無双の研究

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Problem Paradise @propara

【無双の研究000】こちらで詰将棋のミニ論考シリーズを始めようと思う。扱うのは主に、わたしが関心を持つ特殊手筋になる。「無双の研究」と題したが、べつに「無双」ばかりを取り上げるわけではない。

2013-02-19 13:11:31
Problem Paradise @propara

【無双の研究001a】二上達也「将棋魔法陣」第44番。http://t.co/9U0xCcmJ

2013-02-19 13:13:34
Problem Paradise @propara

【無双の研究001b】作意は73角、37歩合、同角生、18玉、19歩、27玉…と進む(53手詰)。

2013-02-19 13:15:48
Problem Paradise @propara

【無双の研究001c】現代の目から眺めれば、これを見てすぐにピンとくるのは「打診中合」である。これは打診中合の可能性が含まれている形ではないか。

2013-02-19 13:19:44
Problem Paradise @propara

【無双の研究001d】そこで打診中合の変化を調べてみれば、73角に46歩合なら、同角成、37歩合、同銀、39玉、57馬で詰む。この変化と、73角、37歩合に同銀は39玉で逃れ(82香がいるため、84角成が利かない)という紛れを見比べていただきたい。

2013-02-19 13:23:13
Problem Paradise @propara

【無双の研究001e】つまりこの作品では、打診中合がらみの変化紛れがうまく処理されているということだ。そこで気になるのは、作者(二上達也)がその辺りにどの程度意識的だったかという問題。もちろん、偶然にそうなったという可能性もないわけでもないのだから。

2013-02-19 13:47:33
Problem Paradise @propara

【無双の研究001f】これが決して小さな問題ではないのは、この作品の創作年が1952年頃であるという理由による。(わたしが持っているのは1974年の改訂版だが、この第44番が初版本と改訂版では違うのかどうか知らない。)

2013-02-19 13:52:57
Problem Paradise @propara

【無双の研究001g】当時は、打診中合第1号局の酒井克彦作が出る10数年前である。わたしの推測によれば、二上達也は打診中合の可能性に気づいていた。この仕掛けには82香を置く必要性があり、そのため収束で左上に追い込んでこの香を取って詰むというまとめ方にしているのがその証拠に見える。

2013-02-19 13:58:16
Problem Paradise @propara

【無双の研究001h】二上達也が理論的な問題に意識的であったとしたら、打診中合を表に出した作意手順に作り替えていたかもしれない。そうするとこの作品は第1号局の名誉に輝いたことになる。はたして真相はどうだったのか、ぜひ作者にたずねてみたい事柄だ。

2013-02-19 14:02:43
Problem Paradise @propara

【無双の研究001i】それはさておき、二上達也は「将棋魔法陣」81番で気に入っている作品6局の中にこの第44番を選んでいる。その理由は、これまで述べてきたような問題とはまったく別のところにある。途中図からの伏線手段がそれだ。 http://t.co/5tF4HE1Q

2013-02-19 14:09:33
Problem Paradise @propara

【無双の研究001j】この途中図から、28龍、36玉、26龍…と追うのではなく、いったん28歩、17玉、18歩、同玉、27歩、同玉と一歩消費して回り道することにより、攻め方19歩を消去しておく。それから28龍以下上部に追えば、後の変化で13歩が打てるという仕掛けの伏線である。

2013-02-19 14:13:44
Problem Paradise @propara

【無双の研究001k】つまりは二歩回避。この部分を見ていると、私たちは必然的に別の古典作品を思い出すことになる。そこでようやくこの二上達也の作品から離れて、次の話題「無双の研究002」に続く。

2013-02-19 14:17:46
Problem Paradise @propara

【無双の研究002a】伊藤宗看「将棋無双」第89番。http://t.co/1qVzgsWQ

2013-02-20 23:28:47
Problem Paradise @propara

【無双の研究002b】その途中図b。ここから35龍、43玉、52銀生、同玉、32龍…と龍追いで廻る。http://t.co/FEqr65uU

2013-02-20 23:32:40
Problem Paradise @propara

【無双の研究002c】ぐるっと廻ってまた右側に戻ってきた途中図c。ここから手なりで進むと、「28龍、36玉、26龍、45玉、46龍、34玉、35歩、23玉、24歩、14玉」となって次の参考図dになる。http://t.co/KnbL6QRr

2013-02-20 23:38:09
Problem Paradise @propara

【無双の研究002d】参考図d。これで詰まない。現状では、15歩と打つのは「ニ歩」でありしかも「打歩詰」。さてどうする? というパズルだ。http://t.co/h5XErcrX

2013-02-20 23:43:34
Problem Paradise @propara

【無双の研究002e】途中図cに戻って考えてみよう。19歩を消去する手段はある。そうすると、先ほどの「ニ歩」はとりあえず解消される。「38角、17玉、18歩、同玉、29角、27玉」としてから28龍以下追う手だ。そうすると次の参考図fのようになる。

2013-02-20 23:48:26
Problem Paradise @propara

【無双の研究002f】参考図f。めでたくニ歩は解消されたが、相変わらず打歩詰は解消されていない。すなわち逃れ。http://t.co/HNFgzRRo

2013-02-20 23:50:57
Problem Paradise @propara

【無双の研究002g】もう一度途中図cに戻って、今度は16桂を消去する手段を試してみる。そうすると、先ほどの「打歩詰」はとりあえず解消される。すなわち、「18角、16玉、27角、同玉」としてから28龍以下追う手だ。そうすると次の参考図hのようになる。

2013-02-20 23:53:09
Problem Paradise @propara

【無双の研究002h】参考図h。めでたく打歩詰は解消されたが、相変わらずニ歩は解消されていない。すなわち逃れ。http://t.co/W056ewYY

2013-02-20 23:55:54
Problem Paradise @propara

【無双の研究002i】以上のことを頭に入れて、19歩と16桂の2枚を一緒に消す手順を考える。それが実は作意手順である。途中図cから、「38角、17玉、18歩、同玉、29角、27玉」と進んで途中図i。http://t.co/H1O6QVnu

2013-02-21 00:00:16
Problem Paradise @propara

【無双の研究002j】先ほどの途中図iから、「18角!16玉、27角!同玉」としておけば16桂が消せる。しかる後に28龍以下追えば……。

2013-02-21 00:03:38
Problem Paradise @propara

【無双の研究002k】この途中図kとなって、ここでめでたく、「ニ歩」でも「打歩詰」でもなく、15歩が打てて詰みになる。http://t.co/YiBe8AWj

2013-02-21 00:05:02
Problem Paradise @propara

【無双の研究002l】作意の解説はこれで終わったわけだが、感心させられるのは、16桂と19歩の2枚を消去するのに、それぞれ1枚だけ消去する自明な紛れ手順が付いているところ。そこがうまい。そしてその各々が、「ニ歩」及び「打歩詰」というテーマ的に関連した逃れになっているのが憎らしい。

2013-02-21 00:25:28
Problem Paradise @propara

【無双の研究002m】こうした多層構造を持つ構成は、わたしが見るところ、ほとんど後世に作例がないのではないか。現代詰将棋がはたして「無双」「図巧」からどれだけ進歩したのか、と疑問に思うことも少なくないが、この作品はそういう感慨を催させる一つの例である。

2013-02-21 00:30:16