クトゥルフ神話TRPGリプレイ小説"Random Jumper"Day4(前半)

タイタス・クロウ風CoCシナリオのリプレイ小説。四日目前半。
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マメ科の @abnorman_bean

クトゥルフ神話TRPGリプレイ小説"Random Jumper"Day 4-1

2013-02-26 00:01:44
マメ科の @abnorman_bean

「ほー、それで?可憐系我らがヒロイン、ミドリさんはその少年にホの字と、そういうわけでございましょうや?」掴み掛からんばかりの衝動を、この場は抑えることにする。

2013-02-26 00:03:26
マメ科の @abnorman_bean

総始郎と名乗った、あの少年を見るだけで内的衝動を抑えられないのは事実だったし、それをどのようにか、言葉にして説明しろと言われても困るのだ。そんなのは余計陳腐だと思うし、あの瞳の奥底に時折垣間見えるような煌めきの事を思うと...。あれは...あの奥底は...宇宙??

2013-02-26 00:07:05
マメ科の @abnorman_bean

「そこまで惹き付けて止まない、抗し難い魅力となると、ドリアン・グレイくらいしか思いつかないなー」ドリアン?南国フルーツ?それ美味しいの?

2013-02-26 00:08:42
マメ科の @abnorman_bean

「だーっ!違う!そういう昔の小説があるのよ。「永久に若々しいのがぼくで、年老いていくのがこの画だったら!ーそのためならーぼくはあらゆるものを投げ出してもいい!」そう言って美貌の少年ドリアン・グレイは「老い」を画に「移した」。」

2013-02-26 00:11:21
マメ科の @abnorman_bean

ーそれ以来、彼の美貌はますます冴え、ただ彼が悪逆を尽くせば尽くすほど、その度に深い皺が「画」の中の彼に刻まれて行ったという。 「まあ、最終的にはとあるきっかけで死んでしまうから、不老不死になったわけじゃなかったみたいだけど。万物は移ろい、形あるもの、全て滅んで行く」

2013-02-26 00:14:22
マメ科の @abnorman_bean

そうだろうか。移ろい、滅んで行くのは、本当に全てが、なのだろうか。ー永遠に横たわること能うものは死するに非ず、そして奇怪なる永劫のうちには死すらも死なんー 彼が口ずさんだ謎めいた詩歌、その意味するのは、そんな事ではなくてー

2013-02-26 00:17:47
マメ科の @abnorman_bean

「まあ、私はまたちょっと調べたい事が出来たんで、ふけるわ。代返、および継続的なる調査ヨロ」ついては、かの少年の特徴を述べるように、友子は要求した。そういった俗な必要に応えるのは大変心外だったのだが、手短に答えて、私は私で、独り調べる用向きで、ふける事にした。

2013-02-26 00:22:20
マメ科の @abnorman_bean

そんなことをしたのは、この時がはじめてだった。一体私は、この内的な欲求はなんなのだろうか?

2013-02-26 00:23:11
マメ科の @abnorman_bean

ー調べたかったのは、お婆ちゃんのビル、その周辺。昨日私の眼前で「落下」したはずの少年はどこへ消えたのか?それを調べにだ。道中、幹線道路沿いの不可思議なクレータ状の陥没跡を横切る。ここ最近始まった百鬼夜行の噂話。車がはねられる珍事、透明人間、気まぐれに発生する地震ー・

2013-02-26 00:32:12
マメ科の @abnorman_bean

これらを結びつける縦糸はなんなのだろうか?私の心はそれを否定し続けるけれども、やはりあの少年が、総始郎が、事件の黒幕にして主犯なのだろうか?

2013-02-26 00:33:40
マメ科の @abnorman_bean

廃墟ビル前にたどり着く。「アレ...?」階段に足を掛けたとき、ふと上を見て、気付いた。足跡が、ある。屋上のヘリから地上階まで、足跡が、点在している。それはビルの周囲を螺旋を描くように壁面から壁面へ移動しながら、徐々におりて行き、最終的に地表に到達している。足跡の間隔は数メートル。

2013-02-26 00:38:08
マメ科の @abnorman_bean

これは、彼の足跡?彼は昨日、そしてこれまで、どんな靴を履いていた?いつも彼の足音を聞くのが遭遇の合図だったが、そんな事もよく見ていなかった。そしてそれ以外に、何か、思い出さないといけない事がある気がするけど、なんだった?

2013-02-26 00:40:36
マメ科の @abnorman_bean

一度、廃ビルの屋上に出て、あたりを見渡す。畑が広がる田園的な風景と、向こうの方に市街地が見える。直下の畑には、あのクレータが点在しており、昨日より明らかに一つ、増えていた。もし、これが市街地の方で起きたら、どうなる?身震いがして、それ以上考えるのは止めた。

2013-02-26 00:43:12
マメ科の @abnorman_bean

携帯電話がなる。友子からだ。(取らないでおこうか)。そんな事を考えたりもした。だが取った。後から思い返せば、これが彼女からの最後の依頼だったのだ。その時の私は、そんな事はつゆとも知らずに。

2013-02-26 00:45:16
マメ科の @abnorman_bean

「ビッグニュース!ありました!我らが市民美術館の地下倉庫!」はずんだ声が次の行き先を告げていた。「リチャード・ピックマンなる無名の米国画家による一枚の絵画。一般公開はされていないけど、この解説はあなたの総始郎くんクリソツよ!」アメリカの画家?絵画に彼が描かれている?

2013-02-26 00:50:11
マメ科の @abnorman_bean

「で、まあ、想像はついていると思うんだけど、これは夜中、忍び込んでもらうしかないんだなん」でもそういうところは普通警備が厳重で、鍵が...「掛かっているから。掛かっているからこそ、よ」

2013-02-26 00:52:31
マメ科の @abnorman_bean

遂にずっと、ずっと触れないようにして来た事に、触れざるを得なくなってしまった。

2013-02-26 00:54:27
マメ科の @abnorman_bean

いつからかは分からない。得意だったのだ。多分最初からだ。細くて、少し先の曲がった器具さえあれば、「開ける」のなんてお手の物だった。「お父さんのゼンマイ式時計を分解して...」なんてよくある話だけど、私の手に掛かると、手当たり次第、なんでも「開いた」

2013-02-26 01:01:14
マメ科の @abnorman_bean

そんな事が何の役に立つのか、皆目見当もつかなかった。役に立つ機会があったとして、使ったとして、私の人生はもうそこで終わってしまうだろう。そういう機会しかないだろう。そうとしか考えられなかった。高校に入って、友子と出会った。

2013-02-26 01:03:49
マメ科の @abnorman_bean

「なんだか面白い事がしたいよね」彼女はそういった。例えばそれは、地球上にまだ人類未踏の地があった頃の、南極点やエベレスト山頂を目指す者達の冒険譚。例えばそれは、架空の世界ハイボリアの蛮族の青年が暗黒の魔導士を撃つ、血湧き肉踊る活劇。そういう事がしたい。彼女は明確にそういった

2013-02-26 01:08:58
マメ科の @abnorman_bean

その延長線上に、壁面や天井を歩く奇術、Ceiling Walkの話を持ち出して来て、気まぐれに外郭放水路の扉を開けた所から、私たちの友達付き合いははじまった。その時の友子の言葉は、今でも忘れない。

2013-02-26 01:10:38
マメ科の @abnorman_bean

「ねえ、ミドリ。それって、すごい事、なのよ。何の役に立つか分からない、って思ってるでしょうけど、いつかきっと、それが人の役に立つような機会がきっとある。今すぐにはないけど、きっとある。だからその時まで腐ってしまっては駄目なのよ」

2013-02-26 01:12:28
マメ科の @abnorman_bean

なんならわたしがつくってあげる。だって私は面白い事がしたいのだもの。私自身には何かをする事は出来ないけれど、何かをする人に場を提供するくらいのことは出来るんだからね。ーそう彼女は告げたのだ。

2013-02-26 01:13:46
マメ科の @abnorman_bean

今明確に言わなかったけど、今日の、このタイミングがその時だって、そういう事なんだね、友子?今からやることは完全に駄目な事だけど、それでも、意味があるって、誰かの役に立つって、そういう事なんだね?

2013-02-26 01:15:58