[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論【第1〜2章】
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[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論, 2011, ウヴェ・フリック:著, 小田博志:監訳, 小田博志・山本則子・春日常・宮地尚子:訳, 春秋社 http://t.co/ePr11LtnIS
2013-03-17 13:31:50第一部:フレームワーク 1章「主要部のガイド」なぜ質的研究なのかと背景の概観、特徴(2章)の紹介、3章「質的研究と量的研究の関係、ハイブリット化することの可能性と落とし穴」
2013-03-17 13:37:27第1章この本へのガイド ●この本のアプローチ 対象者は「(質的)研究の初心者」と「研究経験者(道具箱として使ってほしい)」。 質的方法は、それぞれの方法ごとに研究プロセスと研究対象を結びつけて理解するのが重要。自分の研究の設問と対象とに関係づけ、最適な方法を選べるようになろう。
2013-03-17 13:44:15本書が扱う質的研究は「テクスト」を扱うもの。情報(データ)収集はインタビューや観察で行う。 「データ→記録・文字化→テクスト」 そしてテクストから解釈を始める。 プロセスの方向性は二種類:「理論からテクスト」「テクストから理論」
2013-03-17 13:48:01●この本の使い方 ・質的研究の理論的背景・知識→2~7章 ・質的研究デザイン→第三部 ・質的研究の質の評価→第二部 ・質的研究デザインの実際的課題→第三部(サンプリング、研究設問、フィールドへの介入のヒント) ・データ収集・分析→第四〜六部 ・様々な分野とアプローチの統合→第八部
2013-03-17 14:06:47第2章 質的研究〜なぜ、いかに行うか ●質的研究の意義 私たちの生きる世界が多元化、複雑さを増す社会のさまざまな関係性をときほぐす→質的研究の関心の高まり
2013-03-17 14:10:50cf.生活世界の多元化について ・新たな不明瞭さ(Habermas 1996) ・生活様式とバイオグラフィーのパターンの個別化」の進行(Beck 1992 ・「古い」社会的不平等が、生活環境、サブカルチャー、生活様式などの新たな多様性へと溶解していること(Hradil 1992)
2013-03-17 14:11:33多元化する社会の中で実証的研究(empirical study)を行うには、さまざまな限定つきのナラティブこそが必要。なぜなら人間に関わる事象は、あらゆる条件の影響を強く受けるから。
2013-03-17 14:15:20ハーバート・ブルーマーの意見は今や無視できない。 「社会科学と心理学の研究者が研究を始めるにあたってまず取るべき姿勢がある。それは研究対象の生活領域の中で現に起こっていることを、自分にとってあたりまえのこととみなさないという姿勢である(Blumer 1969:33)」
2013-03-17 14:16:04現代の社会状況では、演繹的方法(理論モデル→設問・仮説→実証データとモデルを比較)は研究対象の多様性に対処できない。 そこで帰納的方法(「感受概念」を出発点とし、実証的データから新理論を産出)が登場する。ここで、知と行為は地域的(ローカル)なものである(Greetz 1983)。
2013-03-17 14:20:39●量的研究の限界を出発点とする サンプルの無作為抽出、研究者や研究対象の主観性を消去する態度、それに伴う研究手続きの厳密化。心理学は長年に渡り実験デザインの研究を行ってきた。研究成果は変数間の関係や条件の検証の為に用いられた。研究方法にこだわり、方法論そのものの検証はまれだった。
2013-03-17 14:31:41ボンスとハルトマン(Bonβ and Hartman 1985a)は、社会諸科学の分野で得られた研究の成果が、低い応用と接続の可能性しかもたないということを明らかにした。研究を日常に活かす道はものすごく狭いということだ。
2013-03-17 14:36:12さらに、研究成果が実際の場面で活かされているという期待は、現実には満たされていないことも分かった(Beck and Bonβ 1989)。活かされるとしても、再解釈が加えられたり、バラバラにした上で活かされている。
2013-03-17 14:38:29ベック&ボンス(Beck and Bonβ 1989:31)は、「学問が提供するものは、制限つきの解釈の提案である」と述べている。
2013-03-17 14:41:58さらに、ボンスらは以下のことも明らかにした。方法論的な基準を満たそうとするあまり、日常生活で意味ある問題から研究がかけ離れてしまっているので、社会諸科学の研究成果が受け入れられたしても、それが活かされていない、ということだ。
2013-03-17 14:42:35彼らによると、どんなに統制をかけた方法で研究しても、研究者の利害関心や社会文化的な背景が、どうしても研究そのものと結果に影響してしまうので、データの解釈はもちろん、研究の設問や仮説にも影響を及ぼしてしまうのは必至であると述べている。
2013-03-17 14:49:33以上のことから、従来の心理学や社会諸科学の方法論とは別に、実際に産出できる知のあり方を見直さざるを得なくなってくる。 質的研究は、人(主体/主観)と状況に結びつきのある主張を、実証的に根拠のある形で生み出すことを目指すのである。
2013-03-17 14:51:32●質的研究の基本的特徴(4つ) (1)研究対象・課題に適した方法と理論を選ぶこと (2)さまざまな視点を考慮に入れ分析すること (3)研究者が研究に関する自身の省察をも知を産出するプロセスの一部として取り入れること (4)多様なアプローチと方法を踏まえること
2013-03-17 14:55:18(1)方法と理論と適切性 学問によって標準的な方法が異なる。例えば、心理学→実験、社会学→統計的サーベイ調査など。 多くのテーマや対象者は、実験的に変数を分離する事は不可。また、少数事例の調査は、代表性と一般化を実現する為のサンプル数が足りなく、サーベイ調査が不可の場合も。
2013-03-17 15:08:46しかし、サンプル数が足りないという理由で研究をあきらめるのは、得られる貴重な研究成果を逃すことにつながるかもしれないし、現実の中で出会う事象は様々なことが絡まっているので、明確な因果関係のモデルに従って行わないといけないというなら、多くの研究を諦めなくてはならなくなってしまう。
2013-03-17 15:13:07「まれ」または「複雑」な事象は、研究対象として適切ではないと従来の社会研究ではいわれてきた。 では、複雑な量的研究のモデルを作って解決してはどうかという意見もあろうが、それだと日常に活かすことが更に難しくなってしまうし「限定的な範囲の研究」という枠組みからは、やはり飛び出せない。
2013-03-17 15:17:29質的研究は、複雑なものは複雑なまま、自然な日常の文脈の中で研究する。ポイントは現実でみられる現象を基準に研究を選ぶ事。従って、研究舞台は実験室ではなく日常の場。また、質的研究は例外的な状況や人物もよく取り上げる(11章)。 多様性への対応は「開放性」が重んじられる(13,21章)
2013-03-17 15:24:39調査の目的は、理論の検証ではなく、現象の新たな側面の発見や新理論の生成。妥当性の検証も、量的研究のような抽象的基準ではなく、研究対象との関連で評価される。
2013-03-17 15:26:19質的研究の評価の中心的基準は以下のとおり(詳しくは29章)。 ・研究結果は実証的な資料に基づいているか ・方法は研究対象の特性に照らして選ばれ、用いられたか ・研究結果は現場や日常生活との関連性が高いかどうか ・研究のやり方に関して十分省察が加えられているかどうか
2013-03-17 15:28:19