山本七平botまとめ/【今、なぜ「論語」なのか⑥】/「世俗社会の秩序」樹立こそ、孔子の目標

山本七平著『論語の読み方』/今、なぜ「論語」なのか?/「世俗社会の秩序」樹立こそ、孔子の目標/35頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【「世俗社会の秩序」樹立こそ、孔子の目標】もちろん孔子は、絶対に世と妥協せず、その身を汚さず、世を逃れた者が間接的に社会に影響を与える事を決して否定してはいない。 これは「逸民(脱世間の人間)には伯夷、叔斉、虞仲…(の七人)あり…」…に示されている。<『論語の読み方』

2013-03-06 09:27:56
山本七平bot @yamamoto7hei

②彼は… 「虞仲、夷逸の事をば、隠遁者として無責任な発言をするが、その身の行ないは清潔で世間を棄てたのも已むを得ぬ臨機の処置だったと批評するならば、私はそれには異議がある。 ただその行為を特に良いとも言わぬし、特に悪いとも言わぬだけだ」 …で、評価はしないのである。

2013-03-06 09:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

③いわば孔子が求めたのは「世俗社会の秩序の哲学」であって、けっして「隠遁者の神学」ではない。

2013-03-06 10:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

④そして『論語』は、伝説によれば日本に渡来した最初の書籍の一つであり、それは徐々に浸透し、日本が西欧の影響を受ける明治の直前ともなると…一介の農民でも…『四書・五経』を読み、それを自己の規範とし、子供を教育し、また子供を叱りさとすにも、それらからの引用で行なうまでになっていた。

2013-03-06 10:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤晩年、自ら膨大な『論語講義』を記した渋沢栄一は次のような思い出を、その『講義』の中に記している。 「父は読書家という程ではなかったが、四書や五経は十分に読め、傍ら俳諾なども致して風流気があったもので、常に相当の見識を備え、漫然時流を追うということはなかった。」

2013-03-06 11:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥「…世間が追々騒々しくなってきたので、余は…国事に奔走せんと欲し、それとなく父に話して見たが、父は 『思いその位を出でぬ』 の意見で……余の意見には不同意であった」 これが後にどのようになり、どう転換して、彼が故郷を出るようになったかはひとまず除く。

2013-03-06 11:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦ここで問題にしたいのは、その父が子を訓戒するために用いている『思いその位を出でぬ』という言葉である。これが何からの引用か、今では「大学出」のインテリに聞いても答えられないであろう。

2013-03-06 12:27:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧これは『易経」および『論語』…からの引用で、 「君子はその立場に忠実であると同時に、人の領域を犯さない。 自分の位置、職責には使命感を持って徹するが、人のことにむやみに手を出し口をはさむことを慎む」の意味だが、(続

2013-03-06 12:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨続>渋沢栄一の父はこのように、けっして「オレがダメだと言ったらダメだ」と言っているのではなく、聖人の教えによれば、そうしてはならないがゆえに、そうしてはならないと言っている。

2013-03-06 13:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩これが、「共通の古典を持つがゆえに成り立つ親子の対話」であり、富裕とはいえ彼の父は一介の農民だが、その農民でも「四書・五経」を自由に引用している。 こういう人が『論語』を完全に暗記していても不思議ではない。

2013-03-06 13:57:44