モータードリヴン・ブルース #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
文学 書籍 ニンジャスレイヤー
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NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(あらすじ:ネオサイタマ市民社会に恐怖をもたらす正体不明の連続破壊殺戮犯罪者有り。トコシマ区のデッカーであるシンゴとタバタは捜査を開始する。だがしかし、我らが暗黒非合法探偵フジキド・ケンジ、すなわちニンジャスレイヤーもまた、この件に重大な関心を寄せていたのだ……)
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「アップ……ダウーン」ゴンゴンゴンゴン……「アップ……ダウーン」ゴンゴンゴンゴン……「アップ……」ブガー!「コンベアーベルト何かがおかしな」マイコ音声が咎める。チーフが上流へ駆け足で向かう。モーティマーは額の汗を拭う。すぐに不具合は解消され、コンベアーベルトが再び流れ出す。 1
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「ダウーン」ガゴン、ガゴン……「アップ……ダウーン」ゴンゴンゴンゴン……「アップ……ダウーン」ゴンゴンゴンゴン……「アップ……ダウーン」ゴンゴンゴンゴン「定時な。デキマシタ!」マイコ音声が告げ、プレスマシンが蒸気を噴いた。流れ出すスカムポップBGM。モーティマーは息を吐く。 2
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労働者達は陰鬱な半開きの目で工場内を見渡す。やがて監督が小走りで彼らの元へ走ってくる。「残業できますか、二人……」「ハイ!」「ハイッ!」「ハイ、ウマダ=サン、ミト=サンが早かったので決まりです」「や、やった!」ミトがガッツポーズした。モーティマーは上げかけた手で頭を掻いた。 3
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「こればっかりは早いモノ勝ちよ。気合いよ」ウマダが隣のモーティマーに言った。「賃金いただきだぜ」「……」モーティマーは汚れたタオルで汗を拭いた。この鋼板プレス工場の仕事受注状況は厳しく、労働者に割り振られる仕事も不足しがちである。残業ともなれば、もはや労働者間で取り合いだ。 4
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ここでの工程に技術や知識は必要無い。腕っぷしがあればよい。幸いモーティマーはアメフト選手じみた恵まれた体格の持ち主であり、この仕事に適応する事は可能だった。彼の肩の筋肉は今や、単純労働の反復を通してパンパンに張りつめている。泥のような反復だ。 5
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ここでプレスするパーツは自動車の部品になる。よくは知らない。そこかしこに「安全にしないとあなたの責任を追求する」「努力目標」と威圧的なミンチョ文字が書かれている。モーティマーは労働者の列に混じり、更衣室に向かう。6
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「畜生、もっと働きてえよ」「俺だってだ」「今月どうなってんだ」「これじゃ水道も止められちまう」列前方で陰鬱な会話が聞こえてくる。背後ではコンベアーベルトが一部、再稼働。「残業ガンバロ!」のマイコ音声だ。モーティマー達は一刻も早くこの場を去る事を求められる。 7
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モーティマー達には知る由もないが、この工場の受注が減った事には理由がある。社長が元請け会社をオイラン接待する場でしくじったのだ。社長はケジメしたがビジネスのダメージは大きかった。ライン作業員は厳密な時給労働だ。仕事が無ければ賃金も無い。工場は今月末を越えられるだろうか。 8
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工場ではシビアに定められた作業量を達成することが求められる。キャッチアップできなければ時給にペナルティだ。ただでさえ確保できる労働時間が少ないのだ。そうなれば死活問題である。そこにあるのは、無給の残業を課せられカロウシと戦わされるホワイトカラー・サラリマンとは異なる形の苦役だ。9
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モーティマーはかつて、へつらう下請け役員を相手に威張り散らし、後頭部を踏みつけ、オイランを手配させ、女体盛りをさせ、オスモウをさせ、ケジメさせ、セプクさせる側の人間だった。この工場の苦境は、いわばモーティマーが行ってきた傍若無人の鏡写しである。だが彼がそれを知る事はない……。10
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……更衣室!「オイ!俺のトミクジどこやった!クソ野郎!」「エッ?」モーティマーは怒鳴り声の主を見た。モーティマーと同じぐらい体格の良い髭面の男は、確かにモーティマーに対して罵ったのだ。隣のロッカーを使っていた男である。「トミクジ?」「返せオラー!」「エ?僕は知らないぞ」11
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「俺、俺のロッカーの中のここ!ここに!貼っておいたんだよ!ビニールにいれて!ビニールに!」「トミクジだと?だいたいロッカーの中にしまっていたなら僕が出せる事もないだろ!初めから!」室内の他の労働者は争いに巻き込まれぬよう露骨な注目を避け、しめやかに互いの目を見交わすばかりだ。12
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「屁理屈言ってんじゃねえオラー!俺がさっき右を見たとき、絶対お前が盗った!」髭面の男は涙を滲ませた。「あれに未来を賭けてたんだよ!生活なんだよ!」「言いがかりだ!フザケルナ!」モーティマーは激昂し、髭面男の肩を押した。「ナンオラー!」髭面の男は押し返した。「スッゾオラー!」 13
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「ヤメロ!」「スッゾオラー!」「ヤメロ!」「スッゾオラー!」押し合いが続く!その時だ!髭面男の尻ポケットからチケットめいた紙がひらりと床に落ちた。更衣室の時間が止まったように思えた。髭面男はモーティマーを睨みながら身をかがめ、拾い上げた。「……。アー。あったわ」14
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「バカハドッチダー!」モーティマーの顔が瞬間的激怒で紅潮!髭面男の顔面にパンチを叩き込む!「グワーッ!」「バカハドッチダー!」「グワーッ!」「バカハドッチダー!」「グワーッ!」ドカドカと鉄靴を鳴らし、警備員が踏み込んできた。「ヤメロ!」「グワーッ!」モーティマーを棒で叩く!15
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「ウオオーッ!」ナムアミダブツ!それは何たる原初の憎悪と敵意を剥き出しに人々が獣じみて吼え猛り相争うマッポーの一側面の顕現であったことか!殴り、殴られる!「畜生ーッ!」モーティマーは叫ぶ!「畜生ーッ!」髭面男が叫ぶ!「ウオオオーッ!」労働者が、警備員が叫ぶ!ナムアミダブツ! 16
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片目を充血させ、歯茎から血を流し、遮二無二食らいつき、腕を振り回し、モーティマーは争いの音を遠くに感じている。やがて静寂の中で彼の怒りと不本意と呪いがニューロンに木霊する。こんな事があってたまるか。僕は社長だ。僕は偉い。こんなのはおかしい。許せない。絶対に!絶対に!絶対に! 17
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KABOOM!横倒しになったカンオケ・トラックの黒い車体が炎を噴いた。激しい雨の中、厚い黒煙が上空へ立ち昇る。フルタマ・プロジェクト第一区画。老朽化した無機質な高層住宅群を背後に、バリケードを張った市民達は意気をあげ、企業防衛隊と睨み合った。 19
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廃材や鉄パイプで組み上げられたバリケードには複数のノボリ旗。「アンタイ悪い社会」「市民の怒る心」「駄目だ!」といった決断的文言が雨風に踊る。市民達はヘルメットを被り、なかにはアサルトライフルを持った者まで居るのだ。リーダーと思しき若者が拡声器を手に、バリケード上に立つ。20
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「抑圧企業者!今すぐ我々の居住権を公に認める約束をし、本書にサインせよ」若者は雨の中、防水クリアケースに収められた誓約書を掲げた。「それとも我ら市民軍の更なる勇猛武力の大進撃を見たいか!」「そうだ!」「俺らの家は立ち退かないぞ!」「粉砕骨折!」あちこちから叫び声! 21
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「アー君達ね、交渉の余地を残そうじゃないですか」スーツの上から現場主義的アトモスフィアを漂わせるブルゾンを着た中年サラリマンが車載スピーカーのマイクを握り、蜂起市民達を見上げた。「そもそもそのプロジェクトはアレです、賃貸物件でしょ。わかりますか?」「文化的生活の権利侵害!」22
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「侵害ってあなたね、我々はオムラ社から権利を引き継いで以来、しっかりやってきたでしょう。暖かい食事と生活。安定ですよ。この不安定な世の中に貴方達はとても安定してる」「欺瞞!」「企業!」「オナタカミは第二の悪!」「オムラ再来!」「首を挿げ替えただけの悪!」次々に野次!23
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2013年3月28日
モータードリヴン・ブルース #1 http://togetter.com/li/474390 モータードリヴン・ブルース #3 http://togetter.com/li/478902
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