ルートヴィッヒは海に住んでいた。底も見えないぐらいの暗くて冷たい海に一人だけ。誰もルートヴィッヒのことは知らないしルートヴィッヒも知ろうとは思っていなった。一人、優しい暗い海の底でルートヴィッヒは生きていた。
2010-09-05 14:21:15ルートヴィッヒはずぅっと長い間一人だった。暗くて、もう自分の顔がどんな顔をしていたのかもわからなくなっていた。自分の髪の色、目の色、肌の色。海の底ではみんな真っ暗だったから。
2010-09-05 14:22:39「お前は誰だ?」真っ暗な海の底のルートヴィッヒに声が届いた。ルートヴィッヒが顔をあげると暗いはずの海が明るくなっていた。上から、暖かい光が差し込んでいた。
2010-09-05 14:25:18「お前、いるんだろ?」ルートヴィッヒは泣きそうだった。どうして?近づかないでって言ったのに。誰だかわからない声はまた来た。優しい暖かい光と一緒に。やめて、俺を照らさないで、そんな優しい光はいらないから
2010-09-05 14:31:05「近づかないでって、いった。…どうして?」「お前が一人ボッチだったから。あと、こっちからだとキラキラして見えるんだ。おまえだろ?すごくきれいな色、金色だ」
2010-09-05 14:32:53うそだ。うそ、俺は真っ暗で、醜くって、光と一緒にはいられない、うそだ!こわい、こわい!ルートヴィッヒはどんどん深くまで逃げて行った。光が届かない深い深い海の底まで。ルートヴィッヒは知らなかった。自分の頬が赤く染まっていたことも。
2010-09-05 14:35:16それでも声は届いた。深くまで潜っても、その優しい光は追ってきた。声も、追ってきた。「なぁお前きれいだよ。」「今日はこっちは雨なんだ」「そっちは寒いのか?」やめてくれ、俺に、俺にかまわないで、醜い俺は暗い海がお似合いなんだ、あなたのようなあたたかい人には近づけないんだ
2010-09-05 14:38:09光が消えた。いつもルートヴィッヒが見たくない、感じたくないと思っていた光が暗い海に消えた。ルートヴィッヒはやっと、やっとこれで、と思った。やっと…これで、俺はまた、一人になれたんだ。
2010-09-05 14:40:15いつもどおりなはずなのに、声が聞こえないのはいつものことなのに、どうしてだろう、一人になれて、嬉しいはずなのに…あぁ、あの光のせいだ、こんなこと、思いもしなかった。寂しい、なんて。
2010-09-05 14:42:14「ほらな、お前、一人は似合わないんだよ」また、声が聞こえた。あぁ、そうだ、この光だ、俺を、俺が待っていたのは。思わずルートヴィッヒは手を伸ばした。怖かったけど、それ以上にもうこの「寂しい」気持ちが怖かったから。
2010-09-05 14:44:40「ほら、やっぱり綺麗だ!お前の金色の髪はこっちからでも見えたんだぜ!そうか、お前の眼の色は海の色だったんだな!肌はマリンスノーの白みたいだぜ!」ルートヴィッヒの手を引いたのは男だった。きらきらと輝く銀の髪と今まで見たこともない色の目だった。
2010-09-05 14:51:21「あなたは…?」「ん?」「あなたの目の色はなんというんだ…?」「…プッ」「?」「ケセセセ!名前より先に聞かれるなんてなぁ!」「あ、あの、す、すまない…」「いいぜ、気にしてねぇし。まぁ、まずはお名前を聞こうかな」「あ…、お、俺は
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