[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論【第3〜4章】

新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論 http://www.amazon.co.jp/dp/4393499107/ 2011年2月28日初版 春秋社 続きを読む
3
白川陽一 @shirasan41

[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論, 2011, ウヴェ・フリック:著, 小田博志:監訳, 小田博志・山本則子・春日常・宮地尚子:訳, 春秋社 http://t.co/ePr11LtnIS

2013-03-18 09:57:04
白川陽一 @shirasan41

第3章 質的研究と量的研究 ●質的研究と量的研究との関係 歴史的にみれば、質的は量的の批判から発展してきたが、どちらが「正しい」科学観かという事はまだ決着していない。質的と量的は、それぞれの立場で正しいことを主張したり、両研究戦略が組み合わされたり、多様な議論と実践が行われている

2013-03-18 10:03:21
白川陽一 @shirasan41

質的研究と量的研究の関係は、主に以下の6つである。 ・認識論(および認識論的な両立不可性)と方法論 ・質的および量的なデータおよび/もしくは方法の使用を組み合わせる、あるいは統合する研究デザイン ・質的および量的な研究方法 ・質的および量的研究の結果を結びつける

2013-03-18 10:06:26
白川陽一 @shirasan41

・研究結果を一般化する ・研究の質を評価する:評価基準を質的研究に応用する、あるいはその逆 次からは、質的研究と量的研究の関係について、特に論点となることがらを4つ挙げていく。

2013-03-18 10:07:47
白川陽一 @shirasan41

(1)両立不可能性を強調する 認識論方法論のレベルで議論されている。初期の頃は、認識論的・方法論的原則(例えばBecker 1996)から両立は不可であると強調されていたり、研究の目的から両立は不可であるとされた。

2013-03-18 10:17:03
白川陽一 @shirasan41

両立不可能性の議論は、実証主義【量的】VS構築主義(あるいはポスト実証主義)【質的】といった理論的背景がよく結びつけられる実証主義→ごたくはいいから実証してみろよという立場→客観的事実を重んじる量的分析へ 構築主義→真理は言語を媒介して作られるのだよという立場→質的分析へ

2013-03-18 10:20:05
白川陽一 @shirasan41

(2)適用領域を分ける 質的と量的は対立関係ではなく、並列関係だとする考え方。研究対象や設問に応じて使い分けるべきという立場。

2013-03-18 10:23:30
白川陽一 @shirasan41

(3)質的研究に対する量的研究の優越 質的研究は、予備研究などの研究初期に使うものであり、最終的には量的でまとめるべきという立場。なぜ量的の方が優越するかというと、「サンプルの代表性が高い」という理由がよく使われる。質的データは、量的データの裏付けや頻度によって検証・説明される。

2013-03-18 10:27:30
白川陽一 @shirasan41

(4)量的研究に対する質的研究の優勢 この立場はまれであり、ラディカルだとみられる。 エヴァーマンらは(Oevermann et al. 1979: 352)質的研究(特に彼が開発した客観的解釈学)のみが事実に関する説明を出来るのだと主張。

2013-03-18 10:33:42
白川陽一 @shirasan41

クライニング(Kleining 1982)は、量的の後に質的を行うことはあっても、質的の後に量的を行う必要はないので、質的の方が優れていると述べる。 シクーレル(Cicourel 1981)は、質的はミクロに適し、量的はマクロに適していると述べる。

2013-03-18 10:36:16
白川陽一 @shirasan41

マッキンレー(McKinlay 1995)は社会・政治的な分野では、事象が複雑なので、量的よりも質的の方が妥当な結果を出せると述べている。 このように、研究領域や研究対象への適切性のレベルで、質的研究の方が優れているという理由づけを見出すことができる。

2013-03-18 10:38:11
白川陽一 @shirasan41

●ひとつのデザインの中で質的研究と量的研究とを結びつける (1)質的研究と量的研究との「統合」 マイルズとヒューバーマン(Miles and Huberman 1994:41)は、両アプローチを1つの研究に統合する為の4タイプを挙げる http://t.co/s5OQYNJIiq

2013-03-18 10:58:23
拡大
白川陽一 @shirasan41

第1のデザイン両研究を並行して遂行 第2のデザインフィールドの継続観察を基礎とし、量的サーベイを何回か行ったり、量的で段階を具体化させていく。 第3のデザイン質的から始まり(例:半構造化インタビュー)、量的(質問紙)を行い、先の2つを深化・評価するために質的を行う。

2013-03-18 11:01:33
白川陽一 @shirasan41

第4のデザイン量的サーベイの後、それを深めるために質的フィールド調査を行い、先の2つの結果を検証するためにフィールドに実験介入(量的)を行う。

2013-03-18 11:03:11
白川陽一 @shirasan41

(2)質的方法と量的方法を「順番に実施する」 質的と量的は、研究の適切な段階でそれぞれ使うという考え方。 バートンとラザーズフェルド(Barton and Lazarsfeld 1955)は、質的を仮説形成に使い、量的を検証のために使う事を提言。

2013-03-18 11:09:35
白川陽一 @shirasan41

(3)質的研究と量的研究のトライアンギュレーション トライアンギュレーション(29,32章)、とは、1つの対象を研究する時に個々の方法がもつ弱点や盲点を補い合う為に、異なった方法論的なアプローチを組み合わせるという考え方。「質的と量的は対立関係ではなく相補関係にある」という背景。

2013-03-18 11:18:42
白川陽一 @shirasan41

トライアンギュレーションが行われる場合、どれが優れているだとか、どれが予備的だとかは、みなされない。複数の方法が同時、あるいは前後することは問題ではなく、同等に扱われることを強調する。 トライアンギュレーションを適用する選択肢は2つある。

2013-03-18 11:24:22
白川陽一 @shirasan41

〈A〉個別事例にトライアンギュレーションを適用 例えば、同一人物がインタビューに答え(質的)、さらに質問紙に記入する(量的)など両データは分析段階で比較され、関係づけられる。 サンプリングの決定は2つの段階で行える(詳しくは11章)。

2013-03-18 11:29:27
白川陽一 @shirasan41

〈B〉データのセットにトライアンギュレーションを適用 例えば、質問表の回答を全サンプルを使って分布する。次に、インタビューからタイポロジー(類型論)を作成。そして、質問表の回答分布とタイポロジーを比較する、という方法。

2013-03-18 11:31:55
白川陽一 @shirasan41

●質的データと量的データを「組み合わせる」 データのレベルで、質的→量的に変換したり、その逆をしたりする。

2013-03-18 11:34:48
白川陽一 @shirasan41

(1)質的→量的への変換 オープンまたはナラティブ・インタビューでの発言の数量化。例えばエンゲルとヴッゲニヒ(Engel and Wuggenig1995)はそのような統計的方法を述べる。しかしホップフ(Hopf 1982)は、根拠を示す為に数量的なロジックで説得する傾向を批判。

2013-03-18 11:38:12
白川陽一 @shirasan41

(2)量的→質的への変換 ふつうは困難。例えば質問表から回答の文脈を明らかにするには、付加的にサンプルにインタビューをする必要。多くの質問表で特定のパターンが出てくるのを説明するには、インタビューやフィールド調査を行わないと説明できない。

2013-03-18 11:40:14
白川陽一 @shirasan41

●質的方法と量的方法とを「組み合わせる」 ひとつの方法に統合するという試み。クッカーツ(Kuckartz 1995)、ロラー・マッテス・エッカート(Roller, Mathes and Eckert 1995)、ATLAS/tiのプログラムをSPSSや統計分析に移す方法など。

2013-03-18 11:45:02
白川陽一 @shirasan41

統合の例はほんのわずか。そして、分類と解釈との関係は不明瞭のままである。 質的・量的データの収集と分析を真に統合、発展させることは未解決の問題である。

2013-03-18 11:46:19
白川陽一 @shirasan41

●質的と量的の「結果を結合する」 同一の研究や異なった研究で得られた結果を組み合わせることは頻繁に行われている。目的は以下の2つ。 ・単独よりも幅の広い知見を得るために ・質的、量的の両アプローチの結果の妥当性を相互に検証するために

2013-03-18 11:50:07