落合洋司弁護士の過失犯の共同正犯についての解説
1964広島県生。修道→早大法1987卒。1986司法試験合格(41期)。1989検事。東京地検公安部でオウム真理教事件も捜査。2000退官→弁護士。Yahoo!Japan法務部→独立。顧問弁護士、社外取締役・監査役お引き受けします。要急メッセージ→07091204440(基本的にSMSのみ)
今、思い出したが、自分が司法試験に合格した年の、刑法論文問題の2問中、1問は、過失犯の共同正犯について論じさせるものだった。自分は、刑法でA評価だったから、この問題を論じる最低限度の資格はあると思う。笑
2013-02-19 19:52:06自分は、司法試験に合格した当時から、過失犯の共同正犯を得意としていたことを思い出した、 笑
2013-02-19 21:30:20過失犯の共同正犯は、判例も数少ないし、通常、過失の競合で処理すれば済むので、歩道橋の件みたいな問題になるのは、極めて稀だろう。神戸地検が、警察に遠慮したのか、小さくまとめすぎたのが、そもそもの間違い。
2013-02-19 21:48:54歩道橋事故判決は、過失は認定されると思うが、共同正犯認定は五分五分じゃないかな。微妙だろう。認定のハードルは高い。
2013-02-19 21:54:53両方認定して有罪か、過失は認定して共同正犯は否定して免訴か。後者の場合、検察批判が入る可能性が高い。悪いのは裁判所ではなく、検察庁だとアピール。
2013-02-19 21:56:53静かに帰ってください、騒ぐのは検察庁のほうでやってください、とアピール。
2013-02-19 21:57:51普通の免訴は、実体判断に踏み込まなくても結論出しやすいが、歩道橋の件は、そこを、まず判断して、過失の内容を明確にしないと、共同正犯かどうか、判断できない。
2013-02-19 22:02:23[社会]強制起訴の元副署長に免訴…明石歩道橋事故 - 読売新聞 http://t.co/Agf9JeSK 兵庫県明石市で2001年7月、11人が死亡した歩道橋事故で、業務上過失致死傷罪で全国で初めて強制起訴された明石署の榊和晄(さかきかずあき)・元副署長の判決が20日、神戸地裁…
2013-02-20 10:13:12過失は認定できても、過失犯の共同正犯までは認定できなかった、ということだろう。
2013-02-20 10:17:18指定弁護士は、苦心して過失の共同を主張していたようだが、元々、無理はあった。そこを、何とか裁判所が拾ってくれるかどうかだろう、と自分は思っていたが、法律上の評価の問題だし、拾わなかった、というか、拾えなかったのだろう。
2013-02-20 10:22:39歩道橋事故で、裁判所は、過失自体も認定しなかったんだな。これは意外。
2013-02-20 10:40:39【刑Ⅰ‐81】東京地判平4・1・23。社会生活上危険かつ重大な結果の発生が予想される場合においては、「相互利用・補充による共同の注意義務を負う共同作業者が現に存在するところであり、しかもその共同作業者間において、その注意義務を怠った共同の行為がある場合には」過失の共同正犯成立。
2013-02-15 01:39:50- 朝日新聞デジタル:明石歩道橋事故、免訴判決の要旨 - 社会 2013年2月21日3時31分
http://www.asahi.com/national/update/0221/OSK201302200174.html
兵庫県明石市の歩道橋事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元明石署副署長の榊和晄被告(66)に対し、神戸地裁が20日に言い渡した免訴判決の要旨は次の通り。
【事故当日の過失について】
元副署長は(2001年7月21日の)事故当日、夏まつりの警備本部副本部長として、雑踏対策を含む警備全般で現場の報告や署で集めた情報を本部長の元署長に提供し、積極的に意見を述べて、元署長の指揮権を適正に行使させる義務があった。
元副署長が午後8時ごろの時点で、歩道橋内の雑踏状況が明石市の自主警備では対処できず、警察による規制が必要な段階にまで至っていることを認識し、事故を予見できた疑いがあることは否定できない。
しかし、現場に配置していた警察官から、現場は混雑しているが、歩道橋へ流入する観客を規制する必要はないとか、特異事項はないといった報告は受けていたが、警察による歩道橋への流入規制が必要であることをうかがわせるような報告は聞いていない。署内のテレビモニターの映像でも、歩道橋南側階段上の観客がゆっくりと階段を下りるのは確認したが、歩道橋の側面が曇っていて、歩道橋内部の観客の混雑状況を直接確認することはできなかった。
元副署長がその時点で規制の必要性を認識し、事故の発生を具体的に予見できたと認めるには合理的な疑いがあり、過失を認められない。
(現場にいた)元地域官は規制が必要だと認識していたが、署に報告していなかった。元副署長が地域官を信頼し、規制の必要性を報告してこなかったことに疑念を抱かなくても落ち度はない。
【警備計画の策定段階の過失について】
元副署長が夏まつりの雑踏警備計画策定の責任者や担当者だったとみることはできないが、警備計画の策定権限がある元署長を補佐し、担当者らを指揮監督して、元署長の権限を適正に行使させる義務があった。
警備計画では、誰がどのようにして警察による規制の必要性を判断するかなど主催者(市)側と明石署の連携態勢について決められておらず、現場の警察官の具体的な行動計画や対処基準も示されていないなど問題があった。元署長の策定権限の行使が適正でなかったといわざるを得ず、補佐する元副署長の指導監督権限の行使も不十分であった疑いがあることは否定できない。
しかし、警備計画の策定までに元副署長が予想できた事情は抽象的な危惧感に過ぎず、これらの事情によって直ちに事故の発生を具体的に予見することができたとはいえない。従って、警備計画の策定において元副署長が事故を予見する義務があったとはいえない。
現実の雑踏警備では計画の想定外の事態が起こる可能性はいくらでもある。現に本件でも、元地域官が事故の発生を具体的に予見できたのに権限を行使せず、署に報告して機動隊などによる規制を行わせなかったことが事故の直接の原因になった。
これらに照らすと、警備計画に不十分な点がなければ必ず事故が発生しなかったということはできない。警備計画の策定に関して元副署長が権限を十分に行使していれば事故の発生を回避できたとはいえない。そもそも元副署長の権限行使と事故との因果関係も認められない。
【まとめ】
事故当日、及び警備計画の策定段階で過失があったと認められないことなどから、業務上過失致死傷罪は成立しない。従って元地域官と同罪の共同正犯が成立せず、起訴時に公訴時効が完成していたといわざるを得ないから免訴すべきだ。
- 過失共同正犯論について 横瀬 浩司 中京大学大学院法学研究科博士課程 中京大学大学院生法学研究論集 2, 68-93, 1981-12-01 中京大学
http://www.chukyo-u.ac.jp/educate/law/academic/houken/data=houken/2/yokose.pdf
- 過失の共同正犯について 北 川 陽 祐 龍谷大学大学院法学研究科修士課程修了 法学研究 No.13 2011 龍谷大学学術機関リポジトリ
http://repo.lib.ryukoku.ac.jp/jspui/bitstream/10519/1387/1/rd-ho-kn_013_006.pdf
- 共同注意義務違反説と過失共同正犯をめぐる下級審判例 (石川達紘・中村建両先生退職記念号) 内 海 朋 子 亜細亜大学法学部 亜細亜法學 44(2), 29-58, 2010-02
http://www.i-repository.net/contents/asia-u/0000000003416.pdf