茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第８８９回「不意打ちを待つために、知りすぎてはいけない。」

茂木健一郎 @kenichiromogi

しゅりんくっ！　ぷれいりーどっぐくん、おはよう！

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３月１２日の８８８回を機に「中止」していた連続ツイートですが、今日から復活します。１２日間の中止でした。この間、いろいろ気持ちを整理して、連続ツイートをやめる強い理由はないな、という結論に達しました。

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連続ツイートを中止した理由の一つは「断捨離」というか、活動を集中させるということでしたが、この何日か試みた結果、朝、１５分くらいの連続ツイートをやることが、それほど本質的な影響を与える、ということはないという結論に達しました。

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思うに、連続ツイートを止めよう、と思ったのは、心理的な問題が大きかったように思います。その「思春期」は未だに続いていますし、これからも続くでしょう。しかし、あの後、多くの方に、「連続ツイートが楽しみだった」と言われて、なんだか無駄な意地を張っているように感じていました。

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それに、連続ツイートをやめたあとのツイッターのＴＬを見て、「核」がないというか、ツイッター自体をやっている意味がないと感じた次第です。連続ツイートこそが、ツイッターというソーシャル・メディア上に私がいる意味だったようにも感じます。

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というわけで、今日から、連続ツイートを復活させます。毎日やれるかどうかはわかりませんが（思春期は、案外深刻なのです（笑））、とにかくやっていきたいと思います。よろしくお願いいたします！

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連続ツイート８８９回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、ふりかえり系、分析系ツイート！

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ふし（１）先日、フェリシモが開催している神戸学校でお話した。すばらしい会だった。運営に愛があって、今までさまざまな講演会でお話ししたが、特別な体験に感じた。その質疑応答で、ある女性が、「私は美術がわからないけど、それでいいのだろうか」みたいな質問をした。

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ふし（２）よくよく話を聞いてみると、モネの『日傘を差す貴婦人』を見て、感動したらしい。それが、モネもその絵も知らなかったというのだ。それで、ぼくは、プライスさんのコレクションで、升目描きの『鳥獣草木図屏風』が、森美術館で展示されていた時の話をした。

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ふし（３）竹下通りから来たような若者が、『鳥獣草木図屏風』の前に座り込んで動かず、プライスさんが所有者だとわかると、涙を流して、「こんな絵があるとは知らなかった。本当にありがとう」と言ったというのである。九州に巡回した時には、感動した漁師さんたちが、お礼に魚を持ってきたという。

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ふし（４）そんな話をしたら、その質問をした女性は、伊藤若冲も誰だか知らないという。ぼくは、あなたは素晴らしい！　と叫んだ。思うに、美術の知識なんかなくて、展覧会でいきなり出会ってそれがいいと思うことが、最高の出会いの仕方なのではないだろうか。

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ふし（５）彼女が、「それでいいのだろうか」という質問をしたのは、美術教育の欠陥ゆえだろう。世の中には傑作があって、それは専門家が理由をつける、それを知らないと恥ずかしい、みたいな思い込みをどこかで植え付けられた。そんなことはない。自分自身の感性を、信じていいのである。

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ふし（６）写真家の浅井愼平さんと話した時に浅井さんが言ってたけど、ビートルズとの出会いは不意打ちだったそうだ。街を歩いていてラジオから流れてくる音楽を聴いて、びっくりした。不意打ちは、最高の出会いである。ビートルズという凄いグループがいるから聞け、と言われるよりそちらの方が良い。

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ふし（７）ぼく自身も、ビートルズとの出会いは不意打ちだった。中1の時にたまたまラジオで聞いていた鈴木ヒロミツさんの「ビートルズ大全集」ではまったのだ。耳から突然音楽が入ってきて、それを好きになるというのは、この世にさまざまある出会いのうちで、最高のものの一つである。

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ふし（８）だからこそ、不思議な角笛を待つ子どものように、私たちは周囲にいつもやさしい配慮をしていなければならないのだ。いつ、自分の人生を変えるような出会いがやってくるかわからない。その時に頼れるのは知識ではなく、自分自身の感性そのものである。感性を信じ、託すのだ。

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ふし（９）知識ばかり集ることの危険性が、ここにある。不意打ちの時の感性のしなやかさと受容の巧みさは、テストなどで測ることができないが、そこにこそ人生の最大の恵みをもたらす魂の受け身がある。不意打ちを待つために、知りすぎてはいけない。ぼくに質問して下さったあの方に、伝わったかな。

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以上、連続ツイート８８９回　「不意打ちを待つために、知りすぎてはいけない。」でした。