クトゥルフ神話TRPGリプレイ小説"Random Jumper"Day7

タイタス・クロウ風CoCシナリオのリプレイ小説。七日目〜探索終了。ー豪雨の春日部郊外での死闘。まさか現実に豪雨になるとは...(8/7追記)
0
マメ科の @abnorman_bean

クトゥルフ神話TRPGリプレイ小説"Random Jumper"Day 7

2013-03-11 23:54:33
マメ科の @abnorman_bean

「本日の天気。埼玉県は、大雨。観測史上最大規模の豪雨が予想されています。河川の増水や氾濫には注意し、水位が低いように見えても、川の近くには絶対に近づかないようにしてくださいね」

2013-03-11 23:58:25
マメ科の @abnorman_bean

お天気お姉さんがそんな事を言っているが、もはやお笑いの領分でしかない。

2013-03-12 00:09:21
マメ科の @abnorman_bean

まさかこんなタイミングで見たかったものを見ることになるとはな、と一人言つ。見れるかどうかも作戦の首尾次第。上手く行くかどうか分からない、俺たちの作戦に思いを巡らす。

2013-03-12 00:12:16
マメ科の @abnorman_bean

夕暮れまでは時間はあるけれど、その頃にはもう、雨脚は、土砂降りどころではない位まで強まっているだろう。それより少し前には、着いて、待っていなくてはならない。

2013-03-12 00:14:20
マメ科の @abnorman_bean

雨の音は既に強く、通行人は傘をたぐり寄せ、家路を急ぐだけだ。俺たちだけが人の流れに逆らって、郊外へ、近寄ってはならぬという川沿いへと向かう。ーそう、俺たちは「首都圏外郭放水路」、あの地下神殿にまた向かう。そこが俺たちの「とっておき」で、決戦の場所ー

2013-03-12 00:17:51
マメ科の @abnorman_bean

ー大雨の日には、あそこは周りの川から水を引っぱって来て、他所へ流すようになっている。実際見たことはない。だけど今日が未曾有の大豪雨だというなら、きっとあの神殿が満たされるほどに水が流れる、そのはずだー幹線道路を今日は横切り、脇道へそれて行く。

2013-03-12 23:56:14
マメ科の @abnorman_bean

そしてしばらくして、サッカボール場ほどの空き地が見えて来たら、立ち入り禁止の看板を無視して、おもむろに鍵を開ける。今日はもしかしたら、職員達が待機しているか?階段を下って行き、制御室に目をやる...居た!あわてて身を隠すが、幸いなことに気付かれていない。

2013-03-12 23:59:05
マメ科の @abnorman_bean

こんな大変な日に、まさか紛れてくる女子高生が居るなどと思う訳もないか。皆、真剣に作業をしている。ーごめんなさい。心の中でそう呟いて、螺旋階段を降り切る。

2013-03-13 00:04:06
マメ科の @abnorman_bean

地下神殿は、まだ深として静かだ、だがいずれ、前方の縦坑から、大量の流水が流れ込んでくるだろう。そして、背後の大型の排水ダクト、その前に設置された巨大な扇風機のようなスクリューに、火が入って排水を開始するだろう。それが始まる前に、決めないといけない。監視カメラの死角に身を隠す。

2013-03-13 00:08:57
マメ科の @abnorman_bean

ーそして私たちは、最後の詠唱を開始したー

2013-03-13 00:09:14
マメ科の @abnorman_bean

ー「カタシハヤ」ー構内は未だ深としているー「エカセニクリニ」ーランダムにしか飛べない時間跳躍者ー「タメルサケ」ー彼は今日は現れないかもしれないー「テエヒ」ーまた別の時空にジャンプしてー「アシエヒ」ーもう二度と合うことはないかもしれないー「ワレシコニケリ」ーそれでも私は唱え続けた。

2013-03-16 23:02:12
マメ科の @abnorman_bean

そして、水を導くトンネルの方から、かすかにざわつく音がしだした頃、それはやってきた。

2013-03-16 23:04:24
マメ科の @abnorman_bean

まずトンネルから飛び出して来たのは、小柄な人影だった。胸元に光る青白い燐光。総始郎だ。そしてその後にー「カエセ」「カエセカエセ」ー脳をねじ切るような咆哮とともに、人影とは比べ物にならない、巨大な黒い影が迫る。

2013-03-16 23:07:04
マメ科の @abnorman_bean

明かりを落としてある構内では、総始郎も黒い巨影も、姿形をはっきり認識することはできない。私の眼前で展開されているのは、青白い光が宙を舞い、時に列柱に、時に天井に目まぐるしく移ろい、それを追うように、判別し難い漆黒の巨体が、激しく蠢く様だった。

2013-03-16 23:11:18
マメ科の @abnorman_bean

巨影が躯をふるわせるたび、青い燐光はひらりと翻り、距離を離す。だが、その様子には、徐々に余裕がなくなっているように見える。少しずつ、少しずつだが、離せる距離が短くなっているように見えるのだ。トンネルのほうからは、次第に水音が聞こえて来ているー

2013-03-16 23:14:26
マメ科の @abnorman_bean

青い燐光が描く奇跡は不規則に見え、暗い空間を切り裂く一つの芸術のようだった。人智では計り得ない神秘。ある時は壁面へ、ある時は列柱へ、そして天井へ、また地面へ、高速で繰り広げられる光のアート。だがそれにも限界があることに私は気付く。水音は更に勢いをまして来るー

2013-03-16 23:18:22
マメ科の @abnorman_bean

私はまた気付く。どれだけそういった神秘や奇跡で身を纏おうとも、不老を成し遂げ、身隠しの術を全身に張り巡らせ、不滅の護石に頼ろうとしても、それだけでは駄目なのだ。そして今この状況でも彼はそのことに気付いていない。本当に必要なのは...。水音は遂に、トンネルからこの構内まで到達した。

2013-03-16 23:22:33
マメ科の @abnorman_bean

そして、そういった無知なる遁走の試みが、終焉を迎える時が来た。未だ目視できない巨大な黒影は、ついに跳躍者の体を捉えたのだ。小さな躯が巨体に当てられ宙を舞う。 「総士朗君ー!」私は叫んだ。もちろん詠唱など、とっくに停めている。

2013-03-16 23:26:49
マメ科の @abnorman_bean

彼の手から、青白い光が私めがけて放たれた。そして私の目前で落ちる。お守りーペンダントーいや、今となっては卵だと見なしているものを私が取り上げ、視線が総始郎を探して、泳いだとき、私はそれを直視してしまったのだ。

2013-03-16 23:29:05
マメ科の @abnorman_bean

巨大な、幼虫のように長くのびた躯がしなる。この巨大空間を埋め尽くすかと思うほどの巨体だ。その先端部分、今私が直面しているところには冒涜的に蠢く複数の触手が私を狙っていきり立ち、その器官はさらに不気味に奏でるような音を発している。

2013-03-16 23:32:51
マメ科の @abnorman_bean

なんだ、なんなんだコレは。こんな、こんないきものが、この地球上に居るはずがない。膝がふるえ、目はその巨大な存在から離すことが出来ず、。喉は乾き声も出ない。直後、警報が、アラートが、大神殿中に響き渡るー

2013-03-16 23:35:10
マメ科の @abnorman_bean

それでも、手だけはペンダントを、卵をしっかり握って離さない。大量の水が、トンネルの方向から押し寄せるのが見えた。鳴り響く警報は止まらない。背にした大型のファンは、回転を始めた。「サヨナラ」ー私は、卵を、その羽に向かって、投げたー

2013-03-16 23:38:02
マメ科の @abnorman_bean

黒く蠢く巨体は、オレ達のすぐ横を通り過ぎて、大型ファンに激突した。そう、新幹線が耳元をかすめたぐらいの衝撃を伴って。直後、大量の水がトンネルから眼前に押し寄せて、それでオレ達は意識を失った。

2013-03-16 23:40:17
マメ科の @abnorman_bean

首都圏外郭放水路。いつか洪水が起きてその地下の大神殿に、水が満たされて行く様。その様を絶対目にしたいと思っていたんだが、こんな形で終わってしまう、オレ達の人生ごと終わってしまうなんてな。変なことに首を突っ込んだ結果がコレじゃあざまあないな。「まだ終わりじゃない」

2013-03-16 23:43:07