姉ちゃん迎えに言ってあげて！さすがにこの時間は危ないから]#秘密 D8

むらたま @haengbok_01

「えー」[バイクならすぐでしょ！]オレはしぶしぶ出かけた。「姉ちゃーん」[さんきゅ～♪あ、ちょうどよかった。あの子がウニョクくん]金髪…。[お疲れさまでした。ウニョクくんまたね！]『お疲れさま』姉ちゃんの声に振り向いたとき一瞬目が合う。すぐそらされたけど、あいつだ。#秘密 D9

むらたま @haengbok_01

オレはバイクを走らせながらずっと考えていた。[ねぇ！ウニョクくんカッコよかったでしょ？]「一瞬でよくわかんなかった」[何それー]一瞬だったのは嘘じゃない。でも絶対あいつだ。金髪で眼鏡もなかったけど、イ・ヒョクチェに間違いない。ここ最近ずっとあいつを見てたんだから。#秘密 D10

むらたま @haengbok_01

次の日の休み時間。「なぁ、君ウニョクっていうの？」『何それ』しらを切るつもりか？「昨日姉ちゃんが通ってるダンススクールに行って、君を見かけたんだ。金髪だったよな？眼鏡もしてなかったし。染めたの？これだてメ？」『お前には関係ない。あっち行ってくんない？』「やだ」#秘密 D11

むらたま @haengbok_01

『じゃあオレが行くわ』「もうすぐ授業…」行っちゃった。戻ってくるかな？あーダメだ気になる！待てない！[あれ？ドンへ授業は？]「サボる！」このチャンス逃すもんか！あいつを追ってくと屋上に出た。「ヒョクチェくーん♪」『なんで付いてくるかな』「だって教えてくんないから」#秘密 D12

むらたま @haengbok_01

『なんでそんな知りたがるわけ？』「だって気になるんだもん」『そんな理由かよ…』観念したようにため息をつく。『元々誰にも話すつもりなかったけど、お前には絶対話したくなかった』「なんで？」『口軽そうだし』「そんなことないよー！」絶対言うなよと前置きをして話を始めた。#秘密 D13

むらたま @haengbok_01

『ダンスを始めたのは5歳のとき。ウニョクっていうのは、先生がつけてくれたあだ名』「そうなんだ～。でも金髪だったよね？なんで学校じゃこんななの？」頭と眼鏡を指す。『目立つから』「じゃあ暗くすればいいのに」『それはやだ』理由を聞いてみたけど、話すのを頑なに拒否した。#秘密 D14

むらたま @haengbok_01

「ねぇ、何て呼べばいい？ヒョクチェ？ウニョク？」『別に呼ばなくていい』「そんなこと言わないでさ」『はぁ…何でもいいけど、ウニョクだけはダメ』「じゃあヒョクね！オレのことはドンへって呼んで♪」『呼ぶ必要ないし』「またそんなこと言う。呼んでみて？」『やだ』「ちぇー」#秘密 D15

むらたま @haengbok_01

ほとんどオレが話してたけど、でも前に比べたら大進歩。まさかこんなに話せると思わなかった。他の誰と話すより空気が心地よかった。『もう授業終わるから戻れば？』「えー。ヒョクが戻るなら戻る」『お前がいないとみんなつまらないんじゃないの？』「そんなことないよ」#秘密 D16

むらたま @haengbok_01

「オレがいなければいないで楽しくやるさ」あ。『ふぅん』思わず口に出しちゃったけど、突っ込まれなかった。なんで言っちゃったんだろ。誰にも言ったことなかったのに。そんなことをぼんやり考える。足音で我に返るとヒョクは校舎に戻ろうとしてた。「あ！待ってよー。オレも戻るー」#秘密 D17

むらたま @haengbok_01

その日から、オレは姉ちゃんの迎えという理由を作って毎日スクールに行った。もちろん本当の目的はヒョクを見るため。室内はガラス張りで壁の向こうがよく見える。「あ、いた」奥の方で 練習してるヒョクと姉ちゃん。時に激しく、時にしなやかに踊るヒョクから目が話せない。#秘密 D18

むらたま @haengbok_01

それに金髪が普段よりヒョクを大人に見せる。姉ちゃんが色気があるって言ってたけど、確かに艶かしい感じ。ぶっちゃけ姉ちゃんよりセクシーだ。それにしても随分密着するな。お互い色々触ってるし。ダンスの振り付けなんだろうけど、なんかイヤだな。…イヤ？何がイヤなんだ？#秘密 D19

むらたま @haengbok_01

ヒョクが姉ちゃんに触り過ぎだから？それとも姉ちゃんがヒョクを触り過ぎだから？でもなんでそれでそんなこと思うわけ？最近オレ、ヒョクのこと気にし過ぎ？学校でもすぐヒョクを見ちゃうし、何してるのか気になる。なんでだ…？理由もわからないまま、ダンス大会の日になった。#秘密 D20

むらたま @haengbok_01

ダンス大会には[余ったから]と姉ちゃんがくれたチケットを使って見に行った。会場は大人から子供まで様々。演目を見ると、ヒョクと姉ちゃんは最後から2番目。チケットは半券を見せれば再入場できるため、オレは一度会場を出た。少し腹ごしらえをしてると、姉ちゃんから電話がきた。#秘密 D21

むらたま @haengbok_01

[もしもしドンへ？今日来てる？]「うん。今は外で飯食ってるけど」[よかった！悪いんだけど、ストッキング買ってきて！伝線しちゃったの。控え室まで持ってきて！スタッフには話しとくから]「え…」オレはかなりの恥ずかしさを感じつつコンビニで購入し、控え室に向かった。#秘密 D22

むらたま @haengbok_01

「姉ちゃーん」[あ、ドンへ！ありがと、まじ助かった！]オレは控え室を見回した。衣装と化粧をバッチリ決めた人たちがたくさん。ヒョクはいないのか。「じゃあオレ行くわ。姉ちゃんステージで転ぶなよ～」[不吉なこと言わないで！]廊下に出るとヒョクがいた。女の人と話してる。#秘密 D23

むらたま @haengbok_01

誰だ？ヒョクがあんなに親しげに話すなんて。ヒョクが笑ってる。初めて見た。あんな風に笑うんだ。オレといるときも笑ってほしいな…。ヒョクは横を通るオレに気づいてない。もっとオレを見てよ…。モヤモヤしながら席に着き、ヒョクと姉ちゃんの番を待つ。席は前から3番目の特等席。#秘密 D24

むらたま @haengbok_01

2人はラインストーンがちりばめられた黒スーツで現れた。姉ちゃんはショートパンツ。だからストッキングね…と納得してると曲が始まった。この前のようにお互い密着し、タッチも多い。さっきのモヤモヤと合わさってもっとモヤモヤ。でもそれはヒョクのダンスで吹き飛んだ。#秘密 D25