ヤンデレが死ぬ程無気力な先輩を飼育する話。
ヘビースモーカーの年上の人が、冷蔵庫に煙草のカートンしか入れなくなって、いつ会いに行っても部屋は綺麗でただやに臭くて、もしもこの人の胃の腑が煙だけでみたされてしまったら俺はなくなってしまうんじゃないか、この人は煙になって消えちゃうんじゃないかという強迫観念で毎日ご飯を作る青年とか
2010-09-04 14:22:20僕が先輩の事を本当に理解できた事なんて今まで一度もない。ただ、その代わりに、理解出来ない代わりに、誰よりも自分と他人の境界線が曖昧で、それでいてどちらにも無関心なこの先輩の行動の始めが一体何だったのか。それを覚えていてあげるのが、僕の役目ではないかと思っている。
2010-09-05 01:20:26まぁ、もしかしたら、その、『役目』っていう言葉に、誰も必要としない先輩に心から必要とされているような錯覚を覚えている。ただそれだけなのかも知れない。いつだって、必要としているのは僕だけなのだと気づきながら。
2010-09-05 01:26:36……先輩、一人で一個の生き物として完成されてる、先輩が誰かを必要とすることなんてあるんだろうか。それが僕だったらどんなにいいか。……いや、今は関係ない話だ。では、必要とされていたいと切望する僕が自分の『役目』として覚えている切っ掛けの話をしようと思う。
2010-09-05 01:28:27「あぁ、軽くなりてぇなぁ」 これだけ極端な事象の始まりは、実の所そんな一言だった。いや……先輩という人を正常に判断するのは難しいので、正確には、僕が始まりだと思っているのがこの一言だという話なのだ。
2010-09-05 01:33:24その時の先輩は、いつも通り咥え煙草で床に座ってベッドに寄りかかり、天井を見上げていた。なので、その目の色は分からない。だから言葉だけで判断する
2010-09-05 01:35:26。「だから、それだと灰が落ちますって」と言って、咥えたまま殆ど唇まで灰になってた煙草を取り上げると、先輩は本当に怠そうに視線でそれを追おうとして――そのままベッドの中に頬から沈んだ。これが同級生とかだったら、ジャンキーを気取ってんなとか、クスリでもなってるんじゃと思うのだが、
2010-09-05 01:36:33先輩という人は、驚くほどにクリーンなのだ。薬の匂いもしない――どころか、全くの無味無臭で、本来ならヤニ臭くてもいいほどのヘビースモーカーなのに、家の中ではジーパンを穿く程度にしか服を着ないし外では何も吸わないせいか、煙草の匂いさえしない時がある。
2010-09-05 01:38:40以前夏場に尋ねた時には、締め切った部屋で裸の胸元に汗の玉を浮かべてぼーっと煙草を咥えていた時だってある。なのに、「だって……開け閉めめんどくさかったんだ……」と答えた先輩を抱き起こして買って来た水を飲ませた時は、汗のにおいさえしなかった。
2010-09-05 01:40:38――閑話休題 先輩は飯を食べない。辛うじて排泄はしてるようだが、それは、僕が先輩の部屋のシーツやらを洗ってやる必要がない事で判断しているまでだ。 (更に中略) 僕は先輩に飯を喰わせないと。でないと先輩の細胞は本当に生きるということを放棄して、固まった脳細胞や臓腑から、
2010-09-05 01:43:18僕という存在を完全に排泄してしまうかも知れない。先輩が止まったら、記憶する僕は用済みだ。だから僕は飯を作る。先輩に。毎日毎日。僕を喰わせる。
2010-09-05 01:44:02