#狂気の魔法少女

魔法少女は笑う。 銀の杖を掲げた魔法少女は、どこかで魔法を使っている。 魔法少女は恋をする。 銀の杖は、今日もどこかで鳴っている。
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魔法少女は笑う

妖精から与えられた銀の杖は、彼女たちの願いを叶える。
銀の杖はきらきら、ぴかぴかと輝く。

オンナノコはみんな、魔法少女なのさ

焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。あんたは敵だ、だから私が消す、と。光る杖は凶器。唱える呪文は暴言。助けて、と逃げる僕を魔法少女は追う。キラキラの魔法はナイフ。笑う声は狂気。さあ、とどめよ! 魔法少女は笑う。私を絶望させた悪い敵、と呼ばれた僕の手にあるのは、彼女との離婚届だった。 #狂気の魔法少女

2013-03-04 10:47:26
焼きカレーのひと @burning_curry

「オンナノコはみんな、魔法少女なのさ」妖精が言った。「キミたちに絶望を与える奴等は、みんな悪い敵なんだ」あまりにも人に似た姿をした妖精は口元に機械的な笑みを浮かべている。「敵を倒すのが、キミたち魔法少女の仕事だよ」銀色の杖を受け取った魔法少女は、狂気に踊る。 #狂気の魔法少女

2013-03-07 12:45:36
焼きカレーのひと @burning_curry

ディスプレイの向こう側、私をぼんやりと見る見知らぬ人。魔法少女は現実に立っていた。辺りを見渡し確認する。間違いなく、ここは現実。ディスプレイを砕き、私を汚した「敵」を消す。まだここには「敵」が多い。銀の魔法の杖を持って、さあ敵を消しましょう。 @1_dark #twremix

2012-12-17 23:40:18
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。あなた、楽しそうね。私は苦しいのに、と魔法少女。かつての同級生は、銀の杖を手にしっかりと握って私を見つめている。あんなに笑顔が素敵で、みんなを引っ張っていた彼女が、どうして。私を絶望させた敵は、消さなくちゃ。虚ろな目で、彼女は魔法を行使する。 #狂気の魔法少女

2013-03-09 16:23:43
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女の定義は、ただヒトのメスであればいい。後は、それらが絶望している時にそっと囁けばいい。年齢や容姿、経歴、性格などは問わなくていい。簡単だろう? それらに絶望させた対象を「敵である」と刷り込む。絶望したヒトへの刷り込み作業は容易だ。……我々の目的? それは #twnovel

2012-12-18 18:32:10
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。本当は愛されたいと願っただけだった。本当は寂しさを誤魔化すだけだけだった。銀色の魔法の杖は、いつの間にか赤黒くなっているし、身体も何か生臭いような気がする。妖精はいない。そこにあるのは誰かの惨めな亡骸。落ちた魔法の杖は、現実に乾いた音を立てた。 #狂気の魔法少女

2013-03-09 16:25:00
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。私は全てをあなたに捧げているのに、あなたは私に何もしてくれない、と笑う。銀の杖はキラキラ輝き、彼女を絶望させた敵に突き刺さった。魔法を受けた敵は地面に崩れる。敵から開放された魔法少女はその場を去り、残ったのは、おかあさん、と呼ぶ声だけだった。 #狂気の魔法少女

2013-03-16 13:55:30
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。信頼していた先輩が、こんなことをするなんて。先輩を呼ぶ声が震える。上司の冷たくなった体を蹴り、僕を見る先輩。手には銀の杖。私は敵を退治しただけよ、と笑う先輩はいつもと同じ顔。怖くなった僕は逃げようと先輩に背を向ける。背中に異常な熱を感じて、息が、 #狂気の魔法少女

2013-03-16 13:56:04
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。全てを捨てて良いと言った彼は、結局元の場所に戻ることを望んだ。自分のそばから離れることを望んだ。自分から離れる彼は敵であると妖精が言った。だから彼を銀の杖で倒した。ベッドの上で冷たくなった彼の身体に触れ、やっと彼を独占できると笑った。 #twnovel

2012-12-26 10:18:27
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。一つ台の向こうにいる人は、金銭をやり取りするだけの相手だったのに、気付けば敵になっていた。だって、あの人、恋人と二人でお店に来たのよ? 私がこれほど思っているのに。銀の杖を一度、二度。魔法少女が軽やかに振れば、敵は二つとも息絶える。 #twnovel

2012-12-30 16:36:21
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女の銀の杖は、ぴかぴかできらきらで、きっと素敵な魔法を与えてくれるだろう。けれど気を付けて。使いすぎると、濁った色になってしまうよ。くすんだ赤黒い色、素敵な魔法とは程遠い。杖から滴る雫だけは、純粋な紅色で。魔法少女は笑う。滴る雫は、透明。 #twnovel

2013-01-04 11:52:12
焼きカレーのひと @burning_curry

ぽろぽろと、透明の雫が落ちてゆく。「何故泣いているんだい?」妖精の問いかけに、魔法少女は首を振った。「これで私は救われるはずなのにね」笑っている魔法少女の目から雫が落ちる。雫が銀の杖に当たり、赤い雫と混ざって落ちる。銀の杖が、きらりと光る。 #twnovel

2013-01-05 22:33:07
焼きカレーのひと @burning_curry

「君には力があるのさ」妖精は言う。「自分の願いを叶える、強い力が」妖精が差し出した手の中には、ピカピカと光る銀の杖。使い方は、言われなくてもわかっている。「君の願いは、この力で叶えられる」ピカピカ光る、銀の杖。少女の目は黒く、杖の輝きは赤く。 #twnovel #狂気の魔法少女

2013-01-22 23:46:14
焼きカレーのひと @burning_curry

大好きだった人も、街も、世界も、みんな色を無くした。全部、悪いやつのせいでしょう? 妖精に聞けば、彼は笑ったまま首を傾げた。悪い敵、全部そいつらのせいでしょう? だって私は、正義の魔法少女だもん。妖精は笑う。君の成すことこそが正義さ、と。 #twnovel #狂気の魔法少女

2013-01-23 11:50:17
焼きカレーのひと @burning_curry

幸せになる魔法を手に入れた。みんな笑顔で幸せそうに笑っている。なのに、誰も私にお礼を言わないの。幸せにする魔法を持っているから、当たり前? なら、私の幸せは? ああ、そうか、自分に魔法をかければ。 #twnovel 目覚めると、誰もいない街。これが、私の幸せ。 #狂気の魔法少女

2013-01-26 00:45:58
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。自分の左の小指にある赤い糸の先を辿りながら、恋の歌を歌う。その先にはいつも敵である偽の恋人がいる。銀の杖を使って敵を、偽の恋人を倒した。私の運命の人はどこ? 魔法少女は歌う。赤い糸のような痕を作りながら。今日も何処かで、恋の歌。 #twnovel #狂気の魔法少女

2013-01-29 17:09:11
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。自らの運命を、たった一枚の紙で決めようとする敵を、全て倒した。手にはペンではなく、銀の杖。必死で書いたあの運命を決める紙も、今では赤く染まってしまっている。あんなもので私の運命は決まらない、と自らの歴史を書いた紙を、踏み潰した。 #twnovel #狂気の魔法少女

2013-02-05 08:08:01
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は笑う。あなたの隣を歩いているのが私でなくてもよかったの。でも、どうしてあの子と歩いて、笑って、キス、したの? いいの。もう、答えはいらない。銀色の杖は敵も、汚れたあの子も貫いた。いらないよ、答えも、汚れてしまったあの子も。 #twnovel #狂気の魔法少女

2013-02-07 18:01:19
焼きカレーのひと @burning_curry

願い事? そうね、あなたに叶えて欲しいものは特にないわ。魔法少女は穏やかに笑って妖精の問いに答えた。彼女は、妖精が渡すよりも前から銀の杖を持っていた。彼女の願いは、その杖で既に叶えられている。全てが赤く染まったその場所で、魔法少女は笑う。 #twnovel #狂気の魔法少女

2013-02-09 14:18:28
焼きカレーのひと @burning_curry

かつて魔法少女だった者は、泣いていた。ぽろぽろと、ひたすら涙を流して謝罪の言葉を述べていた。それは夫へ、それは彼氏へ、それは子供へ、それは上司へ、それは部下へ、それは客へ、それは愛した人へ。言葉は虚しく、ただ地に落ちた銀の杖を輝かせるだけだった。 #twnovel

2013-01-14 14:26:26
焼きカレーのひと @burning_curry

彼女は何を望んだのだろうか。銀の杖は赤い痕を残して地面に落ちた。彼女は何を失ったのだろうか。魔法少女の瞳から、透明な雫が落ちる。その理由は、我々に関係のない話だ。彼女が落とした銀の杖を手にして、赤い痕を拭き取る。そうすれば、杖は元通り。「さあ、敵を倒しましょう」 #twnovel

2013-01-07 08:03:16
焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女はもういない。妖精は首を振る。彼女たちが生き続ける限り、魔法少女ら産まれる、と否定する。けれど、魔法少女はもういない。夢を赤く染めて叶えた、空っぽの彼女たちに叶える夢も、それを実現させる魔法もない。魔法少女は、もう、いない。 #twnovel #狂気の魔法少女

2013-02-25 21:52:15

魔法少女はもういない

それでもまた、世界では誰かが恋をする。
それでもまた、魔法少女は願いを叶える。

魔法少女は恋をする

焼きカレーのひと @burning_curry

魔法少女は恋をする。自分の運命を結ぶ赤い糸を辿りながら、また誰かの運命に胸を踊らせる。魔法少女は銀の杖をしゃきん、と鳴らしながら笑う。麗しき恋心よ、私の運命にあなたは邪魔です。赤い糸を思うままに操る魔法少女。何処かでまた、銀の杖が鳴く。 #twnovel #狂気の魔法少女

2013-02-28 11:39:57