医師の持つ説得力とは、「状況を自分の言葉で、任意の文字数で要約できること」

今あるデータからどんなことが考えられ、予測精度を高めるためには何が不足し、不足した中でどんな対処を行い、どんな状況が予測できるのか。要約にはそれが必要で、それができないといけない
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medtoolz @medtoolz

成功が前提の説明と、失敗の可能性が見込まれる状況での説明とでは、説明の目的は変わってくるのだろうと思う。ホテルの接客において、ホテルが地震で崩壊する可能性に言及されることは少ないし、お客もたぶんそれを求めない。病院だと逆に、状態が悪化する可能性を語らないと大変なことになる

2013-02-23 11:16:10
Dan Kogai (小飼 弾) @dankogai

開口一番「あなたが死ぬのは時間の問題です」<@medtoolz …ホテルの接客において、ホテルが地震で崩壊する可能性に言及されることは少ないし、お客もたぶんそれを求めない。病院だと逆に、状態が悪化する可能性を語らないと大変なことになる

2013-02-23 11:18:24
medtoolz @medtoolz

@dankogai 大昔、99歳の患者さんが落ち着いたあとに病状説明を行い、えらく先のことを気にするご家族に、「この方が5年後に生きている可能性はまずありませんから」とお話して、大泣きされたことがあったのです。。

2013-02-23 11:20:14
medtoolz @medtoolz

教科書どおりの治療を行ったところで、病状は一定の確率で悪くなる。説明がない場合、ご家族にとって病状の悪化は驚きであって、驚きは容易に怒りへと転化する。病状説明の目的とは、患者さんのご家族から驚きの可能性を排除することに他ならない

2013-02-23 11:17:55
medtoolz @medtoolz

ご家族が安心すること、病気について理解することは副次的な結果であって、目標にはならない。安心を目標にしてそこに到達できたところで、急変すれば信頼は崩壊する。理解が得られたところで、ご家族の知らない事実があとから出てきたら大変なことになる。驚く可能性をゼロにしないといけない

2013-02-23 11:22:12
medtoolz @medtoolz

驚きの排除を目的にする際には、事実のコントロールと見解のコントロールとが大切になってくる。事実のコントロールは主に患者さんサイドの問題。見解のコントロールは主に医療者サイドの問題

2013-02-23 11:23:02
medtoolz @medtoolz

病状説明は、患者さんに検査を提出して結果がそろった頃、なるべく早いタイミングで行う必要がある。数字で表せるすべてのデータを、もれなく全てのご家族に、公平に同じデータを配分することが目標になる。「聞いていない」人を作ってはいけない。そういう人がいないことを確認しないといけない

2013-02-23 11:24:29
medtoolz @medtoolz

話し方には順番がある。ご家族はたいていメモをとる。メモが取りやすいような話し方をすれば、結果として見解が共有できる。説得とは立場の押し付けではなく、強弁や誤解の誘導でもなく、要約力の高さが説得の可能性を高めてくれる

2013-02-23 11:36:22
medtoolz @medtoolz

事実をそのまま並べて、たとえばそれを文章に整形すると4000字が必要であった場合に、4000字をそのまましゃべると、メモをとる相手は「要するにこういうことだ」という要約を残すことになる。自分の見解と、作られたメモとがずれていれば、見解の対立はそれだけ大きなものになる

2013-02-23 11:37:47
medtoolz @medtoolz

メモには表題が必要で、そのあと要約が来て、それから本文が始まる。驚きの排除と見解の共有を目的として何かを語る際には、4000字の内容を、まずは20字程度に要約して語り、そのあと100字程度に要約して語り、そこから初めて4000字を語る。

2013-02-23 11:39:12
medtoolz @medtoolz

4000字をそのままメモする人は少ないけれど、メモ帳で1行分、20字を要約する人も少ない。説明における説得力や分かりやすさとは、要するに4000字を20字に要約してみせる能力で、医師が患者さんに対して交渉力で優れているということは、要約力が高いことが前提になってくる

2013-02-23 11:40:43
medtoolz @medtoolz

4000字をメモにして渡したところで、最初にそれを見た人は、自分なりの要約を試みてしまう。説得とはだから、「好ましい要約の押し付け」であると解釈することもできる

2013-02-23 11:41:36
medtoolz @medtoolz

ご家族に感想を尋ね、「安心出来ました」とか「好ましい印象を持ちました」という返事をいただいたところで、驚きの排除が達成されたのかどうかはわからない。話した内容を要約していただき、お互いの要約が一致していたら、驚きが排除された可能性はそれだけ高くなる

2013-02-23 11:44:17
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

@medtoolz (*'-'*) .。oO(そしてご家族が4000字を語り始める…

2013-02-23 11:46:09
medtoolz @medtoolz

@hyuki ご家族から患者さんのふだんの状態や最近変わったことについてのこと、処方されている薬を尋ねる段階と、自分たちが検査を提出して様々なデータが出揃った段階で行われる病状説明とは、分けてやらないといけないんだろうなと思うのです

2013-02-23 11:47:36
medtoolz @medtoolz

医療者側の見解の不一致は、信頼が破綻するきっかけになる。「我々は何を分かっているのか」はカルテで共有可能だけれど、同時に「我々はまだ何を分かっていないのか」を共有しておかないと、異なった医療者が、全く異なったことをご家族に話してしまうことになる

2013-02-23 11:45:33
medtoolz @medtoolz

「医師の持つ説得力」というものを、「医学知識を詳しく知っていること」であると誤解している同業者はたぶん多くて、それは間違っている。そういう人はたぶん、4000字ぶんのデータを前に、最初から8000字を語ろうとする。そうできることが「専門性」であると考える

2013-02-23 11:49:22
medtoolz @medtoolz

話す内容が多くなれば多くなるほど、事実と見解との区分が曖昧になっていく。それが事実なのか、それとも感想や考えなのか、そこが曖昧なままにご家族に判断を迫ると、ご家族は結果として「判断を誘導された」とか、「自分の考えで物事を判断できなかった」という感想を持つ。トラブルに直結する

2013-02-23 11:50:55
medtoolz @medtoolz

医師の持つ説得力とは、「状況を自分の言葉で、任意の文字数で要約できること」に尽きる。今あるデータからどんなことが考えられ、予測精度を高めるためには何が不足し、不足した中でどんな対処を行い、どんな状況が予測できるのか。要約にはそれが必要で、それができないといけない

2013-02-23 11:52:47
medtoolz @medtoolz

「詳しいこと」と「要約できること」とは全く異なった能力になってくる。後者ができない人は時々いる。ご家族から「怖い先生」という感想を持たれる人が多い印象を持っている。詳しい人は思考する力が高い。要約できる人は思考を言語化する能力が高い。

2013-02-23 11:55:13
medtoolz @medtoolz

大学だと最近は病状説明の講義みたいなのが行われているはずだけれど、このへんどうなっているのかなと思う。講義の目指す「いい説明」というものが、現場の実体に合っているのかどうか

2013-02-23 11:56:25
zaw @zaw

@medtoolz 僕の知る限り、病状説明の講義というのはいまだ行われていないような。

2013-02-23 11:57:46
medtoolz @medtoolz

@zaw そういうのはあってもいいし、あったら面白いと思うのです。。

2013-02-23 11:58:43
zaw @zaw

@medtoolz 患者さんに渡すための「入院診療計画書」なんかに、平気で「x-pを施行します」とか書いちゃう医者が多い現状、そういう講義も必要かもしれませんね。個人的には研修医などに指導はしていますが。

2013-02-23 12:01:48
medtoolz @medtoolz

@zaw ありがちですよね。。

2013-02-23 12:02:11