山本七平botまとめ/なぜ日本は伝統的に平等社会なのか/~日本の平等思想の背後にみえる「孔孟の影響」~

山本七平著『論語の読み方』/第六章「下学」――人間を創りあげる基盤/「集団」に自己を活かす秘訣と品性を高める心構え/204頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【なせ、日本は伝続的に平等社会なのか】前章で記したように、孔子が評価しないといった人物を、「いや、私は高く評価する」という人間はまず皆無といってよい。 考えてみれば、これはたいへんに不思議なことである。<『論語の読み方』

2013-03-21 17:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

②というのは、二千五百年以上の昔、しかも中国の春秋時代の人物評価が、高度工業国家の現代の日本と変わらない、ということだからである。 一体、なぜであろうか。

2013-03-21 18:27:55
山本七平bot @yamamoto7hei

③人間と人間との関係、人間の相互の関係は、基本的にはそう変わるものではないともいえるであろうが、また、それだけ『論語』は深くわれわれの中に浸透し、人を見る場合、不知不識(しらずしらず)のうちに「論語的評価」で、これを見ているともいえるであろう。

2013-03-21 18:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

④…以上のように見た場合、明治以来の多くの指導者が「論語的評価」で人を見、渋沢栄一のように、これを経営と人事の指針としていたのも当然のこととうなずかれるが、同時に、では「論語的評価」で高く評価されるのはどのようなタイプかは、当然に気になるところであろう。

2013-03-21 19:27:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤だが、それに進む前に、このことが現代の日本でどのような意味を持っているかを、まず考えてみよう。 日本は平等主義の国だといわれる。 これは何も戦後にはじまったことでなく、また、明治の四民平等ではじまったことでもない。

2013-03-21 19:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥我々は秀吉と同じような出生の「天下人」をその時代のヨーロッパに見出す事はできない。 また戦前…リンカーンに見るように「丸太小屋から大統領へ」だといわれたが、それを聞いて、当時中学生の我々は「日本だって石屋からの総理大臣(広田弘毅)がいるじゃないか」と考えたものである。

2013-03-21 20:27:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦また戦後の日本では入社すれば全ての人間が社長になる可能性がある。 だが、こういう事は「自由・平等・友愛」が国旗のデザインで、その元祖のような顔をしているフランスにはありえない。 「社長=経営者=資本家」と「労働者・農民」とは、「生まれながらにして別」である。

2013-03-21 20:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧…では一体、この日本の平等主義は何に由来するのであろう。 「論語」であろうか。 【平等主義思想を日本に定着させた孟子】…たしかに『論語』は平等主義を前面に押しだして主張してはいない。 だが、孟子になると「井田(せいでん)法」を実施せよ、という主張が明確に出てくる。

2013-03-21 21:27:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨これは『孟子』の…ほんの一部だけを引用すると 「一里四方を一井(いちせい)とする。 一井は九百畝(ぼ)、これを九等分し、真中の百畝を公田とする。 まわりの八百畝を八家で百畝ずつ平等に私有し、八家が共同で公田を耕作する」…(原文略)… となる。

2013-03-21 21:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩これは新しい提案というより、むしろ復古主義の主張で…孔子の時代とは古い井田(せいでん)制が崩壊して土地私有の新興地主階級が出てきた時代、 そして「君子」とは「井田所有制を基盤とする階級」、「小人」とは「新興地主階級と小私有地農民」で、この対立を「階級的対立」と見る訳である。

2013-03-21 22:27:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪こうなると、孔子の主張する周の時代への復古とは単なる昔への憧れでなく、井田制への復帰の主張となり、孔子・孟子の間に明確な関連が出てくる。 では、井田制とは平等主義なのであろうか。

2013-03-21 22:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫もちろん歴史的には、そうはいえないであろうが、問題は日本人の受け取り方である。 日本人はこれを模倣して「班田収授法(はんでんしゅうじゅほう)」を実施した。 あるいは、実施しようとした。

2013-03-21 23:27:56
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬この経験とその後の強い孔孟の影響は、実に深く日本人に浸透したが、戦後の日本人はそのことを忘れてしまった。

2013-03-21 23:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭そのため、戦後に”民主主義的思想家として再発見”され、もてはやされた徳川時代の思想家も、その著作を仔細に読んでいくと、その背後に見えるのは「孟子の影」であり、この井田制から一種の平等主義を導き出しているのである。

2013-03-22 00:27:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮そして…を「滕は…小国ながら、君子となって管理する者もあるであろうし、農夫となって耕す者もあるであろう。管理者がなければ秩序は立てられないし、農夫がなければ管理者を養っていけない」と読んで不思議ではない。そしてこの管理者の登用を平等に試験で行なうとすれば否応なく平等主義になる。

2013-03-22 00:57:40