clear_wtさんによる「放射線防護に用いられる線量概念」概説
- CordwainersCat
- 1944
- 0
- 0
- 0
個人線量計0)長い連ツイですが,「放射線防護に用いられる線量概念」(PDF) http://t.co/VeoTOI8p2Q に少し解釈を加えただけです.そちらをじっくり読めばこの説明は蛇足です.
2013-03-07 20:21:18放射線防護に用いられる線量概念
個人線量計1)【注意!以下は専門家の検証を経ていません】<個人線量計の測定値>と,<サーベイメータでの測定値>の関係で混乱があるように思うので,私の調べた範囲のことを整理してみます.ただし,専門家の検証を経ていないので私が間違っている可能性もあり,鵜呑みにするのは危険です.
2013-03-07 20:22:07個人線量計2)個人線量計(個人モニタリング用蛍光ガラス線量計測装置,ガラスバッジ)も,サーベイメータも主に137Csの0.662MeVのγ線が前方から平行に入射する照射場で校正され,それぞれ個人線量等量Hp(10),周辺線量当量H*(10)を示す様に値付けされます.
2013-03-07 20:23:46個人線量計3)照射場の設定にあたり,基準となるのは上位の実用照射線量(率)基準で,個人線量計でもサーベイメータでも<共通>であり,さらにそれは国家標準までトレーサブルです. http://t.co/AntMnpVv6Z
2013-03-07 20:26:15個人線量計4)校正の際,個人線量計は平板ファントムに装着した状態で,サーベイメータは自由空間で校正されますが,空気カーマと表示値(Hp(10),H*(10))の間の光子エネルギー毎の換算係数を示すのがICRP Pub.74の表A24とA21(JIS Z 4511にも採録)です.
2013-03-07 20:28:13個人線量計5)表を比べるとわかるのですが,Hp(10)とH*(10)の換算係数はさほど大きな開きはありません(例0.1MeVで1.811と1.65, 0.6MeVで1.226と1.21等).もちろん,値が近いからといって混同してはダメで,両者をちゃんと区別する必要があります.
2013-03-07 20:29:07個人線量計6)ここまでを見ると,個人線量計と,サーベイメータの値は共通の上位基準に結び付けられ,換算係数にも大きな差がないので<おおよそ>同じ値になるようにも思えます.
2013-03-07 20:29:29個人線量計7)では,なぜ両者の測定値に開きが出るか?(個人線量計の値はサーベイメータの値に時間を掛けたより小さくなることが言われています).これには遮蔽に関する2つの要因(主に後者)が複合しており,それが混乱の原因になっているように見えます.
2013-03-07 20:30:43個人線量計8)<前方からのみ照射を受ける場合>後方にファントムを置くとそこからの後方散乱で自由空間中よりも多くの放射線を受けます(例:PDM-122では1.1倍. http://t.co/JF8bhiYoX3 の係数gの説明参照)
2013-03-07 20:31:11個人線量計9)逆に言えば<前方からのみ照射を受ける場合>個人線量計でファントム無しで測定すると(身につけないでぶら下げて測定すると)値が小さくなってしまいます.
2013-03-07 20:31:35個人線量計10)しかし,実際の測定環境では前方からだけ放射線がくるのでなく,四方八方から放射線を受けます.このような場合には先の<前方からのみ照射を受ける場合>と全く逆に,<身に着けていた方が>小さく出てしまうことが起こります.(以下,2つ目の要因)
2013-03-07 20:32:22個人線量計11)個人線量計は身に付けた状態で前方から放射線を受ける前提で校正されている(これはJISはもとより,世界各国でそのような方法で校正するように規定)のに対し,実環境では人は後方を含むさまざまな方向から放射線を受けます.
2013-03-07 20:34:08個人線量計12)この後方から来た放射線は人体に遮蔽され(減衰して)体の前に付けた個人線量計に入射するので,(本当はさらに線量計の持つ方向特性も関係しますが)後方からの分については過小評価してしまいます.
2013-03-07 20:34:34個人線量計13)この人体遮蔽の影響がどれぐらいであるかを実験的に求めたのが @hayano 先生のツイート(データは福白猫先生御提供) https://t.co/eNW4M0qKWV で紹介されている「(人体模擬物体による遮蔽の有無で2割程度の違い)」であり,
2013-03-07 20:36:46(参考出品:福白猫先生御提供)ガラスバッジを体に密着させた場合と,フリーに吊り下げた場合の違い.違いは2割程度.フリーに吊り下げた方がサーベイメーター実測に近い. http://t.co/DJMOd1q7i5
2013-03-03 10:14:27個人線量計14)(理想的なエネルギー特性を持つサーベイメータによる)周辺線量当量や(ROT,ISO照射条件における)実効線量との関係を,計算コードで求めたのが「放射線防護に用いられる線量概念」 http://t.co/VeoTOI8p2Q です.
2013-03-07 20:37:19個人線量計15)後者で示されているのは,周辺線量当量に対して,ファントムに装着した個人線量計の測定値は0.69倍程度の値を示し,またこれは実効線量に対して保守的(安全に配慮した側),かつ比較的近い値を示しているということの様です.
2013-03-07 20:38:19個人線量計16)この,0.69倍というのが「個人線量計(あるいはガラスバッジ)の値が低く出る」と言われている主な原因と思われます.逆に,サーベイメータの値は実効線量に対してかなり高めに出る=かなり安全側に設定されている(これは防護システムの設計上正しい)と考えられます.
2013-03-07 20:39:20個人線量計17)また,137Cs校正かつエネルギー補償のされていないサーベイメータ(安価なもののかなりが該当)を用いると散乱線による低エネルギー成分のために値が高く出るため,そのせいでさらに個人線量計の値が低く<見えてしまう>のが不信感や陰謀論の原因になってる気がします.
2013-03-07 20:41:04個人線量計18)また,時々目にする「個人線量計の方が正しい,サーベイメータの値はあてにならない」とサーベイメータでの測定を軽視するような言説は間違っているように思われます.サーベイメータの測定値にただ時間をかければ良いわけではありませんが,場所毎の測定でサーベイメータは必須です.
2013-03-07 20:42:16個人線量計19)「サーベイメータの測定値から計算するより被曝量は<はるかに>小さい(数分の1と思わせるような書き方も見ます)」とするのも誤解です.モニタリングポストの値は使えませんが,長時間居る場所の線量を正確なサーベイメータで測ればおおよその数値の予測は可能です.
2013-03-07 20:42:49個人線量計20)個人線量計もサーベイメータもトレーサビリティ体系により同じ国家標準(国際標準)に関連付けられており,両者の関係を知るには体系上でどのように結びつくかを理解して議論する必要があると思われます.了)再度の注意:ここまでの説明には誤りがあるかもしれません.
2013-03-07 20:43:36